A Shift In American Opinion Led Obama’s Historic Visit To Hiroshima.
現役の米大統領が、広島を訪問する――原爆投下から71年を経て、遂に歴史的な瞬間がめぐってきました。オバマ米大統領は伊勢志摩サミット閉幕後の27日、広島にわたります。飛行機で向かうのか新幹線を使うのか気になりますが、常識的に考えて前者なんでしょうね。新幹線ならば、2015年から2回も発生したアムトラックに代わってニューヨーク―ワシントンD.C. 間を結ぶリニア新幹線の実現に一歩近づくのかと期待しましたが・・。そう、JR東海の技術を屋台骨としたUSジャパン・マグレの子会社ノースイースト・マグレブを通じたリニア輸出を想定しています。レームダックの米大統領によるパフォーマンスとはいえ、アメリカ人に新幹線を超えるリニア導入を訴求できる手段になり得ると思量した次第です。
今回の決定は、アメリカ人における太平洋戦争への見方の変化を如実に表します。ケリー米国務長官が広島で献花した直後の4月、CNNがウェンディ・シャーマン前国務次官(北朝鮮問題などに精通)による「オバマ米大統領が広島を訪問すべき理由」と題した論説を報じたことでも明らかでした。シャーマン氏はドイツが戦争の過去を乗り越えられたのは冷戦が理由で、3度も戦火を交えたフランスと共闘する理由があったと指摘。そういった意味でドイツは特例で、日本は慰安婦問題で合意した韓国とようやく北朝鮮問題で協力を構築できるステージに立ったと説きます。安倍首相と朴大統領の「政治的な勇気」こそ、オバマ米大統領の広島訪問を実現させうるとの理論です。日本人的な心情はさておき、2015年末の慰安婦問題決着は歴史的瞬間の布石だったと解釈できるんですね。
そのシャーマン前国務次官、ピュー・リサーチ・センターの世論調査結果を基に「若い世代を中心に核兵器使用を正当化しなくなってきた」とも説明しています。注目の世論調査結果は、こちら。
1945年の数字は、原爆投下直後を表します。
2015年になると、正当化しないとの回答が3割を超えました。
(作成:ピュー・リサーチ・センターよりMy Big Apple NY)
アメリカ人の心情の変化は、このドラマにも息づいています。オッペンハイマー博士率いるマンハッタン計画をフィクションで追った「マンハッタン」ですね。こちらでご紹介したように、実に中立的な描き方が印象的でした。戦後70周年を経て、2015年5月にニューヨークで能「長崎の聖母」が公演できたはずです。
科学者の開発の苦悩だけでなく人道的なジレンマなどを克明に描く。写真はガイガーカウンター。
何はともあれオバマ米大統領としては非核実現へ布石を打ったとしてレガシー作りにつながり、日本とウィン‐ウィンな広島訪問。米大統領選を見据えた上でも、今回の判断は正しかったと言えるでしょう。暴言で知られるドナルド・トランプ氏は、在日米軍の必要経費を支払うよう要求するだけでなく日本や韓国にも核武装を促してきました。その一方、民主党のサンダース候補支持層の間では本選でクリントン候補が勝ち上がった場合、同候補に投票しないとの回答を確認しています。
サンダース候補もトランプ候補も政府支出によるインフラ拡大での雇用創出を模索する上でクリントン候補より格段にリベラル寄りですから、サンダース候補支持者がトランプ候補にまわるリスクをはらむ。しかしオバマ米大統領の広島訪問で核の脅威が再認識されれば、リベラル派はブッシュ時代で経験した戦争の苦い記憶を蒸し返し、トランプ候補への投票を思いとどまる期待がくすぶります。オバマ米大統領の広島訪問を真っ先に批判しそうなトランプ候補が11日時点までにおいて口撃を手控えているのは、そんな皮算用が働いているのかもしれません。
(カバー写真:Miquel Lleixà Mora/Flickr)
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