More Bets On A Fed March Rate Cut As Core CPI Hits Lowest Since August 2021.
米12月消費者物価指数(CPI)は前月比0.3%上昇し、市場予想の0.2%を上回った。前月の0.1%も超え、2カ月連続で上昇した。CPIコアは同0.3%上昇し、市場予想と前月と一致し、2020年6月以降続く上昇トレンドは保った。
CPIは前年同月比3.4%と、市場予想の3.3%並びに前月の3.1%を上回った。CPIコアは同3.9%と市場予想の3.8%を超えつつ、前月の4.0%を下回り、2021年8月以来の4%割れを迎えた。
チャート:CPIはエネルギーが上昇したため、鈍化にブレーキ
チャート:コアCPIは鈍化も総合は再加速
米12月CPIの前年比が再加速したものの、FF先物市場ではコアCPIの鈍化を好感した上、米12月生産者物価指数(PPI)の減速も重なり、3月19~20日開催のFOMCでの利下げ織り込み度は1月12日時点に76.9%へ上昇した。
チャート:FF先物市場、米12月CPIが前年比で再加速も3月利下げ織り込み度は上昇
加えて、FF先物市場では3月以降、毎回の利下げ予想が優勢に。米景気の減速とともにディスインフレが意識され始めたようだ。
CPIの内訳を前月比でみると、原油価格が2023年12月に76ドル台へ戻すなか、エネルギー(全体の6.8%を占める)が0.4%と3カ月ぶりに上昇に転じた。ガソリンも0.2%と3カ月ぶりにプラスへ反転。逆に、エネルギー・サービス(電力・ガスなど公益)は0.9%と5カ月連続でプラスだった。電力が1.3%と5カ月連続で上昇したためで、ガスは0.4%と3カ月ぶりにマイナスに転じた。食品(全体の13.4%を占める)は同0.2%と、8カ月連続で上昇した(詳細は後述)。
チャート:CPIの前月比、エネルギーがプラスに転じ再加速
食品とエネルギー以外を前月比でみると、引き続き自動車保険が押し上げたほか、航空運賃と宿泊がクリスマスと新年を迎え3カ月ぶりにプラスに戻し、新車も上昇に転じた。中古車は2カ月連続で上昇。その他、家賃がやや伸びを鈍化させたものの帰属家賃が高止まりし、住宅が押し上げた。家賃は通常1~2年契約という事情もあってサンプルに足元の動向は反映されづらい特徴があるなか、未だ明確な減速は確認されていない。新型コロナウイルスやインフルエンザが再び大流行の兆しをみせ、一部で病院など医療施設でマスク着用が義務づけられるなか、医療サービスも4カ月連続で上昇した。エネルギー関連と食品・飲料以外で主要な項目の前月比は、以下の通り。
(上昇項目)
・自動車保険 1.5%上昇し24カ月連続で上昇、前月は1.0%上昇
・航空運賃 1.0%上昇し3カ月ぶりにプラス、前月は0.4%低下
・医療サービス 0.7%上昇し4カ月連続でプラス、前月は0.6%
・中古車 0.5%上昇し2ヵ月連続でプラス、前月は1.6%の上昇
・帰属家賃 0.5%上昇しプラス圏を維持、前月は0.5%上昇
・住宅 0.5%上昇しプラス圏を維持、前月は0.4%上昇
・家賃 0.4%上昇しプラス圏を維持、前月は0.5%上昇
・宿泊 0.4%上昇し3カ月ぶりにプラス、前月は0.9%の低下
・娯楽 0.4%上昇、前月は0.2%の低下
・新車 0.3%上昇し4カ月ぶりにプラス、前月は0.1%の低下
・服飾 0.1%上昇、前月は1.3%低下
(横ばい、低下項目)
・自動車メンテナンス/修繕 0.3%低下し2022年3月以来のマイナス、前月は0.3%
――経済正常化の初期に著しい上昇を遂げた項目の前年同月比を振り返ると、自動車保険以外で全て鈍化あるいはマイナス圏を維持しました。最も伸びが著しい自動車保険(前月:19.2%→20.3%)のみ、加速。一方で、新車(前月:1.3%→1.0%)、宿泊(前月:0.8%→0%)が伸びを縮小。航空運賃(前月:12.1%の低下→9.4%の低下)と中古車(前月:3.8%低下→1.3%低下)は、それぞれマイナス圏ながら下げ幅を縮小していますが、これは中古車の場合、2022年12月に8.6%落ち込んでいたほか、航空運賃も2022年9月に40%以上の伸びだった一方で12月に29%まで鈍化した統計的な影響が表れたためでしょう。
チャート:経済活動の再開で上振れが目立った項目、自動車保険以外は鈍化続くも、中古車と航空運賃は下げ幅縮小
CPIの13.4%を占める食品の前年同月比は、肉類・魚・卵(前月:0.1%→0.4%の低下)と5カ月ぶりにマイナスに転じたほか、鈍化が優勢。シリアル・パン類(前月:3.4%→2.6%)や食費(前月:1.7%→1.3%)、外食(前月の5.3%→5.2%)と前月以下の伸びが続きました。
チャート:食品関連、外食含め全て鈍化傾向
