PCE `Inflation Measure Falls To The Lowest In Nearly 2 Years< But Consumer Spending Picks Up.
米6月個人消費支出は前月比0.5%増と、市場予想の0.4%増を下回った。前月の0.2%増(0.1%から上方修正)を超え、6カ月連続でプラスとなった。
〇個人消費支出
個人消費の結果は以下の通り。名目ベースとインフレを除く実質ベースそろって増加した。
・前月比0.5%増と6カ月連続で増加、市場予想の0.4%増を上回る、前月は0.2%増(0.1%増から上方修正)
・前年比では5.4%増と21年1月以降の増加トレンドを維持、前月は6.1%増
・実質ベース前月比0.4%増、3カ月連続で増加、前月は0.1%増
・前年比では2.4%増と21年3月以降の増加トレンドを維持、前月は2.2%増
耐久財は自動車・部品が前月比2.0%増と前月の減少を打ち消したほか、トラックも4.3%増と大幅に伸び、家具も1.3%増と堅調だった。非耐久財はガソリンが同2.4%増と増加に転じたほか、服飾も0.5%増と支えた。サービスは住宅が0.6%増と引き続き押し上げたほか、ヘルスケアも0.2%増と伸びた。
個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.8%増と過去5ヵ月間で2回目のプラス、前月は0.3%減
・耐久財 1.4%増と過去5ヵ月間で2回目のプラス、前月は0.1%減
・非耐久財 0.5%増と過去5カ月間で3回目のプラス、前月は0.4%減
・サービス 0.4%増と28ヵ月連続で増加、前月は0.4%増
チャート:個人消費、前月比の項目別内訳
チャート:個人消費、前月比ベースでの名目と実質の違い
〇個人所得
米6月個人所得は前月比0.3%増と、市場予想の0.5%増を下回った。前月の0.5%増(0.4%増から上方修正)に届かなかったものの、17カ月連続で増加した。
個人所得の結果は以下の通り。
・前月比0.3%増と17カ月連続で増加、市場予想の0.5%増を下回る、前月は0.5%増(0.4%増から上方修正)
・前年比では5.3%増と15ヵ月連続で増加、前月は5.5%増
・実質ベースは前月比0.1%増と2カ月連続で増加、前月は0.3%増
・前年比では2.3%増と6カ月連続で増加、前月は1.6%増
個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は6ヵ月連続で増加した。また、家賃収入が引き続き全体を支えた。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下したため、販売用物件の減少も重なって家賃の上昇が進行した。足元、新規契約分の家賃は前月比で下落が指摘されているが、家賃は基本1~2年契約のため、下落が反映されるまでラグを伴う傾向がある。
所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。
・賃金/所得 0.5%増と6ヵ月連続で増加(民間は0.6%増、政府部門は0.6%増)、前月は0.5%増
・経営者収入 0.3%増と2カ月連続で増加(農業は4.4%減、非農業は0.6%増)、前月は0.2%増
・家賃収入 0.4%増と17ヵ月連続で増加、前月は0.3%増
・資産収入 0.2%減と3カ月ぶりに増加にブレーキ(金利収入が0.7%増、配当が1.2%減)、前月は0.5%増
・社会補助 0.1%減、前月は0.4%増
・社会福祉 0.1%減、前月は0.4%増(メディケア=高所得者向け医療保険は0.1%増、メディケイド=低所得者層向け医療保険は0.5%増、失業保険は2.2%減、退役軍人向けは横ばい、その他は1.8%減)
チャート:個人所得、前月比の項目別内訳
〇可処分所得
・前月比0.3%増と17ヵ月連続で増加、前月0.5%増
・前年比は7.9%増と14ヵ月連続で増加、前月は8.1%増
・実質ベースの可処分所得は0.2%増と2カ月連続で増加、前月は0.4%増
・前年比は4.7%増と6ヵ月連続で増加、前月は4.1%増
〇貯蓄率
・4.3%と、2022年1月以来の水準に並んだ前月から低下。2019年平均の8.8%以下が続きつつ、1959年のデータ取得以降で3番目の低い伸びとなった2022年6月につけた2.7%から改善基調を継続、過去最低は2005年7月の2.1%。
チャート:個人消費の伸びが加速し、貯蓄率は低下
〇個人消費支出(PCE)価格指数
Fedの積極的な利上げを経て、PCEとコアはそろって前年同月比で市場予想と5月の伸びを下回った。PCEは2021年3月以来、PCEコアは2021年9月以来の低い伸びとなる。
・PCE価格指数は前月比0.2%上昇、市場予想と一致、前月は0.1%
・前年比は3.0%上昇と市場予想の3.1%を下回り2021年3月以来の低い伸び、前月は3.8%
・コアPCEデフレーターは前月比0.2%上昇、市場予想と一致、前月は0.3%
・コアPCEの前年比は4.1%上昇と市場予想の4.2%を下回り2021年9月以来の低い伸び、前月は4.6%
チャート:6月もインフレ鈍化を確認
――6月は個人消費支出が市場予想を上回ったものの、個人所得が下回ったように貯蓄の取り崩しを確認しました。一方で、PCE価格指数は前年比で2021年3月以来、コアPCEは2021年9月以来の低い伸びと鈍化を確認しています。ただ、コアは未だインフレ目標値の2倍以上で、高止まりしたままと言えます。
個人消費を占う上で注目された米7月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は71.6と、速報値の72.6から下方修正されました。現況指数も76.6(速報値は77.5)、期待指数も68.3(速報値は69.4)と、そろって速報値から下方修正。とはいえ、それぞれ前月を上回り、ヘッドラインは2021年10月以来の高水準でした。
1年先インフレ期待は3.4%と速報値と一致しつつ、前月の3.3%を上回りました。ただし、5年先インフレ期待も速報値の3.1%を下回り、6月と同じく3.0%でした。
チャート:米ミシガン大消費者信頼感は前月比で上昇、1年先インフレ期待も上方修正
ミシガン大学の消費者調査担当ディレクターのジョアン・シュー氏は結果を受け「全体として、センチメントの急上昇は、インフレの継続的な鈍化と労働市場の安定に起因するところが大きい」と振り返りました。しかし「低所得者層のセンチメントは低下しており、インフレと所得見通しの両方が今後1年で悪化すると予想しており、国民全体の見方がそれぞれ異なる状態を浮き彫りにしている」と指摘。低所得者層には、高止まりするインフレだけでなく、雇用減速が向かい風となりつつあり、これは黒人やヒスパニック系女性の失業率の上昇を確認した米6月雇用統計の結果と整合的と言えるでしょう。
その他、米4~6月期雇用コスト指数は前期比1.0%上昇、市場予想の1.1$を下回りました。前期の1.2%から鈍化を確認、2年ぶりの低い伸びとなっています。前年同期比も4.5%と2022年Q1以来の低水準で、労働市場のゆるやかな減速を示唆する結果と言えます。
今後は、8月4日発表の米7月雇用統計と、10日予定の米7月CPIがFedの金融政策を占う上で重視されます。前者は、米新規失業保険申請件数の増加にブレーキが掛かっており、非農業部門雇用者数(NFP)が再び加速する可能性があります。米7月CPIについても、クリーブランド連銀のナウキャストでは前年同月比3.3%、コアCPIで4.9%と、それぞれ6月の3.0%と4.8%超えを予測するように、上向きリスクが浮上中。それぞれ米9月利上げ観測を高めるのか、結果が待たれます。
(カバー写真:Branson Convention and Visitors Bureau/Flickr)
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