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米11月雇用統計、黒人男性の失業率が22年2月以来の水準へ悪化

by • December 10, 2023 • Latest News, NY TipsComments Off5392

Unemployment For Black Men Hits Highest Since February 2022.

米11月雇用統計は、こちらで紹介しましたように、全米自動車労働組合(UAW)や俳優のストライキ終了などを受け、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を上回る伸びを達成しました。その他、労働参加率が2020年2月以来の高水準だった8―9月の水準を回復するなか、失業率は2022年1月以来の水準へ上昇した前月の3.9%→3.7%へ低下、労働市場の底堅さを示しました。

NFPに視点を戻し業種別の動向をみると、今回、娯楽・宿泊は4.2万人増と増加トレンドを維持したものの、2022年平均の8.8万人増を大幅に下回りました。UAWや俳優のストライク終了効果もあって、そこに含まれる食品サービスは3.8万人増と前月の1万人増(過去分は上方修正)を超えました。なお、娯楽・宿泊は2020年2月の水準を回復していない3業種のうちの1つです。

チャート:娯楽・宿泊のうち、食品サービスの雇用は11月に回復

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(出所:Street Insights)

そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通り。

〇平均時給

平均時給は前月比0.4%上昇の34.10ド ル(約4,940円)と、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.2%を超え、2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は4.0%と市場予想と一致し、2021年6月以来の低い伸びとなった。前月は4.1%から4.0%へ下方修正された。前月と変わらなかったものの、少数第3位で見ると前月は4.04%だったが、今回は3.96%とわずかに鈍化した。生産労働者・非管理職の前年同月比は4.3%と、同じく2021年6月以来の低い伸びだった。

業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.4%以上だったのは13業種中で4業種で、前月の速報値ベースの11業種を下回り、賃上げ圧力の低下を確認した。今回の1位はUAWが賃上げを勝ち取った自動車を含む製造業(0.6%上昇)、娯楽・宿泊(0.6%上昇)、建設(0.5%上昇)、4位は専門サービス(0.4%上昇)だった。一方で、5業種がマイナスとなり、前月の速報値ベースの2業種を上回った。NFPで2カ月連続で減少を確認した小売(1.3%減)のほか、鉱業・伐採(0.7%減)、俳優のスト終了を受けても情報(0.5%減)、金融(0.2%減)が入り、公益は微減だった。その他サービスは横ばいだった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(出所:Street Insights)

チャート:前年比ではインフレ目標値2%超えが目立つも、今回NFPで増加を主導したヘルスケアを含む教育・健康は伸び悩み

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(出所:Street Insights)

〇労働参加率

労働参加率は前月通り62.8%と8ー9月の水準を回復し、2020年2月以来の水準を回復した。働き盛りの男性(25~54歳)をみると,全米は上昇したが、白人は25~54歳で横ばい、25~34歳で低下するなど、まちまちだった。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 89.3%、前月は89.0%と2月以来の低水準、9月は89.6%と2019年3月の水準と一致
・25~54歳(白人) 90.3%、前月は90.5%と2020年2月(90.6%)以来の高水準
・25~34歳 89.2%、前月は89.1%と5カ月ぶりの低水準、7月は90.0%と2012年10月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.4%と5カ月ぶりの低水準、前月は90.7%、9月は90.8%と2019年11月以来の高水準

チャート:働き盛りの男性はそろって低下

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(出所:Street Insights)

働き盛りの女性は男性と反対に25~54歳と25~34歳がそろって低下

・25~54歳 77.4%、前月は77.6%、4月は77.8%と統計開始以来で最高
・25~34歳 77.9%と5カ月ぶりの低水準、前月は78.7%と1997年のデータ公表以来で最高

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男性と女性がそろって上昇した

・男性 23.6%と11カ月ぶりの高水準、前月は23.1%、なお、2022年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 16.2%と2020年2月以来の高水準に並ぶ、前月は16.1%

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率、そろって低下

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(出所:Street Insights)

労働参加率を16~24歳、20~24歳、55歳以上で分けてみると、16-19歳以外は低下したが、それ以外は上昇した。

・16~19歳 37.5%、前月は37.9%と2009年3月以来の高水準
・20~24歳 71.6%と8カ月ぶりの高水準、前月は70.8%、7月は70.6%と2022年11月以来の低水準
・55歳以上 38.8%と2022年11月以来の水準に並ぶ、前月は38.6%

チャート:16~19歳のみ上昇、2009年3月以来の高水準

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(出所:Street Insights)

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が改善するなか、前月比0.9%減の532.4万人と2カ月連続で減少した。男性が同3.2%減の237.1万人と過去6カ月間で4回目の減少となった一方で、女性が同1.0%増の295.3万人と過去6かげつ間で5回目の増加となり、男女で明暗が分かれた。

