September Core CPI Shows Inflation Trends Moderating.
米9月消費者物価指数(CPI)は前月比0.4%上昇し、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.6%を下回りつつ、13カ月連続で上昇した。エネルギーがプラスを保ち、帰属家賃など住宅関連や自動車保険などが高止まりしたが、中古車や服飾などがマイナスとなった。
CPIコアも前月比0.3%上昇し、市場予想並びに前月と変わらず。2020年6月以降続く上昇トレンドを保った。
FF先物市場は、米9月CPI[を受け12月FOMCでの利上げ織り込み度が上昇したものの、引き続き米利上げ打ち止めとの見方が優勢だ。
CPIの内訳を前月比でみると、原油価格が9月に一時95ドルを付け2022年8月以来の高値をつけるなか、エネルギー(全体の6.8%を占める)が1.5%上昇し、前月の5.6%に続きプラスを維持した。ガソリンも2.1%と4カ月連続で上昇。エネルギー・サービス(公益)は逆に前月の0.6%上昇し、前月の0.2%に続き2カ月連続でプラス。電力が1.3%上昇したが、ガスは1.9%と3カ月ぶりにマイナスに転じた。
食品(全体の13.4%を占める)は同0.2%と3カ月連続で変わらなかった(詳細は後述)。
チャート:CPIの費目別寄与、前月から鈍化も高止まり
食品とエネルギー以外を前月比でみると、航空運賃が2カ月連続で低下したほか、宿泊も上昇に転じた。引き続き帰属家賃など住宅関連は高止まり。新規契約でマイナスが続くなか、通常1~2年契約という事情もあってサンプルに足元の動向は反映されづらかったが、未だ明確な減速は確認されていない。新車が2カ月連続で上昇するなか、自動車メンテナンスは伸びが鈍化。一方で、中古車や服飾はマイナスとなった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主要な項目の前月比は、以下の通り。
(上昇費目)
・宿泊 3.7%上昇、前月は3.0%の低下
・自動車保険 1.3%上昇し21カ月連続で上昇、前月は2.4%上昇
・住宅 0.6%上昇しプラス圏を維持、前月は0.4%上昇
・帰属家賃 0.6%上昇しプラス圏を維持、前月は0.4%上昇
・家賃 0.5%上昇しプラス圏を維持、前月は0.5%上昇
・娯楽 0.4%の上昇、前月は0.2%の低下
・新車 0.3%上昇し2カ月連続でプラス、前月は0.3%の上昇
・航空運賃 0.3%上昇し2カ月連続でプラス、前月は4.9%上昇
・自動車メンテナンス/修繕 0.2%上昇し18カ月連続で上昇、前月は1.1%
(横ばい、低下項目)
・中古車 2.5%低下し4ヵ月連続でマイナス、前月は1.2%の低下
・服飾 0.8%低下、前月は0.2%上昇
CPIは前年同月比3.7%と市場予想の3.6%を超え、前月と一致した。CPIコアは同4.1%と市場予想通りで、前月の4.3%を下回り、2021年9月以来の水準に鈍化した。
チャート:CPIの前年比はエネルギーが押し下げも、住宅を軸にその他が大きい
チャート:物価はPCEともにコアが鈍化トレンドを維持
――経済正常化の初期に著しい上昇を遂げた費目の前年同月比を振り返ると、まちまちでした。新車(前月:2.9%→2.5%)は伸びを縮め、航空運賃(前月:13.3%の低下→13.4%の低下)と中古車(前月:6.6%低下→8.0%低下)とそれぞれマイナス幅を拡大。しかし、自動車保険(前月:19.1%→17.8%)や宿泊(前月:3.0%→7.3%)などが前月を上回りました。
チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、自動車保険と宿泊以外は鈍化が鮮明に
CPIの13.4%を占める食品の前年同月比は、肉類・魚・卵(前月:0.0%→0.2%の上昇)とプラスに転じた程度で、鈍化が優勢。シリアル・パン類(前月:6.0%→4.8%)や食費(前月:3.0%→2.4%)、外食(前月の6.5%→6.0%)と前月以下の伸びが続きます。
チャート:外食を含め、鈍化が鮮明に
6.8%を占めるエネルギーは前年同月比で0.5%低下し7カ月連続でマイナスでしたが、原油高を受けて下げ幅を縮小しました。ガソリンは同3.0%上昇し8カ月ぶりにプラスに転じただけでなく2022年11月以来の高い伸びとなりました。公益(電力・ガス)も同3.4%の低下と、④カ月連続でマイナスだった。
チャート:ガソリンがプラスに反転、光熱費は鈍化トレンドを維持
アトランタ連銀が発表する粘着CPI(帰属家賃や外食、医療サービスなど、変動の鈍い品目に絞って算出したCPI)は前年同月比51%の上昇と、前月の5.3%を下回り2022年4月以来の5%割れが視野に入りました。さらに、住宅を除いた場合に至っては3.3%と前月の3.6%を下回り、2021年9月以来の3%割れに一歩近づいています。パウエルFRB議長を始めFedは住宅を除くコアサービスに注目するなか、住宅以外は着実に落ち着きつつあり、フィラデルフィア連銀総裁などハト派寄りのFed高官は米利上げ打ち止めに言及していると考えられます。
チャート:粘着CPI、住宅を除けば減速が鮮明
チャート:住宅関連のCPIは、前年同月比でゆるやかながら鈍化トレンドを確認
CPIのヘッドラインの前年同月比が高止まりするなか、実質の平均時給はプラス圏を確保しつつ伸び悩みました。実質平均時給は前年同月比0.5%上昇し8月と変わらず、6カ月連続でプラスとなるも、2021年3月以来の高い伸びだった6月の1.3%以下を保ちます。生産労働者・非管理職に至っては0.8%上昇し、7カ月連続でプラス圏を維持しつつ、前月の0.9%以下に。2021年2月以来の高い伸びとなった6月の2.2%からまた一歩遠ざかりました。
チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は縮小
その他、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は63.0となり、市場予想の67.2を下回った。前月の68.1にも届かず5カ月ぶりの低水準となる。現況指数も66.7と市場予想の70.4以下となり、前月の71.4も下回った。期待指数も60.7でこちらも市場予想の65.5だけでなく前月の66.0を下回り、5カ月ぶりの低水準だった。
1年先のインフレ期待は3.8%と、前月の3.2%を超え5カ月ぶりの高水準だった。5―10年先インフレ期待も3.0%と、2022年9月以来の低水準だった前月の2.8%を上回った。
チャート:米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値、インフレ見通しの上昇を受け5カ月ぶりの低水準
CPIはエネルギーや帰属家賃など住宅関連以外で鈍化傾向を確認しました。イスラエルとハマスの大規模衝突を受けて原油高によるインフレ加速が意識されますが、アラブの盟主を自負するサウジアラビアが米国とイスラエルとの三者合意を引き続き目指すならば、世界経済の減速を受けて原油高が継続するかは不透明、また、航空運賃の伸び鈍化が示されるように一部のコト消費は鈍化の兆しがみられるだけに、現時点では追加利上げの可能性は低いと言えそうです。
(カバー写真:Ron Bieber/Flickr)
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