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米12月雇用統計、NFPは好調もフルタイムが20年4月以来の落ち込み

by • January 5, 2024 • Finance, Latest NewsComments Off33397

Don’t Be Fooled By Non-Farm Payrolls Good News, Full Time Workers Plummet.

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、市場予想を大幅に上回りました。労働参加率が低下するなか、失業率は3.7%と前月と変わらず。平均時給は全米自動車労働組合(UAW)のスト終結に伴う賃上げの影響か、前月比と前年比そろって市場予想を上回り、賃上げ圧力の再燃を示唆しています。

一連の好材料を受け、FF先物市場で3月の利下げ観測が低下し年内6回の利下げ予想が5回に減少したものの、米12月ISM非製造業景況指数が50.6と分岐点の50割れが迫っただけでなく、雇用が43.3と2020年7月以来の水準に急低下したため、再び元へ戻しました。

画像;FF先物市場の反応(NY時間12時時点)

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(出所;Fedwatch)

チャート;米12月ISM非製造業景況指数、雇用は2020年4月以来の低水準

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(出所;Street Insights)

米金融市場は、ドル円が146円に接近→米12月ISM非製造業景況指数を受け一時144円割れなど乱高下。現時点では、米株が小幅高、米債は小幅安(利回りは小幅上昇となっています。

日足チャート:ドル円は、米12月雇用統計結果を受けて一時145.98円へ上昇も、米12月非製造業景況指数を受け143.81円まで本日安値を更新

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(出所:TradingView)

今回の雇用統計のポイントは、以下の通り。

(労働市場にポジティブ)

・NFPが前月を上回る
・失業率が前月と変わらず、低水準を維持
・平均時給の伸び、前月比と前年同月比ともに市場予想超え(インフレ抑制の観点ではネガティブ、購買力の観点でポジティブ)

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・過去2カ月分は下方修正
・週当たり労働時間、財が押し下げ2020年4月以来の低水準
・労働参加率が2020年2月以来の高水準から低下
・就業率が2022年12月以来の低水準
・不完全雇用率は2022年2月以来の高水準近くへ戻す
・フルタイムの減少幅、2020年4月以来で最大
・家計調査の就業者数、2020年4月以来の落ち込み
・「病気が理由で働けない」人々、2015-19年平均超えが続く

以下は、今回の雇用統計の詳細。

〇非農業部門就労者数

米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比21.6万人増となり、市場予想の17万人増を上回った。前月の17.3万人増(19.9万人増)も超え、3カ月ぶりに20万人の伸びへ戻した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比16.4万人増と市場予想の13万人増を上回った。前月の13.6万人増(15万人増から下方修正)も超えた。民間サービス業は14.2万人増と、前月の10.6万人増(12.1万人増から下方修正)を上回った。

チャート:NFPは増加、失業率は横ばい

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(出所:Street Insights)

10月分の4.5万人の下方修正(15万人増→10.5万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で7.1万人の下方修正となった。以前から筆者が指摘し2023年7月に入ってウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も記事で取り上げたように、NFPは労働市場を過大評価している可能性が再び意識されよう。

チャート:年初来のNFPと、修正幅(グレー枠は2023年での修正幅)

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(出所:Street Insights)

サービス部門のセクター別動向は、11業種中8業種で増加し、過去2カ月の7業種を上回った。今回最も雇用が増加した業種は3カ月連続で教育・健康、次いで4カ月連続で政府が入り、NFPに寄与。娯楽・宿泊は3カ月連続で3位だった。一方で、3業種は減少。公益がわずかながら減少に転じたほか、その他サービスが減少に反転。また、年末商戦終了の反動を受け輸送・倉庫が4カ月連続で減少し過去7カ月間で6回目のマイナスとなった、小売も2カ月連続で減少した。

(サービスの主な内訳)

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(出所:Street Insights)

財生産業は前月比2.2万人増と、2カ月連続で増加。業種別をみると、建設が9カ月連続で増加したほか、製造業が2カ月連続で増加した。一方で、鉱業・伐採は3カ月連続で小幅ながら減少した。詳細は、以下の通り。

(財生産業の内訳)

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(出所:Street Insights)

チャート:業種別、雇用の増減

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(出所:Street Insights)

チャート:20年2月との比較、民間サービス部門は前月の3.7%増→3.8%増と21ヵ月連続でプラス圏をたどると共に上げ幅を広げた。政府を含めたサービス部門の11業種中、当時の水準を超えた業種は、過去2カ月分の修正を経て小売が返り咲いたため、前月の8業種から9業種へ戻した。小売のほか輸送・倉庫、専門サービス、情報、金融、公益、卸売、教育・健康、政府となる。一方で、娯楽・宿泊、その他サービスは引き続きマイナスをたどった。

