Private Payrolls Surge But Job Openings Decline To Almost 2-year Low.
米7月ADP全国雇用者数は前月比32.4万人増と、市場予想の18.9万人増を上回りました。前月の45.5万人増(49.7万人増から下方修正)に届かなかったとはいえ、大幅な増加ペースを維持。2021年2月以降の増加トレンドも当然、維持しました。
チャート:米7月ADP全国雇用者数、2カ月連続で大幅増
その他の労働指標を拾っていきましょう。
▽米7月チャレンジャー人員削減予定数は約1年ぶりの低水準、ただ採用者数も振るわず
米7月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で8.2%減の2万3,697人と、15ヵ月ぶりに減少した。前月比でも41.8%減と、年初来で4回目の減少に。水準自体は2022年8月以来、11カ月ぶりの低いレベルだった。
チャート:米7月人員削減予定数は、11カ月ぶりの低水準
チャート:過去4年間と比較すると、過去2カ月連続で改善の兆候示す
年初来の人員削減予定数は前年同期比でほぼ3.4倍増の48万1,906人だった。2020年以来の高水準となる。
チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「雇用市場は、金利上昇にもかかわらず底堅く推移している」と指摘、また「雇用市場は金利上昇にもかかわらず底堅く推移している」と付け加え、「企業は必要な労働者を手放すのを惜しみ、コスト削減のための別の方法を模索している」とまとめた。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。7月はトランスジェンダーの女性を広告に起用したアンハイザー・ブッシュ・インベブの他、マイクロソフト、ウェルズ・ファーゴ、ウォルグリーンズなどで人員削減計画が発表された。なお、前月は1位が自動車、2位が娯楽/レジャー、3位が不動産、4位がサービス、5位が金融だった。
1位 テクノロジー 4,738人、前年同月は3,558人
2位 ヘルスケア 2,668人、前年同月は951人
3位 教育 2,282人、前年同月は84人
4位 製薬 1,803人、前年同月は923人
5位 金融 1,797人、前年同月は2,165人
年初来では、以下の通り。前月も同様だった。
1位 テクノロジー 14万6,254人、前年同月は9,327人
2位 小売 4万9,493人、前年同月は7,216人
3位 金融 4万1,565人、前年同月は12,965人
4位 ヘルスケア 4万947人、前年同月は2万341人
5位 サービス 3万3,290人、前年同月は1万2,965人
採用予定者数は前年同月比49.9%減の1万2,774人と7カ月連続で減少した、前月比でも6.3%減と、年初来で5回目の減少となった。水準自体は、2016年2月以来の低水準だった5月の7,885人を超えたものの、2019年の平均が10万人レベルだったことを踏まえれば、軟調と言わざるを得ない。
チャート:採用予定者数、過去4年間と比較しても極めて低い
1~7月期の採用予定者数は前年同期比82.7%減の12万8,236人で、少なくとも、2016年以降で最低となる。
セクター別では、単月で以下の通り。前月は1位が資本財、2位がテクノロジー、3位が建設、4位がエネルギー、5位が金融だった。
1位 航空・防衛 3,165人
2位 ヘルスケア 2,752人
3位 エネルギー 1,745人
4位 食品 1,085人
4位 政府 612人
▽米6月求人数は前月比で減少、求人数/失業者数は2021年10月以来の低水準から小幅上昇
米6月雇用動態調査によると、求人数は958万人と市場予想の951万人を下回った。前月の961.6万人(982.4万人から下方修正)に届かず、2021年4月以降で最低に。求人数は26ヵ月連続で失業者数を上回りつつ、その差は再び縮小した。
チャート:求人数は2カ月連続で減少し、2カ月連続で1,000万人割れ
チャート:求人数と失業者数の差は、再び縮小
求人数だけでなく失業者数も前月比で減少した結果、求人数は失業者の1.61倍と2021年10月以来の低水準だった前月の1.58倍(修正値)から、小幅に上昇した。
チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者に対し1.61倍と小幅上昇
採用者数は前月比5.2%減の590.5万人と、過去2カ月分の減少を完全に打ち消した。2021年2月以来の600万人割れとなる。
離職者数は563.7万人と前月比4.9%減と、過去6カ月間で4回目の減少となった。今回、定年や自己都合による自発的離職者数が同7.3%減の377.2万人と過去4ヵ月間で3回目の減少となり、離職者数を押し下げている。なお、自発的な離職者数は、自動車大手GMが今年から年間10億ドルのコスト削減を目指し、早期退職制度を通じ全世界で定額給従業員5,000人を削減する方針を発表したように、”自主退職制度”を通じた離職であれば解雇者ではなく自発的離職者数にカウントされる場合がある。解雇者数も同1.2%減の152.7万人と、2022年9月以来の低水準だった。一方で、その他が8.3%増と2カ月連続で増加した。
チャート:離職者数、6月は自発的離職者数と解雇者数が減少
▽米新規失業保険申請件数は小幅増加、6月比では減少
7月29日週までの米新規失業保険申請件数は22.7万件と、市場予想と一致した。前週の22.1万件を超えながら、6月のような大幅増加を回避し労働市場のひっ迫を示唆する。
7月22日週までの継続受給者数は170.0万人と、前週の167.9万人(169.0万人から上方修正)を超えつつ、こちらも増加トレンドをたどるとは言い難い。
チャート:米新規失業保険申請件数は低水準で推移、継続受給者数も大幅増を回避
――その他、オンライン求人広告大手インディードのリアルタイム求人動向は、6月に2021年5月以来の水準に低下した後は、下げ渋りの状況です。労働市場の減速に、一旦ブレーキが掛かったように見えます。
チャート:インディードのリアルタイム求人広告動向、2021年5月以来のレベルに落ち込んだ後は小康状態
肝心の米7月雇用統計・非農業部門就労者数の市場予想は20.0万人増で、前月の20.9万人増から小幅鈍化が見込まれています。しかし。米新規失業保険申請件数を始め、米7月チャレンジャー人員削減予定数などをみると、雇用が大幅に悪化したようには見えません。むしろ、米7月雇用統計は市場予想を上回るシナリオが想定され、そうなった時に9月FOMCでの利上げ織り込み度が強まり、米債利回りとドルを押し上げ、ドル円の一段高を誘うのか、市場参加者の視線が注がれることでしょう。
(カバー写真:Mike Mozart/Flickr)
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