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米8月PCEコアは約2年ぶりに4%割れ、貯蓄率は再び低下

by • September 30, 2023 • Finance, Latest NewsComments Off1900

Core PCE `Inflation Measure Falls Below 4%,  Real Personal Spending Slows.

米8月個人消費支出は前月比0.4%増と、市場予想と一致した。前月の0.9%増(0.8%増から上方修正)以下となったものの、5カ月連続でプラスとなった。なお、米4~6月期実質GDP成長率・確報値で明らかになった通り、GDPデータの年次基準改定(2012年→2017年、同年の国勢調査結果を使用)に合わせ、月別の個人消費支出・所得のデータも修正された。

〇個人消費支出

個人消費の結果は以下の通り。名目ベースとインフレを除く実質ベースそろって増加した。

・前月比0.4%増と5カ月連続で増加、市場予想と一致、前月は0.9%増(0.8%増から上方修正)
・前年比では5.8%増と20年9月以降の増加トレンドを維持、前月は6.2%増
・実質ベース前月比0.1%増と5カ月連続で増加、前月は0.6%増
・前年比では2.3%増と21年2月以降の増加トレンドを維持、前月は2.7%増

耐久財は自動車・部品が前月比0.6%減と前月の増加を打ち消したほか、家具も0.5%減、宝飾も0.8%減とそれぞれ2カ月連続で減少した。非耐久財はガソリンが同9.8%増と値上がりを受け大幅増に転じ財の増加を支えた。サービスは住宅が0.5%増と引き続き押し上げた。

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.6%増と5カ月連続でプラス、前月は0.5%増
・耐久財 0.6%減と減少に反転、前月は0.5%増
・非耐久財 1.3%増と3カ月連続でプラス、前月は0.5%増
・サービス 0.4%増と19ヵ月連続で増加、前月は1.0%増

チャート:個人消費、前月比の項目別内訳

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(作成:Street Insights)

チャート:個人消費、前月比ベースで実質は0.1%増とガソリンの値上がりが名目を押し上げたことを示唆

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(作成:Street Insights)

〇個人所得

米8月個人所得は前月比0.4%増と、市場予想と一致した。前月の0.2%増を上回り、19カ月連続で増加した。

個人所得の結果は以下の通り。

・前月比0.4%増と19カ月連続で増加、市場予想と一致、前月は0.2%増
・前年比では4.8%増と17ヵ月連続で増加、前月は5.0%増
・実質ベースは前月比で3カ月連続で横ばい
・前年比では1.3%増と8カ月連続で増加、前月は1.5%増

個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は8ヵ月連続で増加した。また、家賃収入が引き続き全体を支えた。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下したため、販売用物件の減少も重なって家賃の上昇が進行した。足元、新規契約分の家賃は前月比で下落が指摘されているが、家賃は基本1~2年契約のため、下落が反映されるまでラグを伴う傾向がある。

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.5%増と8ヵ月連続で増加(民間は0.5%増、政府部門は0.5%増)、前月は0.4%増
・経営者収入 0.4%増と3カ月連続で増加(農業は1.5%減、非農業は0.5%増)、前月は0.3%増
・家賃収入 1.0%増と13ヵ月連続で増加、前月は0.9%増
・資産収入 0.5%増と2カ月連続で増加(金利収入が0.9%増、配当が0.1%増)、前月は0.3%増
・社会補助 0.2%減と3カ月連続で減少、前月は0.5%減
・社会福祉 0.2%減と3カ月連続で減少、前月は0.6%減(メディケア=高所得者向け医療保険は0.2%増、メディケイド=低所得者層向け医療保険は1.6%減、失業保険は横ばい、退役軍人向けは0.1%増、その他は0.2%増)

チャート:個人所得、前月比の項目別内訳

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(作成:Street Insights)

〇可処分所得
・前月比0.2%増、前月は横ばい
・前年比は7.3%増と16ヵ月連続で増加、前月は7.8%増
・実質ベースの可処分所得は0.2%減と2カ月連続で減少、前月は0.2%減
・前年比は3.7%増と8ヵ月連続で増加、前月は4.2%増

