ADP Private Payrolls Hit Lowest Since January 2021, But Other Labor Market Indicators Are Fine.
米9月ADP全国雇用者数は前月比8.9万人増と、市場予想の15.3万人増を下回りました。前月の18.0万人増(17.7万人増から上方修正)から大幅に減少し、2021年2月以降の増加トレンドで最小の伸びにとどまりました。
チャート:米9月ADP全国雇用者数、2021年2月からの増加トレンドで最小
その他の労働指標を拾っていきましょう。
▽米9月チャレンジャー人員削減予定数は前月比で減少、採用予定者数は急増
米9月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で58.2%増の4万7,457人と、2ヵ月連続で増加した。前月比でも36.9%減と過去4カ月間で3回目の減少となる。
チャート:米9月人員削減予定数は、前月比で減少に反転
チャート:過去4年間と比較しても、人員削減予定数は2019年以降で2020年を除き最多
年初来の人員削減予定数は前年同期比でほぼ2倍増の60万4,514人で、2020年を除けば、2009年以降で最多となる。
チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「Q4に入り、雇用主はインフレ、金利上昇、労働問題、消費者需要に取り組んでいる」とのコメントを寄せた。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。なお、前月は1位が倉庫、2位がヘルスケア、3位が小売、4位が通信、5位が食品だった。
1位 小売 1万4,958人、前年同月は9,273人
2位 サービス 6,288、前年同月は2,308人
3位 自動車 4,769人、前年同月は221人
4位 ヘルスケア 3,976人、前年同月は2,558人
5位 消費財 3,497人、前年同月は1,287人
年初来では、以下の通り。前月と変わっていない。
1位 テクノロジー 15万1,989人、前年同月は1万8,620人
2位 小売 7万713人、前年同月は1万8,213人
3位 ヘルスケア 5万2,611人、前年同月は2万3,850人
4位 金融 4万3,675人、前年同月は1万4,832人
5位 倉庫 4万3,612人、前年同月は7,799人
採用予定者数は前年同月比55.4%増の59万353人と前年比で9カ月ぶりに増加した。前月比では約80倍増に膨らみ、年初来で3回目の増加となった。水準自体、2021年9月以来で最多となった。
チャート:採用予定者数、2021年9月以来で最多
年初来の採用予定者数は前年同期比82.6%減の72万2,633人で、少なくとも、2016年以降で最低となる。
セクター別では、単月で以下の通り。配送大手のUPSやフェデックス、小売などが押し上げた。前月は1位が金融、2位がエネルギー、3位が自動車、4位が食品、5位が資本財だった。
1位 小売 43万8,420人
2位 輸送 10万200人
3位 政府 3万48人
4位 エネルギー 4,684人
4位 航空・宇宙 3,820人
▽米8月求人数は前月比で4カ月ぶりに増加も、求人数/失業者数は2021年9月以来の低水準
米8月雇用動態調査によると、求人数は961万人と市場予想の880万人を上回った。前月の883万人(958.2万人から下方修正)を7.7%上回り、5カ月ぶりの水準へ増加した。2021年3月以降で最低に。求人数は28ヵ月連続で失業者数を上回りつつ、その差は3カ月連続で縮小した。
チャート:求人数は4カ月ぶりに増加し、5カ月ぶりの高水準
チャート:求人数と失業者数の差は、再び縮小
求人数が増加したものの、失業者数も大幅に増えた結果、失業者1人当たりの求人件数は1.51件と2021年9月以来の低水準だった。
チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した1.51件まで減少
採用者数は前月比0.6%増の586万人と3カ月ぶりに増加し、2021年1月以来の低水準近くを保った。
離職者数は568万人と前月比0.7%増で、3カ月ぶりに増加した。こちらも、2021年1月以来の低水準近くを維持。今回、定年や自己都合による自発的離職者数が同0.5%増の364万人と3カ月ぶりに増加し、離職者数を押し上げた。なお、自発的な離職者数は、自動車大手GMが今年から年間10億ドルのコスト削減を目指し、早期退職制度を通じ全世界で定額給従業員5,000人を削減する方針を発表したように、”自主退職制度”を通じた離職であれば解雇者ではなく自発的離職者数にカウントされる場合がある。逆に、解雇者数は同0.1%減の168万人と、わずかながら3カ月ぶりに減少した。
チャート:離職者数、8月は3カ月ぶりに増加
▽米新規失業保険申請件数、2019年の平均値以下を維持
9月30日週までの米新規失業保険申請件数は20.7万件と、市場予想の21.0万件を下回った。前週の20.5万件(20.4万件から上方修正)に続き、2019年平均値を下回った水準となった。
9月27日週までの継続受給者数は166.4万人と、前週の166.5万人(167万人から下方修正)を超え、米新規失業保険申請件数と反対にゆるやかな増加をたどった。
チャート:米新規失業保険申請件数は低水準で推移、継続受給者数も大幅増を回避
――その他、オンライン求人広告大手インディードのリアルタイム求人動向は、9月は下げ渋りつつ、2021年5月以来の水準で低迷しています。
チャート:インディードのリアルタイム求人広告動向、2021年5月以来のレベルに落ち込んだ後は小康状態
ーー以上、米雇用指標はADP全国雇用者数が弱い数字を叩き出した程度で、他は堅調な労働市場を映し出しました。9月15日にストライキに入った全米自動車労働組合(UAW)の影響は限定的とみられるだけに、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社の採用予定者数並みに強い数字が飛び出すか、注目されます。
この採用予定者数とNFPのうち民間就労者数の相関係数は0.60である程度の相関が認められ、今回の数字を当てはめれば、米9月雇用統計・民間就労者数は13.5万人増となる見通しです。ただ、市場予想の16万人増を下回るだけに、採用予定者数の急増が必ずしも民間就労者数を通じNFPを押し上げるとは限らないようです。
(カバー写真:COD Newsroom/Flickr)
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