White Men And Black Women See Jobless Rate Surge, While Unemployment For Grad School Graduates Down.
米4月雇用統計は、こちらで紹介しましたようにヘッドラインより堅調な労働市場を示す結果となりました。
ここでは、業種別や賃金動向の他、性別や人種、学歴などではどうなったのかを取り上げます。詳細は、以下の通り。
〇平均時給
平均時給は前月比0.2%上昇の36.06ド ル(約5,190円)と市場予想と前月の0.3%を下回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は3.8%と前月と一致し、市場予想の3.9%以下に終わった。生産部門・非管理職の前年同月比は4.1%、2021年5月以来の4%割れを迎えた前月から再加速した。
業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.2%以上だったのは13業種中で5業種で、前月の速報値ベースの4業種を上回った。就業者が減少した小売が同1.1%上昇し、前月に続き全体を押し上げた。また、卸売、輸送・倉庫、建設、教育・健康が支えた。一方で、マイナスとなった業種は速報値ベースで前月まで3カ月連続にて2業種(3月の速報値は卸売・公益)のところ、今回は5業種(金融、情報、公益、鉱業・伐採、製造業)に増加した。賃上げ圧力の後退を示す。
チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額
チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立つ半面、全米の3.8%以下が優勢
〇労働参加率
全米の労働参加率は前月の62.5%→62.6%へ上昇。しかし、働き盛りの男性(25~54歳)をみると、非白人と白人そろって全体的に上昇した。白人は季節調整前の数字となる。
・25~54歳 89.5%と7カ月ぶりの水準回復、前月は89.4%、24年7月は90.0%と2009年8月の90%乗せ
・25~54歳(白人) 90.2%と5カ月ぶりの水準回復、前月は89.9%、24年7月は90.7%と2019年3月以来の高水準
・25~34歳 90.0%と9カ月ぶりの90%乗せ、前月は89.4%、24年7月は90.3%と2009年8月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.7%と6カ月ぶりの水準回復、前月は90.6%、24年7月は91.3%と2019年3月以来の水準に並ぶ
チャート:働き盛りの男性の労働参加率
働き盛りの女性はまちまち、25-54歳は上昇も、25-34歳は横ばいだった。
・25~54歳 77.6%、前月は77.6%と24年1月以来の低水準、24年8月は78.4%と1997年のデータ公表以来の最高記録更新、前月は78.1%
・25~34歳 77.5%、前月と変わらず、2月は過去最高に並ぶ
65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女ともに上昇した。ただし、これらは季節調整前の数字となる。
・男性 22.9%、前月は22.8%、1月は2011年2月以来の低水準、24年10月は24.5%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.9%、前月は15.7%と23年6月以来の低水準、24年9月は16.8%と2020年2月以来の高水準
チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率
労働参加率の若い世代で分けてみると、まちまちで55歳以上のみ上昇した。
・16~19歳 36.9%と3カ月ぶりの低水準、前月は36.3%、24年3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 72.1%、前月と変わらず、24年1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.4%、前月は38.2%、2020年2月は39.7%
チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率
〇縁辺労働者
縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が62.6%へ上昇するなか、前月比4.1%減の567.4万人。男性が労働参加率の低下と整合的で同2.0%減の262.9万人、女性も同5.8%減の304.5万人とそろって減少した。それでも、縁辺労働者は9カ月連続で女性が男性を上回った。
チャート:職を望む非労働力人口
〇男女別の労働参加率と失業率
男女別の労働参加率はまちまち。男性は前月の67.8%→68.0%と3カ月ぶりの水準を回復、女性は前月の57.5%と前月と一致した。
チャート:男女別の労働参加率
男女の失業率も、労働参加率に合わせまちまち。男性は労働参加率につれ、失業率は前月の4.2%→4.4%と21年10月以来の高水準だった。なお、24年7月は4.4%と2021年10月以来の高水準だった。女性は労働参加率が前月と変わらず、失業率は前月の4.1%→4.0%へ低下した。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。
チャート:男女別の失業率
〇人種・男女別の就業者、20年2月比
人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、ヒスパニック系男女がコロナ禍以降で最も強い伸びとなった。黒人男性も、23年3月以来の強い伸びに。一方で、黒人女性は20年2月比でマイナス転換が迫り、白人男女はそろってマイナス幅を維持するなど二極化は変わらず。なお、全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。
チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較
人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。
チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い
〇人種別の労働参加率、失業率
人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、民族であって人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。
人種別の労働参加率は、黒人以外で上昇。白人とヒスパニック系、特にアジア系の上昇が目立つ。一方で、黒人は22年10月以来の低水準だった。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。
・白人 62.3%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は62.1%、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 62.1%と22年10月以来の低水準、前月は62.2%、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.3%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は67.2%、24年8月は67.8%と2020年2月の水準に並ぶ
・アジア系 66.0%と2009年8月以来の高水準、前月は65.8%、2020年2月は64.5%
・全米 62.6%、前月は62.5%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ
チャート:人種別の労働参加率
人種・男性別の労働参加率は、白人と黒人が低下、ヒスパニック系のみ上昇した。
・白人 69.7%、前月は69.8%、2020年2月は71.7%
・黒人 68.8%と3カ月連続で横ばい、なお23年3月は70.3%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.4%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は79.1%、24年6月は80.5%と2020年2月(80.9%)以来の高水準
チャート:人種別、男性の労働参加率
人種・女性別の労働参加率は白人が横ばい、黒人が低下、ヒスパニック系のみ上昇した。
・白人 57.5%と前月と変わらずで23年12月以来の低水準、24年8月は58.0%と2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 62.0%と22年11月以来の低水準、前月は62.1%、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 62.5%と8カ月ぶりの水準を回復、前月は62.1%、24年8月は62.6%と1976年6月からのデータ公表以来で最高
チャート:人種別、女性の労働参加率
人種別の失業率は、アジア系を除き全て上昇した。労働参加率は黒人を除き全て改善していた。
・白人 3.8%と21年10月以来の高水準に並ぶ、前月は3.7%、24年11月は3.8%と2021年10月以来の高水準、なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 6.3%と5カ月ぶりの水準へ上昇、前月は6.2%、24年11月は6.4%と2022年8月以来の高水準、23年4月は4.8%と過去最低
・ヒスパニック系 5.2%と5カ月の高水準に並ぶ、前月は5.1%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.0%と24年4月以来の低水準、前月は3.5%、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.2%と前月と変わらず、24年7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:人種別の失業率
人種・男女別の失業率は、まちまち。白人男性が21年9月以来の高水準、黒人女性が22年1月以来の高水準だった一方で、ヒスパニック系女性は11カ月ぶりの低水準となった。
・白人男性 3.7%と21年9月以来の高水準、前月は3.4%、なお2022年12月は2.8%と20年2月以来の低水準
・白人女性 3.3%と前月と変わらず、なお23年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 5.6%と3カ月ぶりの水準を回復、前月は6.1%、なお23年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 6.1%と22年1月以来の高水準、前月は5.1%、なお23年2月は3.4%と20年2月以来の低水準
・ヒスパニック系男性 4.9%と前月と変わらず、前月は5.3%、なお22年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 4.2%と11カ月ぶりの低水準、前月は4.7%、なお23年5月は3.5%と過去最低
チャート:人種・男女別の失業率
白人と黒人の失業率格差は変わらず。白人と黒人の失業率がそれぞれ上昇したため、失業率格差は前月の2.5ポイントと一致した。2019年平均の2.8ポイント以下を保つ。
チャート:白人と黒人の失業率格差
〇学歴別の労働参加率、失業率
学歴別の労働参加率は中卒以外で上昇した。
・中卒 46.5%と11カ月ぶりの低水準、前月は48.1%、24年7月は48.9%と1992年にデータが公表されて以来で最高、前月は48.1%
