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米2月雇用統計、男女・人種別ではバイデン大統領に逆風

by • March 10, 2024 • Latest News, NY TipsComments Off5914

Unemployment For Black Men, Hispanic Women, And Women Jumped In February, Blow To Biden Administration.

米2月雇用統計は、こちらで紹介しましたように、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を上回り堅調な伸びを維持しました。しかし、労働参加率が低水準を保ちつつも失業率が上昇、平均時給は前月比と前年比で市場予想以下となりました。家計調査の就業者数はNFPの大幅増に反し減少と3カ月連続で相反する結果となったほか、フルタイムの雇用は3カ月連続で減少。パートタイムが4カ月連続で増加しました。当然ながら不完全就業率は2022年1月以来の水準へ上昇。失業者の内訳もレイオフを除く解雇者が大幅増となり、弱い内容が目立ちます。

NFPに視点を戻し業種別の動向をみると、今回、娯楽・宿泊は5.8万人増とサービス業では教育・健康に次ぐ強い伸びとなりました。そこに含まれる食品サービスが4.2万人減と2022年12月以来のマイナスとなった前月から増加に反転、2023年1月以来の高い伸びに。1月が悪天候を理由に就業できなかった人々が急増し2月に改善した事情を踏まえれば、ここが影響し食品サービス並びに娯楽・宿泊の急増となった可能性を示唆します。なお、娯楽・宿泊は2020年2月の水準を回復していない3業種のうちの1つです。

チャート:娯楽・宿泊のうち、食品サービスの雇用は2月に2023年1月以来の強い伸び

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(出所:Street Insights)

筆者がもうひとつ、注目する業種が専門サービスに含まれる派遣です。派遣は、労働市場の先行指標とされ、景気後退前に減少トレンドをたどる傾向があります。2月の結果を見ると、前月比1.5万人減と2022年4月以降のマイナストレンドを維持(前月は下方修正し増加から減少に反転)。足元でITから配送、航空会社まで大規模なリストラを決定し効率性を引き上げ株価を押し上げているように、企業が雇用に慎重な様子が伺えます。

チャート:派遣、2022年4月以降のマイナストレンドを維持

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(出所:Street Insights)

そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通り。

〇平均時給

均時給は前月比0.1%上昇の34.57ド ル(約5,080円)と、市場予想の0.2%を下回った。前月の0.5%(0.6%から下方修正)を下回りつつ、2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は4.3%と市場予想の4.4%を下回り、前月分も4.5%から4.4%へ下方修正された。2023年1Ⅰ~12月と同じく、2021年7月以来の低い伸びと一致した。生産労働者・非管理職の前年同月比もは4.5%と、前月の4.7%(4.8%から下方修正)を下回り、2023年12月と同じく2021年6月以来の低い伸びだった。

業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.1%以上だったのは13業種中で9業種で、前月の速報値ベースの10業種を下回り、賃上げ圧力の緩和を示唆した。今回の1位は金融、娯楽・宿泊となり、そのほか卸売、鉱業・伐採、専門サービス、教育・健康などが続いた。一方で、公益(1.2%低下)を始め、小売、情報、建設の4業種はマイナスだった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(出所:Street Insights)

チャート:前年比ではインフレ目標値2%超えが目立ち、財部門はそろって強い伸びとなった半面、ービス業はNFPで増加を主導したヘルスケアを含む教育・健康を中心に平均時給の前年比4.3%以下がやや優勢となった。

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(出所:Street Insights)

〇労働参加率

労働参加率は62.5%と3カ月連続で2022年12月以来の低水準だった。働き盛りの男性(25~54歳)をみると,全米の結果に反し25~54歳、25~34歳、白人と非白人全てで上昇していた。ただし、全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となるため単純比較できず、人種別の数字で白人男性の労働参加率は低下していた(後述)。

・25~54歳 89.3%、前月は89.2%、2023年9月は89.6%と2019年3月の水準と一致
・25~54歳(白人) 89.9%、前月は89.8%と2023年2月以来の低水準、2023年10月は90.5%と2020年2月(90.6%)以来の高水準
・25~34歳 89.4%、前月は89.2%、2023年7月は90.0%と2012年10月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.7%、前月は90.1%と2023年5月以来の低水準、2023年12月は90.8%と2023年9月と同じく2019年11月以来の高水準

チャート:働き盛りの男性、全米の25-54歳以外は低下

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(出所:Street Insights)

働き盛りの女性はもそろって前月を上回った

・25~54歳 77.7%、前月は77.4%、2023年4月は77.8%と統計開始以来で最高
・25~34歳 78.4%、前月は78.1%、2022年8月は78.8%と1997年のデータ公表以来で最高