6.7%を占めるエネルギーは前年同月比で2.0%低下し10カ月連続でマイナス、ただし前月の5.4%から下げ幅を縮小しました。ガソリン(前月:8.9%低下→1.9%の低下)、公益(電力・ガス、前月;0%→0.9%の低下)とマイナス圏に。食費と家賃の鈍化と合わせ、インフレの落ち着きを示唆しています。
チャート:ガソリンがマイナス圏、食費や家賃も鈍化続く
ただし、自動車保険を始めサービス価格が堅調で、アトランタ連銀が発表する粘着CPI(帰属家賃や外食、医療サービスなど、変動の鈍い品目に絞って算出したCPI)は前年同月比4.6%(小数点第2位なら4.95%)の上昇と、2022年2月以来の低い伸びでした。しかし、住宅を除いた粘着CPIは3.1%と前月と変わらず、2021年9月以来の3%割れのお預けが続きます。
パウエルFRB議長を始めFedが注目する住宅を除くコアサービス(住宅を除く)も、11月と同じく前年同月比4.1%と、鈍化にブレーキが掛かったままです。
チャート:粘着CPI、住宅を除けば減速が鮮明
チャート:Fedが注目するコアサービス(住宅を除く)、鈍化にブレーキ
チャート:住宅関連のCPI、前年同月比で鈍化トレンドを確認するものの…
CPIのヘッドラインの前年同月比で再加速した結果、実質の平均時給は伸びを縮めました。実質平均時給は前年同月比0.8%上昇し前月の0.9%から鈍化、ただし8カ月連続でプラス圏を確保。2021年3月以来の高い伸びだった2023年6月の1.3%以下が続きます。生産労働者・非管理職は1.0%上昇し前月の1.5%以下となり、8カ月連続でプラス圏を維持。こちらも、2021年2月以来の高い伸びとなった6月の2.2%からは遠ざかったままです。
チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は縮小
さて、米12月CPIの結果を受けて利下げ織り込み度が強まりましたが、有力メディアはディスインフレだけでなくデフレを喧伝しています。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番記者、ニック・ティミラオス氏は「米12月CPIは、ほぼ予想通りの結果、6カ月の年率は前月の2.9%→3.2%へ小幅上昇も、2021年3月以降で2番目の低い伸びに並ぶ」」との見方を投稿、インフレ減速を強調。また、経済金融TV局CNBCは、「デフレーション:2023年12月に前年比で落ち込んだ品目」と題したニュースを配信しています。
確かに、航空運賃の指数は2019年以下となり、デフレの傾向を感じさせます。しかし、自動車保険はこちらの動画で説明したように、複数の構造的要因で右肩上がりを継続。
チャート:航空運賃、指数ベースではコロナ禍以前の水準に
チャート:自動車保険、EVの普及や高齢化などもあって右肩上がり
オバマ政権で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたシカゴ連銀のグールズビー総裁も、米12月CPI後にインフレ鈍化を評価し「年数回の利下げに道」との見解を表明しました。タカ派寄りのクリーブランド連銀総裁は3月利下げに否定的な見解を寄せつつ、インフレ鈍化では利下げの道を拓くと発言。何より、米12月CPI前ですが、タカ派のボウマンFRB理事もインフレ鈍化なら将来的に利下げ支持もありうると言及、ウォラーFRB理事に続き緩和政策への転換を示唆しています。
米12月PPIの鈍化も、こうしたFed高官の発言に信憑性を与えました。
チャート:米12月PPI、前年比はCPIと同じくコアが鈍化トレンドを維持
2023年12月FOMC議事要旨では、「準備預金残高が潤沢と判断される水準を幾分上回れば、保有資産の縮小規模を減速し、その後、停止できる」といった文言を確認しました、さらに、ダラス連銀総裁が保有資産の圧縮ペースの減速に発言するように、量的引き締め(QT)の段階的な縮小・停止の議論が本格化する公算も大きい。バーFRB副議長がシリコンバレー銀行破綻後に設立した銀行ターム・ファンディング・プログラムを終了させるを考えを寄せましたが、これはQTの停止が念頭にあるのかもしれません。
1月30~31日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、利下げと合わせ、Fedが緩和策への一歩を踏み出すのか。また、2月に行うであろう、半期に一度のパウエルFRB議長の金融政策に関する議会証言で、そうした示唆を与えるのか、ブラックアウト期間入りする1月20日まで、Fed高官の発言に耳を傾ける必要がありそうです。
(カバー写真:Michael Coghlan/Flickr)
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