U.S. Personal Spending Growth Accelerates,But Income Gain Less Than Expected.
米9月個人消費支出は前月比0.7%増と、市場予想の0.5%増を上回った。前月の0.4%増も超えた。
〇個人消費支出
個人消費の結果は以下の通り。名目ベースは増加した半面、インフレを除く実質ベースは減少した。
・前月比0.7%増と6カ月連続で増加、市場予想の0.5%増を上回る、前月は0.4%増
・前年比では5.9%増と21年1月以降の増加トレンドを維持、前月は5.8%増
・実質ベース前月比0.4%増と6カ月連続で増加、前月は2.3%増
・前年比では2.4%増と21年3月以降の増加トレンドを維持、前月は2.3%増
耐久財は自動車・部品が前月比1.0%増と押し上げた。また、家具も0.3%増と増加に転じた。非耐久財は食品・飲料が0.4%増、服飾が0.7%増と支えた半面、ガソリンは0.8%減と伸びを抑えた。サービスはヘルスケアや外食が押し上げた。
個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.7%増と6カ月連続で増加、前月は0.7%増
・耐久財 1.0%増と増加に反転、前月は0.3%減
・非耐久財 0.5%増と4ヵ月連続で増加、前月は1.3%増
・サービス 0.8%増と2022年2月以降の増加トレンドを維持、前月は0.3%増
チャート:個人消費、前月比の項目別内訳
チャート:個人消費、前月比ベースでの名目と実質の違い
〇個人所得
米9月個人所得は前月比0.3%増と、市場予想の0.4%増を下回った。前月の0.4%増に届かなかったものの、増加基調を保った。
個人所得の結果は以下の通り。
・前月比0.3%増と2022年2月以降の増加トレンドを維持、市場予想の0.4%増を下回る、前月は0.4%増
・前年比では4.7%増と2022年4月以降の増加トレンドを維持、前月は4.8%増
・実質ベースは前月比横ばい、4カ月連続で横ばい
・前年比では1.2%増と2月以降の増加トレンドを維持、前月は1.3%増
個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は24ヵ月連続で増加したものの伸びは鈍化した。一方で、家賃収入が引き続き力強い伸びとなり全体を支えた。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下したため、販売用物件の減少も重なって家賃の上昇が進行した。足元、新規契約分の家賃は前月比で下落が指摘されているが、家賃は基本1~2年契約のため、下落が反映されるまでラグを伴う傾向がある。
所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。
・賃金/所得 0.4%増と9ヵ月連続で増加(民間は0.3%増、政府部門は0.7%増)、前月は0.5%増
・経営者収入 0.4%減と4カ月連続で増加(農業は2.1%減、非農業は0.7%増)、前月は0.6%増
・家賃収入 0.7%増と4ヵ月連続で増加、前月は0.8%増
・資産収入 0.5%増と3ヵ月連続で増加(金利収入が1.0%増、配当が0.1%増)、前月は0.5%増
・社会補助 0.1%減と4カ月連続で減少、前月は0.1%減
・社会福祉 0.2%減と4カ月連続で減少(メディケア=高所得者向け医療保険は0.2%増、メディケイド=低所得者層向け医療保険は1.4%減、失業保険は1.4%減、退役軍人向けは0.1%増と増加基調を維持、その他は1.0%減)
チャート:個人所得、前月比の項目別内訳
〇可処分所得
・前月比0.3%増と2ヵ月連続で増加、前月は0.3%増
・前年比は7.1%増と2022年5月以降の増加トレンドを維持、前月は7.3%増
・実質ベースの可処分所得は0.1%減と2カ月連続で減少、前月は0.1%減
・前年比は3.5%増と年初来からの増加トレンドを維持、前月は3.7%増
〇貯蓄率
・3.4%、前月の4.0%を下回り年初来で最低。2019年平均の7.4%以下が続くが、1959年のデータ取得以降で3番目の低い伸びとなった2022年6月につけた2.7%から改善基調を継続、過去最低は2005年7月の2.1%。
チャート:個人消費の伸びが鈍化し、貯蓄率を小幅押し上げ
〇個人消費支出(PCE)価格指数
原油高を受け総合は加速も、コアは前月比・前年比はそろって前月を下回った。特にコアの前年同月比は2021年5月以来の低い伸びとなる。
・PCE価格指数は前月比0.4%上昇、市場予想の0.3%を下回る、前月は0.4%
・前年比は3.4%上昇、市場予想と一致、前月は3.4%(3.5%から下方修正)
・コアPCEデフレーターは前月比0.3%上昇、市場予想と一致、前月は0.1%
・コアPCEの前年比は3.7%上昇、市場予想と一致、前月は3.8%(3.9%から下方修正)
チャート:9月はコアPCEが2021年5月以来の低い伸び
――個人消費は力強さを維持したものの、所得の伸びを下回りました。何より、賃金/所得の民間の伸びは前月比で9カ月連続で増加した中で最も小幅にとどまります。所得を上回るペースで消費した結果、貯蓄率は年初来で最低を更新。個人消費の力強さはサステナブルでないと言えるでしょう。
実際、原油高を受けたインフレ懸念の再燃で、消費者のセンチメントは低下しつつあります。米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は63.8と、速報値の63.0から上方修正されたとはいえ、5カ月ぶりの低水準でした。現況指数も70.6(速報値は66.7から上方修正)、期待指数も59.3(速報値は60.7から下方修正)だったところ、現況指数は4カ月ぶりの低水準、期待指数は5カ月ぶりの低水準でした。
1年先インフレ期待は4.2%と速報値の3.8%から上方修正され、5カ月ぶりの高水準でした。5年先インフレ期待は速報値と変わらず3.0%、ただし前月の2.8%を超えました。
チャート:米10月ミシガン大消費者信頼感、短期のインフレ期待の上昇に反比例し低下
ミシガン大学の消費者調査担当ディレクターのジョアン・シュー氏は結果を受け、「今回の鈍化は米株市場の低迷と一致し、高所得者層と多額の株式を保有する消費者に大きく影響された」と分析しました。高所得者層だけでなく、消費者全体も「1年先の景況感は16%急落し、消費者自身の1年先の家計に対する期待は8%落ち込んでおり、これはインフレに対する継続的な懸念と、国内外でのネガティブなニュースの影響に対する不確実性を反映したのだろう」と指摘。一連の結果を踏まえれば、個人消費が力強さを維持しそうにないと言えるでしょう。
(カバー写真:Firelknot/Flickr)
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