65歳以上の高齢者の労働参加率は男性と女性がそろって上昇し、特に女性は2020年2月以来の高水準だった。

・男性 23.0%、前月は22.8%と8カ月ぶりの低水準、なお、2022年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 16.3%と2020年2月以来の高水準、前月は16.0%

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率、そろって上昇

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(出所:Street Insights)

労働参加率を16~19歳、20~24歳、55歳以上で分けてみると、まちまち。16-19歳のみ上昇、20~24歳は低下、55歳以上は横ばいだった。

・16~19歳 46.6%、前月は36.5%と6カ月ぶりの低水準、2023年10月は37.9%と2009年6月(38.5%)以来の高水準
・20~24歳 71.7%、前月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.5%、前月と変わらず

チャート:16~19歳は上昇、20~24歳は2020年2月以来の水準へ急伸した後に低下、55歳以上は横場い

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(出所:Street Insights)

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が低水準を維持するなか、前月比2.1%減の567.2万人と3カ月ぶりに減少前月は2022年4月以来の高水準だった。男性が同7.3%減の262.1万人と3カ月ぶりに減少女性は同2.9%増の305万人と増加に転じた。

チャート:職を望む非労働力人口、男性が急増も女性は減少

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(出所:Street Insights)

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は女性が改善した一方で男性は低下するなど、大きく明暗が分かれた。男性は前月の67.9%→67.7%と2022年7月の低水準に並んだ。女性は前月の57.5%→57.6%へ上昇し、2020年2月(57.9%)水準に迫った2023年8月の水準に一致した。

チャート:男女別の労働参加率、男性が2022年7月以来の低水準だった一方で女性は2020年2月以来の水準回復に近づく

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(出所:Street Insights)

男女の失業率もまちまち。労働参加率が低下したため男性は前月の3.9%→3.8%と2023年7月以来の低水準を保った。女性は逆に労働参加率の上昇が逆風となり、前月の3.4%→3.9%と2022年2月以来の高水準に並んだ。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男性の失業率は横ばい、女性は低下

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(出所:Street Insights)

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、全ての人種で増加した。ただし、2020年2月以降で最高をつけた水準には届かず。白人は下げ幅を縮小するにとどまった。

チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較、黒人の男女とヒスパニック系の女性が上げ幅縮小

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(出所:Street Insights)

人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

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(出所:Street Insights)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、黒人とヒスパニック系で上昇した。一方で、白人とアジア系は横ばいだった。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。

・白人 62.1%と3カ月連続で2023年2月以来の低水準、前月は62.1%、2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 63.7%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は63.3%、2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.1%と5カ月ぶりの水準を回復、前月は66.8%、2023年7月は67.3%と2020年2月(67.8%)以来の高水準
・アジア系 64.5%、前月と変わらず、2023年9月は65.7%と2012年12月の高水準に並ぶ、2020年2月は64.5%
・全米 62.5%と3カ月連続で変わらず、2023年11月は2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

チャート:人種別の労働参加率、黒人は低下、白人は前月と変わらず、ヒスパニック系とアジア系が上昇

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(出所:Street Insights)

人種・男性別の労働参加率は、白人で低下も黒人とヒスパニック系が上昇した。

・白人 69.6%と2021年2月以来の低水準、前月は69.8%、前月は70.0%、前月の70.3%から低下、2020年3月は71.0%
・黒人 69.8%と2023年3月以来の高水準、前月は69.2%、なお2023年3月は70.2%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.6%と7カ月ぶりの高水準、前月は79.5%、2023年7月は79.9%と2022年6月以来の高水準(80.1%)、2020年2月は80.3%

チャート:人種・男性別、黒人とヒスパニック系で上昇

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(出所:Street Insights)

人種・女性別の労働参加率はそろって改善した。

・白人 57.9%、前月は57.6%、2023年8月は57.9%と2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 63.4%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は62.9%、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 61.7%、前月は60.7%と2022年12月以来の低水準、2023年9月は61.9%と2020年2月以来の高水準(62.2%)

チャート:人種・女性別は、全て上昇

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(出所:Street Insights)

人種別の失業率は、黒人とアジア系で上昇が目立った。一方で、労働参加率が3カ月連続で横ばいだった白人の失業率は前月と変わらず。ヒスパニック系は労働参加率が上昇したものの、失業率は3カ月連続で横ばいだった。

・白人 3.4%と2カ月連続で変わらず。前月は3.4%、2023年12月は2023年10月と同じく2021年11月以来の高水準、2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 5.6%と4カ月ぶりの水準へ上昇、前月は5.2%、2023年4月は4.7%と過去最低
・アジア系 3.4%と4カ月ぶりの水準へ上昇、前月は2.9%、2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・ヒスパニック系 5.0%と3カ月連続で2023年2月以来の高水準を維持、前月は5.0%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・全米 3.9と2022年1月以来の水準へ上昇、前月は3.7%、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率、黒人が2カ月連続で上昇

