August Jobs Report : Hawks Won’t Be The Majority In Next FOMC.
米8月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比14.2万人増と、市場予想の23.0万人増より弱い結果となった。前月の21.2万人増を下回り、年初来で最も小幅にとどまる。過去2ヵ月分は2.8万人分、下方修正された。なお3ヵ月平均は20.7万人増、6ヵ月平均は22.6万人増だった。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が13.4万人増と市場予想の21.4万人増を下回った。前月の21.3万人増にも届かず、6ヵ月ぶりに20万人を割り込んでいる。特にサービスが14.0万人増と、前月の23.2万人増から大きく伸びを縮小した。
(サービスの主な内訳)
・ビジネス・サービス 4.7万人増>前月は3.6万人増、増加トレンドを維持
そのうち派遣は1.3万人増>前月は1.0万人増、増加トレンドを維持
・教育/健康 3.7万人増>前月は3.3万人増、増加トレンドを維持
・娯楽/宿泊 1.5万人増>前月は1.2万人増、増加トレンドを維持
・政府 0.8万人増>前月0.1万人減、前月の減少から増加に反転
・金融 0.7万人増<前月は1.0万人増、5ヵ月連続で増加
・貿易/輸送 0.1万人増<前月は4.8万人増、増加トレンドを維持
そのうち小売は0.8万人減<前月は2.1万人増、6ヵ月ぶりに減少
・情報 0.3万人減<前月は0.5万人増、3ヵ月ぶりに減少
財政産業は2.2万人増となり、前月の6.7万人増を上回った。8ヵ月連続で増加も、5ヵ月ぶり低水準となる。
(財政産業の内訳)
・建築 2.0万人増<3.1万人増、7ヵ月連続で増加
・製造業 ±0万人<2.8万人増、増加トレンドに終止符
時間当たり平均労働賃金は、市場予想通り0.2%上昇の24.53ドル。前月の0.1%(±0%から上方修正)を上回った。前年比も2.1%と、市場予想および0.1%ポイント上方修正された7月の水準と変わらず。週当たりの平均労働時間は6ヵ月連続で34.5時間となり、市場予想とも一致。製造業の平均労働時間は41.0時間と前月の40.9時間を上回ったが、2007年以来の高水準となる41.1時間には届かなかった。
失業率は、市場予想通り6.1%。前月の6.2%から低下し、あらためて2008年9月以来の低水準に並んだ。マーケットが注目する労働参加率は前月の62.9%を下回り、62.8%。2013年10月、12月、14年4月-6月に続き、1978年3月以来の最低を示した。
失業者数も、前月比8.0万人減と前月の19.7万人増から減少に転じている。雇用者数は1.6万人増と、4ヵ月連続で増加したなかで最も小幅にとどまった。雇用率は3ヵ月連続で59.0%と、2009年8月以来の59%乗せを保った。経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は12.0%と、前月の12.2%から低下。2008年10月以来の12%割れに迫った。平均失業期間は前月の32.4週から31.7週へ短縮、2010年3月以来でもっとも短い。失期期間の中央値は2009年4月以来の水準に並んだ前月の13.3週から、13.2週へ短縮した。
BNPパリバのローラ・ロスナー、ブリックリン・ドワイヤー両米エコノミストは、結果を受け「NFPで小売が減少した理由は、ニューイングランド地方のスーパー小売大手マーケット・バスケットで2万5000人がストライキを開始した特殊要因が挙げられる」と解説した。また、製造業が米8月ISM製造業景況指数と反比例して横ばいだった点も「自動車工場がメンテナンスを理由に7月に人員削減せず、8月は逆に再雇用が減少した」影響が及んだためと指摘。労働市場の悪化を示すものではないとの考えを示した。
バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは、NFPの20万人割れに対し「労働市場の人口動態トレンドや労働力の鈍い伸びを踏まえると、7.5—10万人の増加幅でも失業率が低下すると試算できる」と説明。従って、今回の数字は懸念するほどでもなく、逆に米連邦公開市場委員会(FOMC)内で「タカ派の台頭を抑える一因となり、第1弾の利上げが2015年6月と見込む当方のシナリオと整合的」とまとめた。
ヒルゼンラス記者も、「Fedは労働市場のたるみへの見解変更に急ぐ必要なし」との記事を配信。
(出所 : WSJ)
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-○
8月は12.0%、前月の12.2%から低下。2008年10月以来の12%割れに接近。ただし、不完全失業者数は23.4万人減の727.7万人となっている。
2)長期失業者 採点-○
6ヵ月以上の失業者数は8月に296.3万人、前月の315.5万人から6.1%減少。失業者に占める割合はも31.2%と前月の32.9%から低下し、2009年6月以来の低水準。
3)賃金 採点-△
7月は前年同月比2.1%、足元2.0-2.1%のレンジを維持。
4)労働参加率 採点-×
8月は62.8%と、1978年以来の低水準へ回帰。労働参加率の低下は、16−18歳が前月の33.9%から33.3%へ大きく下振れし、全体を押し下げている。6月の軍人を除く民間労働人口も1億5596万人と、前月比で微減した。
フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.1%増の1億1862万人となり、2ヵ月連続で増加した。パートタイムは1.1%減の2743万人。1993年以来で最大の増加幅を記録した6月と7月に増加を経て、減少に転じた。
以上の米雇用統計で、本日の金融市場動向は以下の通り。
原油先物 93.29 -1.16 -1.23%
金先物 1267.3 +0.8 +0.06%
米10年債利回りは、前日比ほぼ変わらずの2.455%付近で引けました。
肝心の米株相場はというと、下落してスタートしたもののダウ平均は、S&P500は、ナスダックはそろって売り先行後に買い戻し。S&P500は、過去最高値を更新して取引を終えました。長く緩やかな利上げシナリオを確認したほか、米金利の上昇一服が利いたのでしょう。9月17−18日開催のFOMCでも、「長きにわたる(considerable period)」低金利の文言を維持する公算とあれば売る理由もありませんしね。
(カバー写真 : Federal Reserve Bank)
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