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【追記】ボルカー・ルール投票前日、銀行株が上昇したワケ

by • December 10, 2013 • Latest NewsComments (0)1595

Bank Stocks Were Up Before Volcker Rule’s Vote

ボルカー・ルールの最終案が10日採択されますね。

こちらで少しお話させていただきましたが、ワタクシは本件に関しては比較的楽観的です。最終案の投票を控えた9日の米株相場でも、トレーディング収入のシェアが大きいゴールドマン・サックスの0.3%高をはじめJPモルガン・チェースも0.8%高、バロンズ誌が推奨するシティグループにいたっては1.2%高とこぞって上昇して引けていました。

2010年に成立した金融規制改革法(ドッド=フランク法)に含まれる条項を指す、ボルカー・ルール。ヘッジファンドへの出資を規制するほか、以下が3本柱になっています。

1)自己勘定取引
2)マーケット・メーク
3)ヘッジ取引

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、マーケット・メークに対する新たな規制案としてリスキーな取引を奨励する賃金体系を禁止する措置を盛り込むと報道。ロイターは、仮に自己勘定取引を含め成立した場合、銀行側が米当局を相手取って訴訟に踏み切るリスクを伝えていました。何でも「法律専門家によると、規則が成立すれば銀行側は(1)手続き面の不備(2)費用便益分析の不足(3)金融規制改革法との矛盾──の3点を突いて訴訟に持ち込む可能性がある」そうなんです。

報道を読んでいますと、マーケット・インパクトに戦々恐々としてしまいますよね。3年を経て廃案に持ち込めなかった理由にJPモルガン・チェースの「ロンドンの鯨」問題が挙げられており、規制強化への道に抜け穴を塞がれた感があります。

ただし。

採決を予定するのは現地時間午前9時半の商品先物取引委員会(CFTC)を皮切りに米連邦準備理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)、証券取引委員会(SEC)の5機関。このうち規制強化の拳を振り上げているのは、ニュースを読んでいると任期満了間近のゲンスラーCFTC委員長その人くらいなんです。そういえばドッド・フランク法に関与しSECのメアリー・シャピロ委員長は2012年12月、FDICのシーラ・ベアー総裁も2011年7月に退任しました。

ゲンスラーCFTC委員長、2010年成立からの数少ない主要メンバー。
gensler

ここにFRBが含まれている点は注目に値します。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、10月声明文で「財政政策が経済成長を抑制している」との文言を残しました。年初からの給与税減税、強制歳出削減の始動に加え、米暫定予算が2014年1月15日に期限切れを迎えるなかで、文言を維持したのでしょう。暫定予算で合意できなければ再び政府機関が閉鎖するリスクが横たわり、それだけ財政面での不透明性を警戒している証左といえます。

しかもFOMCとしては、量的緩和(QE)縮小の地ならしを行うなかマーケットの混乱をもたらすリスクを極力回避するでしょう。FRBが必要以上に金融機関に縛りをかけるか、疑問が残ります。

オバマ政権としても、過度な規制を望む理由が見当たりません。確かにメインストリートの方々はJPモルガン・チェースへのツイッター攻撃で分かるように、ウォールストリートに反感をもつ方々が多い。オバマ政権は、2014年中間選挙でこの層をすくい取りたい意向でしょう。半面、金融機関を敵に回せば選挙資金集めで劣勢に立たされることもありえます。

何事もバランスが大切。本音と建前で、ボルカー・ルールは落としどころを探ってくると予想します。そもそも本気で厳格化するなら、何度も試行の時期を先送りしないのでは。2014年7月の施行予定も、2015年7月へ後ろ倒しする見通しですしね。

【追記】

やっぱり、ボルカー・ルールは各メディアが煽るほどの内容ではありませんでした。おかげさまでNY時間の午後1時20分現在でゴールドマンサックスは1.6%高、JPモルガンは0.6%高。大方の予想通り自己勘定で利益を得るためのトレーディングが禁止されたものの、顧客のために行うマーケットメーキングは引き続き認める案を承認しています。施行の時期、大方の予想通り2014年7月から2015年7月へ1年先送りされました。ブルームバーグの記事を元にざっとまとめた内容は、以下の通り。

自己勘定取引およびマーケットメークにつき
・トレーダーが自己勘定取引に対する報酬というかたちで支払いを受けないことを条件に、銀行のマーケットメーキング担当デスクへの適用除外が拡大。
・海外のソブリン債に関連する証券も適用外。
・トレーディング担当デスクは売りと買いの両方を行うか、自己勘定でロング(買い持ち)とショート(売り持ち)の両方を行う必要があり、これらの取引は「目先論理的に予想される顧客の需要」を継続的に超えてはならない
・過去のデータおよび他の市場の要素に基づいて需要を判断
・トレーダーの報酬については、禁止された取引に報いることのない形での取り決めが義務付けられる。

ヘッジ規制は強化
・取引をリスクに対する広義のヘッジとして指定する方法がこれまでより限定
・監査官への情報開示の義務が拡大される。
・規則除外については特定のリスクをヘッジするものであることを継続的に示すよう義務付け
・ルールでは特定されたリスクがヘッジによって低下すると「合理的に予想され得る」ように分析と独立した検査を銀行に求めるとともに、「一つもしくはそれ以上の具体的で識別できるリスクがはっきりと減少もしくは大幅に軽減させる」ヘッジ取引であることを示す必要を義務付け
・ヘッジ活動が禁止されている自己勘定取引でないことを確実にするため、継続的な再検査の実施を銀行に求める

外銀への適用
・外国政府が保証する証券の売買は認められ、海外の中央銀行が発行する証券も適用除外となる。米国外に活動拠点を置く米銀や米国に関連機関を置く外国企業も同等に扱われる。(→日本、英国、カナダなど当局が米財務省に自国政府の資金調達能力が悪影響を受けると反対していた意向が汲み取られた)

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