チャート:職を望む非労働力人口、男性が減少を主導も女性は増加

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(出所:Street Insights)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、まちまち。男性は9カ月ぶりの低水準だった前月の67.9→68.4%とUAWのストライキ突入前を小幅に上回る水準となり、2020年3月(68.5%)以来の高水準だった3月の68.4%に並んだ格好だ。女性は前月の57.6%→57.5%へ低下し、2020年2月(57.9%)以来の水準へ切り上げた8月の57.7%から一歩遠ざかった

チャート:男女別の労働参加率、UAWのスト終了を一因に男性で改善が顕著に

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(出所:Street Insights)

男女の失業率は、そろって低下。男性は労働参加率が改善しつつ、UAWがストに突入した9月と10月の4.1%→4.1%に低下した。女性は労働参加率の低下につれ、6カ月ぶりの水準をつけた前月の3.6%→3.4%へ低下。なお、女性は4月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男性の失業率は22年1月以来の水準へ急伸、女性も小幅上昇

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(出所:Street Insights)

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、引き続き黒人とヒスパニック系の男女でプラスで全て上げ幅を広げた白人男性は4カ月連続でマイナスだったが、下げ幅を縮白人女性のみマイナス圏を維持しながら下げ幅を拡大した。

チャート:男女・人種別の就業者数の20年2月との比較、白人女性以外で改善

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(出所:Street Insights)

人種別の週当たり賃金は5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

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(出所:Street Insights)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、アジア系を除き全て上昇(データは季節調整済み)した。

・白人 62.4%、前月は62.3%と4カ月ぶりの低水準、8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 63.6%と3月以来の高水準、前月は62.9%、3月は64.1%と2008年8月以来の高水準
・ヒスパニック系 67.0%、前月は66.9%と5カ月ぶりの低水準、7月は67.4%と2020年2月(67.9%)以来の高水準
・アジア系 65.0%、前月は65.3%、9月は65.7%と2010年4月以来の高水準、2020年2月は64.5%
・全米 62.8%と8ー9月と同じく2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ、前月は62.7%

チャート:人種別の労働参加率、アジア系を除き全て上昇

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(出所:Street Insights)

人種・男性別の労働参加率は、前月と反対に白人、黒人、ヒスパニック系の全てで上昇した。

・白人 70.4%と2020年10月以来の高水準、前月は70.0%、2020年3月は71.0%
・黒人 69.2%と3月以来の水準を回復、3月は70.5%と2009年1月以来の高水準、前月は67.5%と2022年10月以来の低水準、
・ヒスパニック系 79.2%、前月は78.7%と2022年9月以来の低水準、7月は79.9%と2020年6月以来の高水準(80.1%)、2020年2月は80.3%

チャート:人種・男性別では白人が前月比横ばい、黒人とヒスパニック系は上昇

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(出所:Street Insights)

人種・女性別の労働参加率はまちまち、白人は低下、黒人は横ばい、ヒスパニック系は改善した。

・白人 57.6%、前月は57.7%、8月は58.0%と2020年2月以来の高水準(58.2%)
・黒人 63.6%で変わらず、5月以来の高水準、4~5月は63.9%と2020年2月(63.9%)の水準に並ぶ
・ヒスパニック系 61.5%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は61.2%、9月は61.9%と2020年2月以来の高水準(62.2%)、2020年2月は62.2%

チャート:人種・女性別はヒスパニック系が改善、黒人は横ばい、白人は低下

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(出所:Street Insights)

人種別の失業率は、アジア系が上昇しており、他は低下あるいは横ばい。白人は労働参加率が上昇したが低下した一方で、黒人は労働参加率が上昇するなかで横ばい。ヒスパニック系はは労働参加率が上昇しても改善した。アジア系のみ、労働参加率が低下したにもかかわらず、失業率は上昇した。

・白人 3.3%、前月は3.5%と2021年11月以来の高水準、2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 5.8%と前月と変わらず、4月は4.7%と過去最低を更新
・アジア系 3.5%と2022年1月以来の高水準、前月は3.1%、7月は2.3%と2019年6月以来の低水準
・ヒスパニック系 4.6%、前月は4.8%、8月は4.9%と2022年1月以来の高水準、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・全米 3.7%、前月は3.9%と2022年1月以来の高水準、なお4月は3.4%と1月に続き1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率は労働参加率が低下したアジア系のみ上昇、黒人は横ばい、白人とヒスパニック系は低下

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(出所:Street Insights)

人種・男女別では以下の通り。労働参加率が急伸した黒人男性では失業率もつれて2022年2月以来の高水準だった。逆に労働参加率が前月比横ばいだった黒人女性は失業率が低下した。ヒスパニック系は男女共に労働参加率が改善するなか、男性は横ばい、女性は上昇。労働参加率が上昇した白人男性の失業率は低下したが、女性も低下した。