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(出所:Street Insights)

人種・男女別ではまちまちで、黒人男性とヒスパニック系女性、白人女性で上昇した。労働参加率が上昇した黒人男性は失業率も上昇し、2021年11月以来の高水準だった。黒人女性は労働参加率が改善も失業率は低下した。ヒスパニック系も黒人の男女と同じく明暗が分かれ、それぞれ労働参加率が上昇するなかで男性は失業率が低下、女性は上昇し2022年1月以来の高水準だった。労働参加率が横ばいだった白人男性は失業率が低下したが、白人女性は労働参加率につれ失業率は上昇した。

・白人男性 3.1%と7カ月ぶりの低水準、前月は3.3%、2022年12月は2.8%と2020年2月以来の低水準
・白人女性 3.2%と2021年11月以来の高水準、前月は2.9%、2023年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 6.1%と2022年8月以来の高水準、前月は5.3%、2023年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ、2023年11月は6.3%と2022年2月以来の高水準
・黒人女性 4.4%、前月は4.8%、2023年4月は3.8%と過去最低
・ヒスパニック系男性 4.8%、前月は6.1%と2023年2月と並び2021年6月以来の高水準、2022年9月は3.0%
・ヒスパニック系女性 5.3%と2022年1月以来の高水準、前月は4.7%、前月は4.3%

チャート:人種・男女別の失業率、黒人とヒスパニック系の男女がそろって上昇

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(出所:Street Insights)

白人と黒人の失業率格差は2カ月連続で拡大。白人の失業率が2カ月連続で横ばいだった一方で、黒人が2カ月連続で上昇ししたため、失業率格差は前月の1.9ptから2.2%ptへへ拡大した。

チャート:白人と黒人の失業率格差、2カ月連続で拡大

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(出所:Street Insights)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は中卒のみ低下し大卒以上は低下、高卒は横ばいだった。

・中卒 48.3%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は47.1%、2023年11月は48.3%と2023年2月と並び過去最高
・高卒 57.0%と前月と変わらず、2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・大卒以上 72.1%と2021年10月(71.9%)以来の低水準、2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.5%と2カ月連続で2023年2月の低水準に並ぶ、2023年11月は62.8%と2022年2月(63.3%)以来の高水準

学歴別の失業率は中卒と大卒で上昇、大卒は労働参加率が低下したにもかかわらず弱含んだ。IT企業を始めとするリストラが影響した可能性がある。高卒の失業率は低下した。

・中卒以下 6.1%、前月は6.0%と前月と変わらず、2023年11月は6.3%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、2022年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.2%、前月は4.3%と2022年8月(4.4%)以来の高水準、2023年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・大卒 2.2%と5カ月ぶりの水準へ上昇、前月まで2.1%で4カ月連続で横ばい、2022年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ
・全米 3.7%と3カ月連続で横ばい、2023年4月は3.4%と同年1月に続き1969年5月以来で最低

チャート:失業率、中卒と大卒以上が上昇

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(出所:Street Insights)

チャート:米景気減速が一因なのか、大卒院卒の改善につれ失業率は上昇

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(出所:Street Insights)

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①NFPの増加に寄与した娯楽・宿泊、そのうちほとんどが食品サービスによるもの。悪天候で就業できなかった者がカムバックした影響ならば雇用増というより前月の反動を示唆か。

②働き盛りとされる25~54歳の労働参加率は改善したが、男性の場合は人種別で白人男性の労働参加率は低下、非白人男性で上昇女性は働き盛りの世代から65歳以上まで改善、人種別でも全て上昇

失業率は労働参加率が改善した女性で急伸、前月の3.4%→3.9%と2022年2月以来の高水準に悪化

④人種別では、労働参加率が上向いた黒人男性、ヒスパニック系女性、白人女性の間で失業率が弱含んだ

・労働参加率が上昇+失業率が低下→黒人女性、ヒスパニック系男性
・労働参加率と失業率が上昇→黒人男性、ヒスパニック系女性、白人女性
・労働参加率と失業率が低下→白人男性

⑤白人と黒人の失業率格差、2023年12月に1.7ptと過去最少を記録も、以降は2カ月連続で拡大

⑥学歴別では、IT企業を始めリストラが相次ぎ発表されるなか、大卒以上は労働参加率が低下したにもかかわらず失業率が上昇

ーー以上の結果を踏まえると、2020年に米大統領選でバイデン氏勝利に導いた民主党支持基盤で労働市場が弱含んでいる実態が浮かび上がります。背景には移民の急増が一因と考えられ、コロナ禍後の経済正常化の過程で、筆者が2023年12月にX(旧ツイッター)や2月にこちらの動画で指摘したように、足元の労働力人口の改善は移民が主導していました。

