ISM Non-Manufacturing Index Hovers Around 3-year High, But Employment Slips.
6月のISM非製造業景況指数と、IHSマークイット・サービス業PMI・確報値をおさらいしていきます。
米6月ISM非製造業景況指数は59.1となり、市場予想の58.3を上回った。前月の58.6を超え、2005年8月以来の高水準だった2月(59.9)に続き強い伸びを示す。
ただし、トランプ政権が鉄鋼・アルミ関税賦課を欧州連合(EU)やカナダ、メキシコに拡大し、対中知財制裁関税措置の発動、自動車関税なども取り沙汰され、好材料ばかりとは言えない。ISMは「引き続き、関税をはじめ稼働率の抑制、輸送遅延が懸念材料」と指摘した。セクター別でも、資材コストの上昇に直面する建設は「輸送の問題(トラック運転手の不足など)や人材不足と共に、物価上昇圧力を加える」と指摘。情報は、関税と油価を潜在的物価上昇要因に挙げた。管理サービスは「物価への不確実性を与える」と報告し、その他サービスも「鉄鋼・アルミ関税でフラットラック(特殊コンテナの一種)不足と輸送の遅れを招いている」と問題視する姿勢を示す。なお6月は、17業種で拡大を報告、5月の14業種を上回った。
内訳をみると、ビジネス活動が2005年8月以来の高水準だったほか、新規受注も前月を上回り好調。一方で雇用は4月に続き約1年ぶりの水準へ低下したほか、在庫変化も前月以下となる。仕入れ価格も、関税発動の割に前月を下回った。詳細は、以下の通り。
・ビジネス活動 63.9と2005年8月以来の高水準>前月は61.3、6ヵ月平均は61.3
・新規受注 63.2>前月は60.5、6ヵ月平均は61.8
・雇用 53.6、2017年4月以来の低水準と一致<前月は54.1、6ヵ月平均は55.8
・新規輸出受注 60.5>前月は57.5、5ヵ月ぶりの低水準、6ヵ月平均は59.2
・在庫変化 53.5<前月は57.5と直近で最高、6ヵ月平均は56.3
・仕入れ価格 60.7>前月は64.3と直近で最高、6ヵ月平均は61.9
▽米6月IHSマークイット・サービス業確報値、約3年ぶりの高水準近くを維持
米6月IHSマークイット・サービス業PMI確報値は56.5と、市場予想と速報値に並んだ。2015年4月以来の高水準を示した前月の56.8と、ほぼ変わらず。内訳をみると、生産が前月を下回ったとはいえ約3年半で2番目の高水準だった。仕入れ価格は2013年9月以来の高水準となる。雇用も2015年3月以来以降で2番目のレベルだった。総合PMIは56.2と速報値の56.0から上方修正されたが、2015年4月以来の高水準を遂げた前月の56.6には届いていない。
ISM非製造業景況指数は2015年4月以降で2番目の高水準、マークイット・サービス業PMIも高止まり。ただ雇用はまちまち。
IHSマークイットのクリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは、結果を受け「米6月雇用統計・非農業部門就労者数は前月比23.0万人増のペースとなる」と評価した。しかし「物価圧力が引き続き高止まりしているため下方リスクが意識され、7~9月期の成長率を押し下げかねない」と懸念も寄せた。
――米6月雇用統計前に、ISM非製造業景況指数とまちまちな結果となりました。米6月ADP全国雇用者数は小幅鈍化の可能性を点灯させていましたが、労働市場が逼迫するなか何よりの注目は賃金動向。原油高や関税効果で物価上昇圧力が加わるなか、企業が賃金を引き上げられる余力は乏しくなりつつあります。
それより、ISM非製造業景況指数で仕入れ価格が低下した点は気掛かり。関税発動や油価の上昇を受けながら低下しているのは、物価上振れでの利鞘縮小→需要鈍化→景気減速を織り込みに掛かっているのか。ISMのセクターごとの報告では、金融関連から「見通しはポジティブ」との見解が聞かれたものの、楽観は禁物です。
(カバー写真:Chris Huggins/Flickr)
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