・白人男性 3.2%と4カ月ぶりの低水準、前月は3.4%と2021年10月以来の水準へ上昇
・白人女性 2.7%、前月は2.8%、6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 6.4 %と2022年2月以来の高水準、前月は5.3%、4月は4.5%と過去最低
・黒人女性 4.6%、前月は5.7%と2022年10月以来の高水準、4月は3.8%と過去最低
・ヒスパニック系男性 3.9%で前月と変わらず、8月は4.1%と5カ月ぶりの水準へ上昇
・ヒスパニック系女性 3.8%、前月は3.7%と5カ月ぶりの低水準

チャート:人種・男女別の失業率、黒人の男女以外は全て上昇

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(出所:Street Insights)

白人と黒人の失業率格差は拡大。白人と黒人の失業率がそれぞれ低下したものの、白人の低下幅が大きく、失業率格差は過去2カ月間の2.3%ptから2.5%ptと4カ月ぶりの水準に開いた。なお、過去最低は4月の1.6ポイント。

チャート:白人と黒人の失業率格差、3カ月ぶりに拡大

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(出所:Street Insights)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、まちまち前月に続き中卒から高卒は上昇したものの、大卒は低下した。

・中卒 48.3%と2月に続き過去最高、前月は47.9%
・高卒 57.4%と2020年2月(58.3%)以来の高水準、前月は56.9%
・大卒以上 72.7%、前月は72.8%、9月は73.5%と前月通りで2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.8%と8-9月に続き2022年2月(63.3%)以来の水準に並ぶ、前月は62.7%

学歴別の失業率は、まちまち。労働参加率が改善した中卒と高卒で上昇したが、労働参加率が低下した大卒は横ばい、大学院卒は低下した、なお、大卒以上は学生ローン返済免除が米連邦最高裁判所で無効との判断を下された結果、10月から債務返済が再開する。

・中卒以下 6.3%と2022年1月以来の高水準、前月は5.8%、2022年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.1%と2022年8月以来の高水準に並ぶ、前月は4.0%と、7月は3.4%と2019年4月以来の低水準
・大卒 2.1%と3カ月連続で横ばい、2022年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒以上 1.8%と6カ月ぶりの低水準、前月は2.1%、2021年12月は1.3%と2000年4月以来の低水準
・全米 3.9%と2022年1月以来の高水準、8-9月は3.8%、前月は3.5%、4月は3.4%と1月に続き1969年5月以来で最低

チャート:失業率は大卒のみ低下、中卒と大学院卒は上昇、高卒は横ばい

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(出所:Street Insights)

チャート:米景気減速が一因なのか、高賃金とされる大学院卒の労働参加率が低下も失業率は上昇

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(出所:Street Insights)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①NFPの増加を主導してきた娯楽・宿泊のうち、食品サービスが改善

平均時給は前月比で2022年3月以降で初の4%割れが視野に、労働参加率が上昇したにもかかわらず鈍化トレンドを維持。13業種中、前月比マイナスは4業種と前月の2業種を上回った。

③働き盛りとされる25~54歳をみると、男性は白人は25~54歳で横ばい、25~34歳で低下しており、白人以外が労働参加率の改善を牽引

④男性の労働参加率が改善も、女性は65歳以上を除き低下

人種別では、黒人男性で労働参加率の改善に合わせ失業率の悪化が目立ったほか、ヒスパニック系女性も労働参加率が上昇するなか失業率が上昇した。前月は黒人女性で労働参加率の改善と失業率の上昇を確認していた。性別・人種別のうち、労働参加率の改善に合わせ失業率が低下したのは、白人男性のみである。

・労働参加率が上昇+失業率が上昇→黒人男性、ヒスパニック系女性
・労働参加率が上昇+失業率が低下→白人男性
・労働参加率が上昇+失業率は横ばい→ヒスパニック系男性
・労働参加率が横ばい+失業率が低下→黒人女性
・労働参加率が低下+失業率が低下→白人女性

⑤学歴別ではまちまち。労働参加率が中卒と高卒で上昇するなか、失業率は上昇。逆に、大卒以上の労働参加率は低下するなか、失業率は大卒で横ばい、大学院卒以上低下。

ーー以上、米11月雇用統計はUAWや俳優のストライキ終了に支えられ、改善しました。人種別で白人男性の労働参加率と失業率がそろって改善したのは、自動車製造関連の雇用の6割を白人が占めるだけに、UAWの影響が大きかったと考えられます。一方で、黒人男性とヒスパニック系の女性は労働参加率の改善に反し失業率は上昇、特に前者は2022年2月以来の水準へ悪化しました。非白人は米景気減速局面で最も逆風に直面しやすいだけに、平均時給が前月比でマイナスとなった業種の増加と合わせ、労働市場の鈍化を確認したと言えそうです。

(カバー写真:Metropolitan Transportation Authority/Flickr)

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