Spring Has Come And Both Existing And New Home Sales Increase.
全米リアルター協会(NAR)が発表した米3月中古住宅販売件数は年率560万件と、市場予想の555万件を上回った。前月の554万件から1.1%増となり、2ヵ月連続で増加。2月も3月同様に積雪に見舞われたとはいえ、複合住宅が回復し販売件数を押し上げた。ただし、2007年2月以来の高水準となった2017年11月の572万件には届かず。3月の販売件数は前年比で1.2%減となり、前月の増加を打ち消した。
単月での内訳をみると、一戸建てが499万件と、前月の496万件(修正値)から0.6%増加した。ヘッドラインと同じく、4ヵ月ぶりに減少している。複合住宅は5.2%増の61万件と、前月の減少分を相殺した。
4大地域別では、前月と同じく2地域で増加した。3月は複合住宅が増加を牽引した通り前月と逆の動きとなり、北東部で6.2%増の68万件、中西部も5.7%増の129万件とそろって4ヵ月ぶりに増加した。反対にIT企業が集まる西部は3.1%減の123万件、住宅市場規模が最大で一戸建て比率が高い南部も0.4%減の240万件と、それぞれ減少に転じた。
在庫件数は前月比5.7%増の167万件と、3ヵ月連続で増加した。在庫の増加の伸びが在庫を上回ったため、在庫相当は前月の3.4ヵ月から3.6ヵ月と、過去最短を記録した2017年12月の3.2ヵ月を上回る水準を保つ。販売日数は30日と前月の前年の37日を下回り、足元で最短となった。しかもそのうちの半分は、1ヵ月以内で売れてしまったという。
中央価格は前年比で5.8%上昇の25.04万ドル。前月の伸びと同じく、雇用統計の平均時給の伸び率を大幅に上回る水準を保つ。中央価格の前月比では3.9%上昇し、2017年6月以来で最大の伸びを遂げた。なお当時の価格は、26.33万ドルで過去最高だった。
買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件 3%=前月は3%、前年同月は5%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 1%=前月は1%、前年同月は1%
・新規購入者 30%>前月は29%と2015年9月以来で最低に並ぶ、前年同月は32%
・現金購入者 20%<前月は24%と直近で最高、前年同月は23%
・住居用ではなく投資向け 15%=前月は15%、前年同期は15%
中古住宅販売件数、一戸建てと複合そろって減少。
発表元であるNARのローレンス・ユン主席エコノミストは、今回の結果を受け「北東部と中西部での大幅増加は、積雪の影響で落ち込んだ反動」と説明した。前年比で販売件数が減少したのも「低水準にある在庫と値ごろ感の後退が背景」と指摘。所得税減税により可処分所得が押し上げられる半面、「住宅価格の値上がりペースは加速している」ため、販売件数の重石となる可能性を付け加えた。
▽米3月新築住宅販売件数、西部が牽引し2007年以降で2番目の高水準
米3月新築住宅販売件数は年率69.4万件と、市場予想の63.0万件を超えた。前月の66.7万件(61.8万件から上方修正)を4.0%上回り、2ヵ月連続で増加。2007年10月以降で2番目の高水準となる。春到来に合わせ住宅市場が書き入れ時を迎えるなか、中古住宅販売と足並みをそろえ、強含んだ。
4大地域別では、2地域で増加し前月の3地域から減少した。今回は11月に大幅増加した西部が28.3%増(前月の減少を打ち消し)の22.2万件と牽引したほか、南部も0.8%増(2ヵ月連続で増加)の37.1万件となる。反対に北東部は54.8%減(前月の増加を打ち消し)の1.9万件、中西部も2.4%減(3ヵ月ぶりに減少)の8.2万件だった。
新築住宅販売件数、景気後退以前の水準を回復。
在庫総数は、前月比横ばいの30.1万件だった。販売件数が増加し在庫が横ばいだったため、在庫相当は前月の5.4ヵ月から5.2ヵ月へ短縮している。中央価格は33.72万ドルと前月の32.5万ドル(修正値)から上昇、過去最高を更新した。前年比では4.8%上昇し9ヵ月連続でプラス、前月比では3.5%上昇し4ヵ月ぶりに値上がりを示した。
▽米2月S&P/住宅価格指数、20都市の前年比は約2年ぶりの高水準
米2月S&P/ケースシラー住宅価格指数(季節調整前)は前年比6.34%上昇の206.67となり、前月の205.16(205.10から下方修正)を抜け過去最高を更新した。20都市別の季節調整前では前年同月比6.80%上昇の197.01と、前月の196.18(196.31から下方修正)を抜け、2014年6月以来の高い伸びを達成している。2012年6月以来の前年比プラスを保つ。指数ベースでは少なくとも2006年11月以来の高水準となった。季節調整済み・20都市別の前月比は0.83%の上昇と、市場予想の0.70%を上回った。前月の0.81%(0.75%から上方修正)を超えた。
20都市別での季節調整済みベース・前月比でトップはオハイオ州クリーブランドで1.63%の上昇、2位はワシントン州シアトルで1.40%の上昇、3位はこれまでワースト圏内にいたミシガン州デトロイトで1.36%上昇した。ワースト1位はワシントンD.C.で0.46%の上昇にとどまり、続いてオレゴン州ポートランドが0.54%、イリノイ州シカゴが0.55%と続いた。
▽米2月住宅価格指数は予想以下も、前年比は7%台の伸びを維持
米住宅金融公社(FHFA)が発表した米2月住宅価格指数は前月比0.6%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.9%(0.8%から下方修正)と合わせ、2012年1月以来のプラスを保つ。前年比は7.2%上昇、2013年10月以来の高水準だった前月の7.4%を下回った。国勢調査ベースの9地域別では全て上昇した。
FHFAが公表する住宅価格指数は、米連邦住宅貸付機関監督局(OFHEO)傘下のFHFAの場合はプライム層向けの住宅価格がメインで、融資額が政府保証機関(GSE)の買取基準額を超えるジャンボ・ローンや、低所得者層向けのサブプライムを含んでいない。従ってS&Pケース/シラー住宅価格指数とは対象が異なり、数字自体は現状より強めの数字が出ると言われている。こうした背景からFHFAは2011年6月分から、フレディマックやファニーメイなどGSE以外のローンを含んだ住宅価格指数を拡大版として、公表を開始した。
――中古住宅販売件数は価格が前月比で3.9%、新築住宅も前月比で3.5%上昇したにも関わらず、それぞれ販売件数が増加していました。今後の利上げと住宅ローン金利の上昇をにらみ、いったん金利上振れが一服したタイミングで販売件数が増加したとみられます。しかし、新築住宅と中古住宅ともに引き続き在庫不足の状況に変わりありません。
足元で住宅着工件数が新築販売件数を上回り、少なくとも新築は景気回復サイクルで最高を示し在庫逼迫解消へ向け進む半面、中古住宅の逼迫状況は引き続き深刻です。住宅値上がりだけでなく利上げを受けての金利上昇も懸念され、住宅市場はボラタイルな推移が続きそうです。
(カバー写真:mobil’homme/Flickr)
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