Fed’s Favored Inflation Gauge Slows, September Rate-Cut Expectation Back On.
米4月個人消費支出は前月比0.2%増と、市場予想の0.3%増を下回った。前月の0.7%増(0.8%増から下方修正)を下回り、3カ月ぶりの低い伸びとなる。なお、1~3月分は修正され、1月分は0.1%増で変わらなかったものの、2月と3月は米Q1実質GDP成長率・改定値の個人消費が下方修正されたように、そろって0.8%増→0.7%増へ引き下げられた。
〇個人消費支出
個人消費の結果は以下の通り。名目ベースは増加した半面、インフレを除く実質ベースは減少した。
・前月比0.2%増と13カ月連続で増加、市場予想の0.3%増を下回る、前月は0.7%増
・前年比では5.3%増と2020年12月以降の増加トレンドを維持、前月は5.6%増
・実質ベース前月比0.1%減と3ヵ月ぶりに減少、前月は0.4%増
・前年比では2.6%増と2021年3月以降の増加トレンドを維持、前月は2.8%増
チャート:個人消費、前月比ベースでの名目と実質の違い、実質ベースのマイナスは3ヵ月ぶりで、Q2のGDPの伸び鈍化につながるか
チャート:個人消費、2-3月分が下方修正
耐久財は、家具が前月比1.0%増と増加に反転したほか、自動車・部品は同0.8%増と前月の1.5%減から増加した半面、家具が同0.7%減と減少に転じたほか、ビデオ・オーディオ関連が同1.1%減とこちらも減少に転じた。宝石類も同0.5%減と減少した。非耐久財は食品・飲料が0.1%増と2カ月連続で増加した一方で、ガソリンが同0.1%減と3カ月ぶりに減少しただけでなく大幅に加速した。非処方箋薬が同1.1%減と弱い。サービスは住宅関連やヘルスケア、輸送サービス、娯楽、外食など幅広く増加した。ただ、引き続きサービスの伸びと寄与度は鈍化しており、食料品やガソリンの値上がりが影響し、裁量的支出の一部が縮小した可能性を示唆する。
個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.2%減と3ヵ月ぶりに減少、前月は1.1%増
・耐久財 0.3%減と3カ月ぶりに減少、前月は0.3%増
・非耐久財 0.1%減と3カ月ぶりに減少、前月は1.5%増
・サービス 0.4%増と2022年2月以降の増加トレンドを維持、前月は0.6%増
チャート:個人消費、前月比の項目別内訳
〇個人所得
米4月個人所得は前月比0.3%増と、市場予想並びに前月と一致した。ただし、2023年10月~24年3月まで修正が入った。
個人所得の結果は以下の通り。
・前月比0.3%増と2022年2月以降の増加トレンドを維持、市場予想と一致、前月は0.5%増
・前年比では4.5%増と2022年4月以降の増加トレンドを維持、前月は4.4%増
・実質ベースは前月比横ばい、前月の0.2%増から反転
・前年比では1.8%増と2023年1月以降の増加トレンドを維持、前月は1.6%増
個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は3ヵ月連続で増加したが、伸びは過去3ヵ月間で最も低かった。また、家賃収入も2023年6月以降で最も低い伸びに並んだ。資産収入は増加に反転、金利収入が増加に転じていた。一方で、経営者収入の増加は3ヵ月でブレーキが掛かった。
所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。
・賃金/給与 0.2%増と3ヵ月連続で増加したなかで最も低い伸び(民間は0.2%増、政府部門は0.5%増)、前月は0.6%増
・経営者収入 横ばい(農業は8.4%減、非農業は0.2%増)、前月は0.2%増と3ヵ月連続で増加
・家賃収入 0.1%増と2023年6月以降で最も低い伸びに並ぶ、前月は1.5%増
・資産収入 0.5%増(金利収入が0.5%増と増加に反転、配当は0.5%増と横ばいから反転)、前月は横ばい
・社会補助 0.3%増と5カ月連続で増加、前月は0.8%増
・社会福祉 0.3%増と5カ月連続で増加(メディケア=高所得者向け医療保険は0.6%増、メディケイド=低所得者層向け医療保険は1.1%増、失業保険は1.3%減、退役軍人向けは0.2%増と増加基調を維持、その他は0.5%減)
チャート:個人所得、前月比の項目別内訳
〇可処分所得
・前月比0.2%増と2022年月以降の増加トレンドを維持、前月は0.5%増
・前年比は3.7%増と2022年5月以降の増加トレンドを維持、前月は4.0%増
・実質ベースの可処分所得は0.1%減、前月は0.1%増
・前年比は1.0%増と2023年1月以降の増加トレンドを維持、前月は1.3%増
チャート:可処分所得は前月比で年初来2回目のマイナス
〇貯蓄率
・3.6%、前月の3.6%と変わらず(なお、過去分は個人消費と個人所得に合わせて修正された)。2019年平均の7.4%以下が続く。1959年のデータ取得以降で3番目の低い伸びとなった2022年6月につけた2.7%は上回る。過去最低は2005年7月の2.1%。
チャート:個人消費の伸びが鈍化し、貯蓄率を小幅押し上げ
〇個人消費支出(PCE)価格指数
PCE価格指数はコアは前年比は市場予想と前月と一致した。ただし、前月比はコアが4カ月ぶりの低い伸びとなり、市場予想も下回った。
・PCE価格指数は前月比0.3%上昇、市場予想と前月と一致
・前年比は2.7%上昇、市場予想と前月と一致
・コアPCEデフレーターは前月比0.2%上昇し4カ月ぶりの低い伸び、市場予想と前月は0.3%
・コアPCEの前年比は2.8%上昇、市場予想と前月と一致
チャート:2023年12月はコアPCEが2021年3月以来の3%割れ
スーパ―コア(住宅を除くコアPCEサービス)は前月比0.3%上昇し、前月の0.4%を下回った。前年同月比は3.5%上昇し、前月の3.4%(3.5%から下方修正)を上回ったものの、1月の3.6%以下を保った。
チャート:スーパ―コアの前年同月比は高止まり
(作成:Street Insights)
チャート:PCEコアとスーパーコア、前月比で伸び鈍化
結果を受け。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者はX(旧ツイッター)で「PCE価格指数を受け、Fedの様子見姿勢は変わらない」とコメント。FF先物市場でも、11月あるいは12月に1回の利下げ見通しが優勢を維持した。
もっとも、個人消費と個人所得の伸び鈍化、さらに貯蓄率の低迷は米GDPの約7割を担う個人消費全体の懸念材料となるだけに、9月利下げ見通しが再燃しつつある。
画像:FF先物市場、再び9月の利下げ織り込み度強まる
クレジットカードの延滞率上昇や余剰貯蓄の取り崩しもあり、データ次第で年内2回利下げ観測の復活もあり得そうだ。
(カバー写真:Luis Gonçalves/Flickr)
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