実際、2020年2月を起点とした労働力人口の変化を見ると、2月までに海外生まれは380万人増である一方、米国生まれは75万人減と対照的です。結果、2023年までに米国の労働市場で海外生まれが占める割合は18.6%と過去最大を更新しました。特にバイデン政権下で、海外生まれが占める割合の上昇が際立ちます。

チャート:米労働力人口の変化、海外生まれ

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(出所:Street Insights)

チャート:米労働力人口に占める海外生まれの割合、2023年に過去最大

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(出所:Street Insights)

労働力人口が増えているように、当然ながら移民の人口自体も右肩上がりです。米国勢調査によれば、2022年年度までに不法移民を含め移民人口は4,618万人に急増バイデン政権の2年間で269万人増となり、トランプ政権下での3年間(2020年はコロナ禍のため除く)の119万人増の2.2倍増にのぼります。不法移民を含めた移民急増を受け、移民政策研究センターの調査では、2023年末までに4,950万人に増加したとの試算も。これが正しければ、黒人の2022年時点の人口は4,790万人と試算されているだけに移民人口が黒人人口を上回ったとしてもおかしくありません。黒人にとって職探しが困難になった可能性を示唆します。

チャート:移民の人口は2022年に4618万人、米人口の13.9%に相当

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(出所:Street Insights)

チャート;移民の人口、バイデン政権下の2年間での増加幅はトランプ政権の3年間の2.2倍増に
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(出所:Street Insights)

海外生まれが労働力人口の増加をけん引するのは合法の移民の場合は職を得て米国に移住する事情に加え、不法移民の場合は生活する上で職が櫃ようという事情が挙げられます。また、米国生まれの場合はベビーブーマーの引退も影響しているのでしょう。とはいえ、足元のコロナ禍後の米経済の回復が米国生まれに恩恵があったかというと、労働市場の観点でいえば疑問を持たざるを得ません。

また、非白人や女性は移民問題に影響されやすい側面があります。調査会社ギャラップが実施した世論調査では、2月に最重要課題が「移民」との回答が急伸しました。背景には主に2つの事件があり、1つはNY市で発生した集団の不法移民によるNY市警官への暴行、2つ目にジョージア州で発生した22歳の白人の看護学生への不法移民による暴行・強姦・殺害事件です。NY市内では、2月初めまでに移民のグループが62名の女性からスマートフォンを強奪する事件も発生していました。不法移民の増加を受け、非白人などが多く居住する地域で治安悪化の影響が及びかねないほか、女性の被害者が増えている実態も、こうした世論調査結果に影響したと考えられます。

チャート:2月、不法移民の事件多発を受け移民が「最重要課題」に浮上

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(出所:Street Insights)

チャート:不法移民が「深刻な問題」との回答は、過去最多

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(出所:Street Insights)

米景気減速局面では、非白人や女性の雇用が失われる局面で移民と職をめぐる競争にさらされる場合も考えられます。米景気後退入り局面で非白人に悪影響が大きいことは一目瞭然で、人種別でみると米景気後退入りの3カ月前と米景気後退から1年後の失業率を比較すると、1990年以降のリセッション時期で黒人の上昇幅が3.1ptと最も大きく、ヒスパニック系も2.5ptと、白人の1.9pt、並びに全米の2.1ptを大きく上回っていました

チャート:米景気後退局面での人種別の失業率の上昇幅、非白人で悪化が顕著に

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(出所:Street Insights)

こうした状況を踏まえ、CBS/YouGovが2月28日~3月1日に実施した世論調査結果では、2020年の出口調査結果と比較し、若い世代を除き黒人、ヒスパニック系、女性の間で支持率が低下しています。若い世代でバイデン氏の支持率が改善したのは、共和党が中絶に反対の立場であることが一因でしょう。

チャート:世論調査結果、民主党支持基盤でバイデン氏の支持率低下が目立つ

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(出所:Street Insights)

米景気減速の進展次第では非白人や女性の間で失業率が格段に悪化するならば、バイデン氏再選への逆風が吹きつけかねません。バイデン氏が38日、ペンシルベニア州で遊説中に「確約できないが、利下げする方向に賭ける」と発言したのは、労働市場の減速が再選の命取りとなると判断したためでしょう。実際に、失業率は1960年以降、米大統領選イヤーの1月時点から米大統領選直前の10月までに0.5pt以上の上昇を確認すれば、現職及び与党の大統領が必ず敗北してきました。バイデン氏としては失業率のこれ以上の上振れを回避したいはずです。

(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)

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