Retail Sales Unexpectedly Rose, But It Could Not Be As Rosy.
米8月小売売上高は前月比.0.1%増と、市場予想の0.2%減を上回った。前月の1.1%増(1.0%増から上方修正)を含め、年初来で5回目の増加に。ただし、自働車を除く場合は同0.1%増と市場予想の同0.2%増と前月の同0.4%増を下回った。自動車とガソリンを除いた場合も同0.2%増と、前月の0.4%以下。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)も同0.3%増と前月と一致し、年初来でプラスは5回目となる。米GDPの約7割を占める個人消費の底堅さを示した。
チャート:米8月小売売上高、年初来で5回目の増加
内訳をみると、主要13カテゴリー中で5項目で増加し、前月の速報値ベースの10項目の半分にとどまった。今回は雑貨と無店舗が支えたほか、ヘルスケア、スポーツ用品/趣味/書籍、建築/園芸が増加した。一方で、7月にサイバー攻撃後の減少の反動で増加した自動車のほか、家具や服飾、一般小売、電気製品など裁量消費支出のカテゴリーで減少が目立った。また、特筆すべきはその減少幅で、電気製品を始めガソリンスタンド、一般小売のうち百貨店は1%超となったほか、0.7%減となった項目も家具と服飾に加え生活必需品の食品・飲料が入り、中低所得世帯の家計のひっ迫を物語る。
(プラス品目)
・雑貨→1.7%増、年初来で5回目の増加、前月は0.8%減
・無店舗(主にオンライン)→1.4%増、年初来で4回目の増加、前月は0.4%減
・ヘルスケア→0.7%増、年初来で5回目の増加、前月は0.1%増
・スポーツ用品/書籍/趣味→0.3%増、年初来で3回目の増加、前月は0.9%減
・建築材/園芸→0.1%増、年初来で5回目の増加、前月は0.8%増
(横ばい品目)
・外食→0%、年初来で5回目増加、前月は0.2%増
(マイナス品目)
・自動車/部品→0.1%減、年初来で5回目の減少、前月は4.4%増
・一般小売→0.3%減、年初来で2回目の減少、前月は0.8%増
(百貨店は1.1%減、年初来で4回目の減少、前月は0.3%減)
・食品/飲料→0.7%減、年初来で3回目の減少、前月は1.0%増
・服飾→0.7%減、年初来で3回目の減少、前月は0.1%増
・家具→0.7%減、年初来で3回目の増加、前月は1.7%増
・電気製品→1.1%減、年初来で3回目の減少、前月は1.1%増
・ガソリンスタンド→1.2%減、年初来で4回目の減少、前月は0.5%増
チャート:米7月小売売上高、13品目中、10品目で増加
項目別では無店舗が雑貨とともに増加を支えた一方、季節調整後に上振れした点は気掛かり。7月にアマゾン・プライムデーを挟むため、その反動で減少しやすい8月は季節調整前と季節調整後を比較すると、後者が増加する傾向がある。しかし今回、季節調整後は1,236億ドル、季節調整前の1,196億ドル、その差は約40億ドルと、8月単月で過去2番目の大きさとなった。パンデミック禍でも景気後退期でもないだけに、この上振れには疑問が残る。
チャート:季節調整後と季節調整前の差、データ公表以来で2番目の大きさとなった不思議
小売売上高の前年同月比は2.1%増と、前月の2.9%増を下回った。なお、年初来の平均の伸びは年初来で2.3%増、2023年の3.6%増を下回った。
チャート:米8月小売売上高、前年比は7月に比べ伸び鈍化
――米8月小売売上高は、アマゾン・プライムデー後の反動を見込んだ季節調整後の数字が無店舗を支えたこともあり、減少を回避しました。しかし、実質ベースの小売売上高は前月比0.1%減となり、名目の同0.1%増を下回り年初来で4回目のマイナスに。個人消費の減速を示唆するのか注目されます。
チャート:米小売売上高、実質ベースは前月比0.8%増
米8月小売売上高が市場予想に反し増加したとはいえ、前月の1.1%増を大きく下回ったこともあり、FF先物市場では9月FOMCでの0.5%利下げ期待が引き続き優勢です。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者の記事とXでの投稿に基づけば、後悔を最小化させる手段は0.5%の利下げだそうですが、米大統領選直前の0.5%利下げは政治に配慮した緋文字となるリスクを残します。
(カバー写真:JoLynne Martinez/Flickr)
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