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(出所:Street Insights)

財部門は2.9%増と前月の2.8%増を上回り、20ヵ月連続でプラス圏を守った。建設が前月の5.7%増→5.9%増。製造業も前月の1.5%増→1.6%増とそろって上向いた一方で、鉱業・伐採は引き続きマイナスをたどっただけでなく、前月の6.4%減→6.6%減と下げ幅を広げた。

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(出所:Street Insights)

〇平均時給

平均時給は前月比0.4%上昇の34.27ド ル(約4,970円)と、市場予想の0.3%を上回った。前月の0.4%と並び、2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は4.1%と市場予想の3.9%を超え、2021年6月以来の低い伸びとなった前月の4.0%も上回った。一方で、生産労働者・非管理職の前年同月比は4.3%と、前月の4.4%を下回り同じく2021年6月以来の低い伸びだった。

チャート:平均時給は前年比で2021年6月以来の低い伸び

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(出所:Street Insights)

〇週当たり労働時間

週当たりの平均労働時間は34.3時間と、市場予想と前月の34.4時間を下回り、2020年4月以来の水準に再び落ち込んだ。2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を下回り続けたままだ。財部門(製造業、鉱業、建設)は39.7時間と前月の39.8時間から短縮し、2021年2月以来の低水準。引き続きコロナ禍で最長となった2月の40.4時間以下が続く。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは10ヵ月連続で33.3時間と、経済活動が停止した2020年3月(32.9時間)以来の低い水準に並んだ前月の32.3時間を上回った。ただし、2006年以降で最長を記録した21年5月の33.9時間以下が続く。

チャート:週当たり平均労働時間は、2020年4月以来の低水準

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(出所:Street Insights)

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は労働時間が前月から短縮したため、就労者数の伸びが前月を上回ったものの、前月比で0.1%減とマイナスに転じた。平均時給の前月比の伸びが堅調だった、一方で、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.3%増と2カ月連続で増加した。

民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は前月比で0.3%増と前月の0.7%増を下回ったが、2021年3月以降の増加トレンドを維持。前年同月比は11月と変わらず、5.4%増。ただし、3カ月平均は前月の5.3%→5.2%増と鈍化トレンドを保った。

チャート:総賃金は改善も、3カ月平均では鈍化トレンド継続

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(出所:Street Insights)

〇失業率、労働参加率、就業率

失業率は3.7%と前月と変わらず、市場予想の3.8%以下にとどまった。ただ、労働参加率が前月から低下したことが大きく、失業者が前月比0.6万人増と小幅ながら前月の減少からプラスに転じていた。

米景気減速が指摘される一方で、自発的離職者数は83.3万人と3カ月連続で増加。自発的離職者数に占める失業者の割合は前月の13.2%から13.4%と5カ月ぶりの水準へ上昇した。

チャート:自発的離職者数は2カ月連続で増加し、シェアは5カ月ぶりの水準に上昇

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(出所:Street Insights)

自発的離職者数が小幅増加した半面、解雇者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比2.3万人増の214万人と2カ月れんぞくで減少した。解雇者数の割合は前月の34.8%→34.3%へ低下しつつ、失業者のシェアで1位を維持した。ただし、一時解雇者が前月の14.3%→14.7%へ上昇し、再参入者は前月の28.4%→27.9%へ低下したように、労働市場はやはり鈍化傾向にあると言えよう。

チャート:失業者に占める解雇者と一時解雇者は増加し、シェアも上昇

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(出所:Street Insights)

解雇者数の増加などが失業者数を押し上げるなか、サーム・ルール(失業率の直近3ヵ月移動平均と過去1年間での最低水準の差が0.5pt以上なら、1年以内に景気後退入りするとの説)を確認すると、12月は0.23ポイントと、景気後退入りのサインとなる0.5%乗せから小幅に遠のいた

チャート:サーム・ルール(直近3カ月の移動平均と過去1年間の最低水準の差)は0.23ptと、景気後退のサイン0.5%から遠のく

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(出所:Street Insights)

労働参加率は62.5%と10カ月ぶりの低水準で、20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した前月の62.8%を下回った。

就業率は60.1%と前月の60.4%下回り、2022年12月以来の水準に低下。2020年2月(61.1%)以来の高水準。就業者数が前月比68.3万人減と大幅減に転じた。

