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米4月雇用統計、黒人の失業率は労働参加率を伴い低下し強弱ミックス

by • May 7, 2023 • Latest News, NY TipsComments Off2701

Labor Force Participation Rate For Black Workers Declined, So As Black Unemployment Rate.

米4月雇用統計・NFPは、こちらで紹介しましたように市場予想を超え、好調な結果となりました。NFPの業種別寄与度をみると、これまで主導していた娯楽・宿泊がNFPに占める比率は12.3%、食品サービスも9.8%とそろって過去3カ月間の22.7%、17.6%から大幅低下。雇用の増加の裾野が広がったと言えますが、娯楽・宿泊は2020年2月の水準を回復していない数少ない業種の一つなだけに、同業種の賃上げ圧力を強めるのか、あるいは需要減退に伴う雇用減なのか見極めが必要といえそうです。

チャート:食品サービスだけでなく、娯楽・宿泊の比率も低下

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(出所:My Big Apple NY)

そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。

〇業種別の平均時給

平均時給は前月比0.5%上昇の33.36ド ル(約4,500円)と、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.3%も超えた。前同月比は4.4%上昇、市場予想の4.2%並びに前月の4.3%からも加速した。

業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び0.5%以上だったのは13業種中で9業種だった。前月の速報値ベースでの6業種を上回った。今回の1位は唯一雇用が減少した卸売(2.1%上昇)で、やはりリストラなどによる退職金が平均時給を押し上げの一因となった可能性を示唆する、そのほか、2位は小売(1.9%上昇)、3位は情報業と鉱業。伐採(1.6%上昇)、5位は金融(1.0%上昇)、6位は輸送・倉庫(0.8%上昇)、7位はその他サービス(0.7%上昇)、8位は専門サービス(0.6%上昇)、9位は建設(0.5%上昇)だった。一方で、製造業や娯楽・宿泊、公益は0.5%以下だった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:平均時給は、労働参加率が前月と変わらず高止まりながら再加速

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(作成:My Big Apple NY)

〇労働参加率

労働参加率は62.6%と、2020年3月の水準に並んだ水準を維持。全米の働き盛りの男性(25~54歳)をみると、25~54歳は2020年2月の水準に並んだ。ただし、白人の25~54歳が低下したように、若い世代と非白人が牽引していたことが分かる。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 89.2%と20年2月の水準に並ぶ、前月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.4%、前月は89.7%、22年3月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 89.4%と3カ月連続で22年4月以来の高水準、なお22年4月は89.5%と19年11月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.2%、前月は90.1%、なお22年10月は90.4%と22年3月の90.5%に次ぐ高水準)、20年2月は90.7%

チャート:働き盛りの男性、25~34歳の若い世代と非白人が上昇をけん引

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性(25~54歳)は、25~54歳と25~34歳そろって上昇した。

・25~54歳 77.5%、前月は77.1%、2月は77.2%と2000年4月以来の高水準
・25~34歳 78.2%と22年8月以来の高水準、当時は78.6%と20年1月に並び過去最高、前月は77.7%、

65歳以上の高齢者の労働参加率、男性は低下したが女性は上昇した。

・男性 23.0%と2021年7月以来の低水運に並ぶ、前月は23.1%、22年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 16.0%と前月と変わらずで22年10月以来の高水準、なお22年10月は16.1%と2020年3月と同水準

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率の2020年3月以来の水準を維持しつつも、前月比7.0%減の527.1万人と、3カ月ぶりに増加した。男性が前月比4.5%増の241.8万人だっただけでなく、女性も同9.3%増の285.3万人と2カ月連続で増加した。

チャート:職を望む非労働力人口、20年1月以来の500万人割れとコロナ前の水準を回復

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(作成:My Big Apple NY)

〇病気が理由で働けなかった人々

「病気が理由で働けない」とする人々は今回、前月比12.1人減(過去5カ月間で4回目の減少)の108.5万人だった。ただし、コロナ後の平均値だけでなく、2015‐19年の平均値に迫り、労働参加率を支えた。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々、コロナ禍後の平均以下が続く

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(作成:My Big Apple NY)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、まちまち。男性は68.1%と、20年3月(68.5%)以来の高水準だった前月の68.4%から低下した。逆に女性は57.3%と前月の57.1%を超え、20年2月(57.9%)以来の高水準だった。

チャート:男女別、労働参加率、3月は男性が改善を主導

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(作成:My Big Apple NY)

男女の失業率は、そろって低下。労働参加率が低下した男性は3カ月連続で3.6%を経て3.5%だった。一方で、女性は労働参加率の上昇したにも関わらず前月の3.4%を下回り3.3%と、1952年9月以来の低水準を記録した1月の水準に並んだ。

チャート:男女の失業率、そろって低下

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、黒人女性とヒスパニック系女性がプラスだったほか、今回は白人男性がプラスに転じた2022年7月以来、横ばいとなった。これで、マイナスは白人女性のみとなる。白人女性は2.5%減と、20年2月以降で最も小幅なマイナスとなった。その他、非砂パニック系男性が前月の6.5%増→6.9%増、ヒスパニック系女性が前月の5.5%→6.6%増、黒人女性も前月の2.9%増→4.5%増と、それぞれ20年2月以来で最大の伸びに。しかし、黒人男性は前月の13.2%増→10.3%増と伸びを縮小した。

チャート:男女・人種別の就業者数の20年2月との比較、マイナスは白人の性のみ

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

人種別の労働参加率は、まちまち白人が20年3月以来の水準に並んだ一方で、黒人は2008年8月以来の高水準だった前月から大幅低下し、ヒスパニック系とアジア系は横ばいだった。