・高卒 56.7%、前月は56.4%、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・短大卒 62.7%、前月は62.5%と4カ月ぶりの低水準、24年8月は63.5%と2023年3月以来の高水準、2020年2月は64.8%
・大卒以上 72.6%と7カ月ぶりの水準を回復、前月は72.0%と21年10月以来の低水準、24年8月は73%と2023年9月以来の高水準を維持、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.6%、前月は62.5%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ
学歴別の失業率は、特に大卒以上で低下した。
・中卒以下 6.2%と6カ月ぶりの高水準、前月は5.8%、24年8月は7.1%と2021年以来の高水準に並ぶ、なお22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.0%と6カ月ぶりの低水準、前月は4.1%、24年7月は4.6%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、なお23年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・短大卒 3.7%と22年10月以来の高水準、前月は3.5%、23年11月は2.8%と19年12月以来の低水準
・大卒 2.5%、前月は2.6%と21年10月以来の高水準、なお22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.0%5カ月ぶりの低水準、前月は2.8%と21年7月以来の高水準に並ぶ、なお21年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.2%と前月と変わらず、24年7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:学歴別の失業率
チャート:大卒以上の労働参加率が上昇でも、失業率は低下
2024年の米大統領選でトランプ氏が勝利した理由は、不法入国者を含めた移民の急増だった。米議会予算局やサンフランシスコ連銀など、多くが移民の急増をめぐる影響を分析するように、足元の米労働市場にも大きな変化をもたらしている。そこで、海外生まれ(不法移民を含む)と米国生まれの雇用動向を確認してみた。
労働力人口(以下、全て季節調整前の数字)にうち、米国生まれは66.8万人増(前月は6.1万人増)、海外生まれは70万人減(前月は47.8万人増)と、労働力人口の回復は米国生まれがけん引した。
チャート:米労働力人口(季節調整前)、米国生まれと海外生まれの比較
労働参加率は、米国生まれが前月の61.5%→61.6%と5カ月ぶりの水準を回復。一方で、海外生まれは前月の66.8%→66.5%へ低下した。なお、海外生まれは就労ビザを取得して入国した者が多いほか、家族に頼れない事情もあり、米国生まれを上回る傾向が強い。
チャート:労働参加率、米国生まれと海外生まれの違い
就業率は、米国生まれが前月の58.8%→59.2%と5カ月ぶりの水準を回復。海外生まれも63.9%→64.1%へ上昇した。
チャート:米国生まれと海外生まれの就業率
全米の失業率は4.2%と前月と変わらず。米国生まれは労働参加率が上昇したものの、失業率は前月の4.2%→3.9%と4カ月ぶりの水準へ低下した。海外生まれは労働参加の低下につれ、失業率は前月の4.4%→3.6%24年5月以来の低水準だった。
チャート:米国生まれと海外生まれ、失業率の比較
--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。
①平均時給は前月比で市場予想以下、13業種のうち5業種が前月比マイナスと3月の2業種を上回り賃上げ圧力の後退を示す。
②働き盛り世代の男性の労働参加率は、全米の25~54歳の働き盛りや55歳以上や65歳以上で改善を確認。一方で、16~19歳はむしろ低下し20~24歳も横ばいで若年層は伸び悩み労働市場での経験が豊富でない低賃金職の競争激化の兆し。
③男女別では男性が労働参加率の改善につれ、失業率は4.4%と21年10月以来の高水準。女性は労働参加率が横ばいのところ失業率は低下。
④人種・男女別では全体的にまちまちだが、やや弱含みが優勢。白人男性と黒人女性は労働参加率の低下にもかかわらず、失業率は大幅に上昇し白人男性は21年10月以来の高水準、黒人女性も22年1月以来の高水準だった。ヒスパニック系女性のみ、労働参加率の改善にもかかわらず、失業率が大幅に低下。ヒスパニック系男性は労働参加率が上昇も失業率は横ばいと、他人種と比較して賃金が低いためか、底堅さを示す。一方で、黒人男性は労働参加率が横ばいでも、失業率は大きく低下した。
画像:労働参加率と失業率、人種別の動向
⑤学歴別では、大卒以上の労働参加率が上昇するなか、大学院卒の失業率が大幅に3カ月ぶりに低下。一部で高賃金職の需要が回復か
⑥季節調整前の数字ながら、労働参加率は米国生まれで改善が顕著となり、就業率と失業率ともに改善した。海外生まれは労働参加率の低下につれ失業率も改善したが、労働市場の上昇を踏まえれば米国生まれの間で労働市場は堅調と言えよう。
――以上の結果を踏まえると、米労働市場の逆風は低賃金職を中心に吹き荒れ、若い世代や黒人女性の労働参加率の低下につながった。黒人女性の失業率の上昇は、ヒスパニック系女性との低賃金職の奪い合いを示唆する。その反面、大卒以上の労働参加率が改善しながら、大卒以上と大学院卒の失業率は改善した。4月の労働市場は、二極化したと言えよう。また、相互関税発表まもない12日のサンプル週だっただけに、トランプ関税の影響が顕在化を確認するのは、5月まで待つこととなりそうだ。
(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)
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