ISM Manufacturing Index Rebounds, But Coronavirus Issues Drags The Activity.
米1月ISM製造業景況指数、米1月マークイット製造業PMI確報値、各連銀の製造業景況感指数、米12月建設支出をおさらいしていきます。
米1月ISM製造業景況指数はと50.9と、市場予想の48.5を上回った。前月の47.8(47.2から上方修正)も超え、6ヵ月ぶりに50の分岐点を回復。2019年末にトランプ大統領が米中貿易協議・第1段階の内容を承認し、20年1月15日に署名式を迎え、漸く大台に乗せた。ただボーイング737の運航停止が長引くほか、新型コロナウイルス肺炎の影響も懸念され、2月も分岐点を維持できるかは微妙な情勢である。
内訳をみると、まちまち。新規受注をはじめ新規輸出受注、雇用、在庫などが前月以下となった一方、生産や仕入れ価格は上昇した。詳細は、以下の通り。
・生産 54.3>前月は44.8と少なくとも2009年7月以来の低水準、6ヵ月平均は48.5
・新規受注 52.0>前月は47.2と 2012年6月以来の低水準近く、6ヵ月平均は48.6
・雇用 46.6>前月は45.2、2016年1月以降で2番目の低水準、6ヵ月平均は46.8
・在庫 48.8<前月は49.2、6ヵ月平均は48.2
・新規輸出受注 53.3>前月は47.3、6ヵ月平均は47.2
・仕入れ価格 53.3>前月は51.7、6ヵ月平均は48.8
・入荷遅延 52.9>前月は52.2、6ヵ月平均は51.6
・受注残 45.7>前月は43.3、6ヵ月平均は44.6
ISMのティモシー・フィオーレ会長は、結果を受け「世界貿易は引き続き産業をまたいだ問題だが、多くの回答者はここ数ヵ月間の調査で最も楽観的だった」と分析。特に「食品飲料・タバコは力強く、次いでコンピュータ・電子機器が好調」だった半面、「石油・石炭が最も弱かった」という。全体的に「センチメントは、短期成長見通しにゆるやかにポジティブ」と結んだ。
今回、18業種別でビジネス拡大を報告したのは8業種(家具、木材、食品・飲料・タバコ、コンピュータ・電子機器、雑貨、非金属鉱物、化学品、組立金属)となった。縮小を報告した業種は前月と変わらず8業種(印刷、服飾・革製品、電気機器・電気部品、石油・石炭、繊維、輸送機器、一次金属、機械)となり、2業種は横ばいだった。
▽米1月IHSマークイット製造業PMI・確報値、ISMに反し鈍化
米1月IHSマークイット製造業PMI確報値は51.9と、市場予想と速報値の51.7を上回った。ただし、前月の52.4には届かず。3ヵ月ぶりの低水準となる。内訳をみると、雇用や新規受注が伸び悩んだ一方で、信頼感は7ヵ月ぶりの高水準だった。
結果を受け、クリス・ウィリアムソン首席ビジネス・エコノミストは「2020年に入り輸出が鈍化し、生産活動を押し下げ雇用を鈍化させた」と分析した。また「これまで上昇を支えた消費財が鈍ったほか、資本財も4年ぶりに減速し、設備投資が弱まってきた兆しがみえる」と指摘。ただし「貿易摩擦への懸念後退と共に見通しは改善し、足元のソフトパッチは一時的とみる」とまとめた。
米中貿易協議で第1弾の合意を手掛かりにISMは改善も、マークイットは逆に鈍化。
――各地区連銀の製造業景況指数は、以下の通り。特にラストベルトのペンシルベニア州、ニュージャージー州を含むフィラデルフィア地区連銀、やバージニア州、ノースカロライナ州、ワシントンD.C.を含むリッチモンド地区連銀で上昇が目立ちます。分岐点を回復したのは、5地区連銀中、NY、フィラデルフィア、リッチモンドの3つで、軟調な原油価格を受けダラス地区連銀とカンザスシティ地区連銀は分岐点割れを維持しました。
それでも、米中貿易協議・第1段階の署名や米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の成立などに支えられ、地区連銀の景況感も徐々に改善する期待があります。問題は、新型コロナウイルスで、企業のサプライチェーンを下押しすれば回復ペースが鈍化しかねません。特に、雇用は要注意。ISMは分岐点割れを続け、マークイットも今回軟調とあって、米1月雇用統計で製造業が就労者数を下押しするリスクをはらみます。
▽米12月建設支出、住宅と非住宅共に弱く予想外に減少
米12月建設支出は前月比0.2%減の年率1兆3,277億ドルとなり、市場予想の0.5%増に反し減少した。前月の0.7%増(0.6%増から上方修正)を下回り、6ヵ月ぶりに減少している。米10~12月期実質GDP成長率・速報値で構築物投資が3期連続で大きく落ち込んだ通り、建設支出は軟調だった。前年比では5.0%増と3ヵ月連続でプラスとなった。
内訳をみると、住宅が1.4%増と6ヵ月連続で増加した。ただし、非住宅は1.2%減と6ヵ月ぶりに減少した。ただし、前年比では住宅が5.8%増と3ヵ月連続で増加。非住宅も4.4%増と、2018年2月以降のプラスを維持した。
直近では前年比プラス圏を維持。
民間は前月比0.1%減となり、前月の0.6%増を下回り6ヵ月ぶりに減少した。住宅が1.4%増と6ヵ月連続で増加したものの、非住宅が1.8%と過去4ヵ月間で3回目の落ち込みを見せた。公共は0.4%減と、前月の1.0%増から増加に転じた。住宅が2.3%増とプラスに転じた半面、非住宅が0.4%減とマイナスに転じた。
(カバー写真:Ekkasit Chaingam/Flickr)
Comments
1月FOMC声明文、物価目標の変更が近い可能性を示唆 Next Post:
米12月個人消費は堅調も所得は鈍化、貯蓄率は5ヵ月ぶり低水準