〇病気が理由で働けないとする人々

「病気が理由で働けない」とする人々は今回、前月比3.2万人増の115.1万人だった。引き続き、コロナ前平均の2015‐19年の平均値を上回った。とはいえ、足元で米国内の病院など医療施設でマスク着用の義務付けが再開するなど、インフルエンザやコロナが再拡大しつつある。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値を上回る水準が続く

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(出所:Street Insights)

〇家計調査の就労者内訳

足元、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、今回はNFPが21.6万人増に対し、家計調査の就労者数は68.3万人減と再び大幅減に転じた。2023年10月から27万人減→11月に58.6万人減ときて、再び急減した格好だ。下げ幅は、2020年4月以来で最大となる。

チャート:NFPと家計調査の就業者数の結果、家計調査の就業者数は減少に反転

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(出所:Street Insights)

家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、複数の職を持つ者が前月比22.2万人増と過去4カ月間で3回目の増加を迎えた。パートタイムに至っては76.2万人増と5カ月ぶりの大幅な伸びで2カ月連続で増加、一方で、フルタイムはなんと同153万人減と、3カ月ぶりに減少しただけでなく、2020年4月以来の落ち込みを記録した。

チャート:フルタイムは4カ月ぶりに増加、パートタイムは4カ月ぶりに減少した裏で、複数の職を持つ者が大幅増

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(出所:Street Insights)

チャート:複数の職を持つ者は、1994年のデータ公表以来で最多

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(出所:Street Insights)

NFPと家計調査の就業者数の動向の、どちらを信用すべきか悩むところだろう。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、他指標とコロナ禍を経て同様に回答率が低下をたどる。直近のデータをみると、CESは9月に41.8%、雇用動態調査(JOLTS、求人件数などを含む)は32.4%と、それぞれ低水準を保った。失業率や労働参加率などを管轄するCPSは対面と電話での聞き取り調査となるなか、10月に71.3%と、他と比較して高い。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは6万世帯に過ぎない。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。

チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

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(出所:Street Insights)

〇起業・閉鎖モデル

以前からお伝えしたように、これまで筆者は、複数の職を持つ者がNFPを押し上げた可能性を指摘していた。理由は、NFPの場合、賃金をベースにカウントするためで、家計調査と異なるため(i.e. 副業を持つ就業者の場合、NFPなら2つの雇用増とされるが、家計調査は仕事が2つあっても、1人分として集計する)。最近では、NFPを算出する上での起業・廃業モデルにも注目。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も、7月に同様の記事を配信し、起業・廃業モデルなどを理由に「NFPは労働市場を過大評価している可能性」を取り上げ、筆者以外に疑問視する声の存在を感じさせていた。

今回を振り返ると、起業の増加推計がNFPの雇用増を支えなかったようだ。起業・閉鎖調整ベース(季節調整前)の雇用増加をみると前月比5.2万人減と、前月の4万人増から大きくマイナスに転じた。

チャート:起業・閉鎖調整ベースの雇用増(季調前)は、小幅増に

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(出所:Street Insights)

かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全就業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全雇用率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は2022年2月以来の高水準だった前月の7.0%→7.1%と上昇し、2022年2月以来の高水準だった2023年11月の水準近くを維持。2023年8月から続く7%台を保つ。家計調査でパートタイムの増加につれ、上昇に転じた。

チャート:不完全雇用率、2022年2月以来の高水準

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(出所:Street Insights)

2)労働参加率 採点-×
労働参加率は62.5%と⑩カ月ぶり、2023年2月以来の低水準で、2020年2月以来の水準だった前月の62.8%から低下した。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。就業率も前月の60.2%から60.5%へ上昇し2020年2月以来の高水準だった。

チャート:労働参加率と就業率、前月から改善

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(出所:Street Insights)

3)長期失業者 採点-×
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は9.0週から9.7週へ延びた。ただし、27週以上にわたる失業者の割合は19.7%と前月の19.4%を上回り3カ月ぶりの20%乗せに迫った。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、再び上昇

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(出所:Street Insights)

4)賃金 採点-△(インフレ抑制の観点では×)
今回は11月と変わらず前月比0.4%上昇し、市場予想の0.3%を上回った。前年比は4.1%と、市場予想の3.9%と前月の4.0%を超えた。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給も前月比で0.4%。前年比は4.3%と、2021年6月以来の低い伸びだった。

(カバー写真:Carlton Theatre Group/Flickr)

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