〇貯蓄率
・3.9%と、是値g津の4.1%から低下。2022年1月以来の水準に並んだ前月から低下。2019年平均の7.4%以下が続きつつ、2008年1月以来の低水準をつけた2022年6月の2.7%を上回った水準は保った。なお、過去最低は2005年7月の1.4%。

チャート:個人消費の伸びが加速し、貯蓄率は低下

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(作成:Street Insights)

個人消費支出などのデータ改定を受け、貯蓄額(可処分所得マイナス個人消費支出)は8,685億ドルと2010~19年平均の8,318億ドルを小幅に上回った。ただし、2019年平均の1.2兆ドルを下回り、過剰貯蓄の取り崩しを確認した。

チャート:貯蓄額は2019年平均以下

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(作成:Street Insights)

〇個人消費支出(PCE)価格指数

Fedの積極的な利上げを受け、PCEコアの前年同月比は2022年6月以来の4%割れを迎えた。ただし、総合はエネルギー価格に押し上げられ2カ月連続で前月を上回った。

・PCE価格指数は前月比0.4%上昇、市場予想の0.5%以下、前月は0.2%
・前年比は3.5%上昇、市場予想と一致、前月は3.4%(3.3%から上方修正)
・コアPCEデフレーターは前月比0.1%上昇、市場予想の0.2%以下、前月は0.2%
・コアPCEの前年比は3.9%上昇、市場予想と一致し2021年6月以来の4%割れ、前月は4.3%(4.2%から上方修正)

チャート:8月のコアPCEは2022年6月以来の4%割れ

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(作成:Street Insights)

――8月はコアインフレの鈍化を確認し、ウィリアムズNY連銀総裁が利上げ打ち止めを示唆したのも頷けます。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番記者、ニック・ティミラオス氏も、同総裁の総裁の「2つのリスクに直面」、「労働市場の不均衡(筆者注:労働力不足)が低下している多くの兆しあり」との発言に注目し、利上げに前向きではないとX(旧ツイッター)に投稿していました。

個人消費支出は堅調なペースで増加したようにみえますが、ガソリンの値上がりが支えとなっており、実質では0.1%増にとどまりました。また、貯蓄率が再び4%割れを迎えており、裁量的支出の余地は狭まったと言えます。クルーズ大手カーニバルが発表した7~9月期(Q3)決算では、クリスマス休暇を控えながらQ4見通しが下方修正されたように、消費余力は低下してきたように見えます。

個人消費を占う上で注目された米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は68.1(速報値の66.3)、現況指数も71.4(速報値の69.8)と、それぞれ速報値から上方修正されつつ、2カ月連続で前月以下でした。一方で、期待指数も66.0と速報値の66.3から小幅に下方修正されました。

1年先インフレ期待は3.2%と速報値の3.1%から上方修正されつつ、前月の3.5%を下回り2021年3月以来の低水準でした。5年先インフレ期待も速報値の2.7%を上回り2.8%ながら、前月の3.0%以下でした。

チャート:米ミシガン大消費者信頼感と現況は上方修正、期待はインフレ見通し重石となり下方修正

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(作成:Street Insights)

ミシガン大学の消費者調査担当ディレクターのジョアン・シュー氏は結果を受け「消費者は、米政府機関の閉鎖の可能性や全米自動車労働組合(UAW)のストライキなど、複数の不確定要素を抱えるなか、景気の行方に不安を感じているのは当然だ」と指摘、ただ「これらの動向についてより多くの情報が得られるまで、消費者は経済状況が過去数ヵ月から大きく変化したか、判断を控えている」と結んだ。

今後は米政府機関の閉鎖を受け、米9月雇用統計を始めとした政府が発表する経済指標のリリースが停止する見通しです。経済へのインパクトを含め、不確実性が高まることは間違いありません。

(カバー写真:elysiumcore/Flickr)

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