・白人 62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、前月は62.2%、20年2月は63.2%
・黒人 63.0%、前月は64.1%と2008年8月以来の高水準
・ヒスパニック系 66.8%と3カ月連続で20年3月以来(66.9%)の高水準、20年2月は68.0%
・アジア系 64.9%と前月と変わらず、2月は65.1%と22年8月(65.3%)以来の高水準で20年2月の64.5%超え
・全米 62.6%と前月に続き2020年3月の水準に並ぶ、前月は62.5%、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、黒人が改善を主導

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(作成:My Big Apple NY)

人種・男性別ではそろって低下した。

・白人 70.1%、前月は70.2%と4カ月ぶりの水準を回復、20年3月は71.0%
・黒人 67.8%と6カ月ぶりの低水準、前月は70.5%と2009年1月以来の高水準、20年2月は58.2%
・ヒスパニック系 79.0%、前月は79.4%と7カ月ぶりの水準を回復、20年3月は79.9%

チャート:人種・男性別では、黒人を始めそろって改善

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(作成;My Big Apple NY)

人種・女性別では、白人は20年3月以来、黒人は20年2月以来の水準に並んだ。ヒスパニック系のみ、低下した。

・白人 57.5%と20年3月以来(57.6%)の高水準、前月は57.3%、20年2月は58.2%
・黒人 63.9%と20年2月(63.9%)の水準に並ぶ、前月は63.0%
・ヒスパニック系 61.0%と4カ月ぶりの低水準、前月は61.1%、2月は61.5%と20年2月以来(62.2%)の高水準

チャート:人種・女性別は白人と黒人が著しく改善

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(作成;My Big Apple NY)

人種別の失業率は、アジア系を除き低下した。特に労働参加率が低下した黒人が過去最低を更新したほか、労働参加率が横ばいだったヒスパニック系も低下した。白人は労働参加率の上昇したにも関わらず低下。アジア系は労働参加率と合わせ横ばいだった。

・白人 3.1%と3カ月ぶりの低水準、前月は3.2%、22年12月は3.0%と20年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 4.7%と過去最低を更新、前月は5.0%
・ヒスパニック系 4.4%と5カ月ぶりの低水準、前月は4.6%、なお22年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 2.8%と前月と変わらず、22年12月は2.4%と19年6月以来の低水準に並ぶ
・全米 3.4%と1月に続き1969年5月以来の低水準、前月は3.5%、

チャート:人種別の失業率は白人を除き全て低下、特に黒人は過去最低を更新

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(作成:My Big Apple NY)

人種・男女別では以下の通りで、全て低下した。

チャート:黒人女性のほか、ヒスパニック系の男女の失業率が低下

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(作成:My Big Apple NY)

白人と黒人の失業率格差は大幅縮小。黒人の失業率の低下幅が白人を上回ったため、失業率格差は1.6%ポイントと前月の1.8%ポイント以下となり過去最低を更新した。

チャート:白人と黒人の失業率格差、過去最低を更新

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、まちまち。中卒は2カ月連続で低下したが、高卒と大卒は逆に2カ月連続で上昇した。

・中卒以下 46.3%と3カ月ぶりの低水準、前月は46.6%、2月は48.3%と2008年3月(48.2%)を超え過去最高を更新
・高卒 56.4%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は56.1%、22年1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 73.3%と20年1月以来の高水準、前月は73.1%
・全米 62.6%と前月に続き2020年3月(62.7%)以来の高水準、20年2月は63.3%

学歴別の失業率はまちまちで、労働参加率に合わせ中卒以下が大幅に低下したほか、労働参加率が改善した大学院卒で低下した。一方で、高卒は労働参加率につれ上昇、大卒は前月と変わらずだった。

・中卒以下 5.4%、前月は4.8%、22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 3.9%、前月は4.0%と22年3月以来の高水準、2月は3.6%と19年9月の低水準に並ぶ
・大卒 1.9%と4カ月ぶりの低水準、前月は2.0%、22年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒以上 1.7%と前月と変わらず、21年12月は1.3%と2000年4月以来の低水準
・全米 3.4%と1月に続き1969年5月以来で最低、前月は3.5%

チャート:失業率は中卒と大学院卒で低下、高卒は上昇、大卒は前月と変わらず

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(作成:My Big Apple NY)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①平均時給の上昇ペースは再加速、一方で雇用が減少した卸売が最も強い伸びを示し、退職金などによる上乗せが一因に。

②働き盛りとされる25~54歳の労働参加率は、若い世代の白人を中心に改善。男女別でみると労働参加率は今回は女性が牽引し男性は低下。

③人種別では、白人の労働参加率のみ上昇し、黒人は急低下し、ヒスパニック系やアジア系は横ばいだった。失業率は黒人が労働参加率の低下に従って過去最低を更新したほか、労働参加率の上昇を受けても白人も低下した。一因として、娯楽・宿泊や食品サービスの雇用増加ペースの鈍化が考えられる。

④学歴別では、まちまち。中卒以下が労働参加率の低下を受けながら失業率が上昇した一方で、大卒以上は労働参加率が改善した半面、失業率は大卒で横ばい、大学院卒で横ばいとこちらもまだら模様の結果となった。

前回、黒人の労働参加率の改善は炭鉱のカナリアであるリスクを指摘しました。逆に4月は労働参加率が低下したわけですが、NFPの業種別で娯楽・宿泊の比率が低下しており、低賃金職の雇用改善にブレーキが掛かったことが一因と想定されます。これがFedの約1年間で5%ポイントの利上げの効果に伴う需要減退であれば、今後さらに非白人特に黒人の労働参加率が押し下げられかねません。失業率だけで労働市場を判断するのは早計と言えるでしょう。

(カバー写真:Rawpixel Ltd/Flickr)

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