Job Cuts Down 40% From The April’s Record.
米5月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で約6倍増の39万7,016人と3ヵ月連続で急増した。単月で過去最多記録となっただけでなく、1993年に統計を開始して以来で2番目の高水準となる。ただし、4月20日のテキサス州を始め全米50州が経済活動の再開に着手するなか、過去最悪の4月と比べれば40.8%減となる。
チャート:人員削減予定数は前月からは4割減
1~5月までは前年同期比4倍増の141万4,828人だった。これは、金融危機時の128万8,030人を9.8%上回る。
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は「人員削減予定数は前月比で大幅減となったが、パンデミック発生以来、過去最多の水準が続く」と指摘した。5月20日までに全米50州が経済活動の再開に着手したものの「失業者が早々に社会復帰できるかは疑問を残す」ともコメントし、今後の見通しに懸念を残す。
特に人員削減が目立った業種は娯楽・宿泊で、5月だけで16万3,680人と前年比160倍に膨らんだ。年初来では前年比70倍の57万8,876人となる。
小売は年初来で約3倍増の15万1,416人となった。その他自動車も約3倍増の7万3,576人に及ぶ。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。4月は1位が娯楽・宿泊、2位が小売、3位が自動車、4位がサービス、5位が資本財だった。
1位 娯楽・宿泊 16万3,680人(全体の41.2%)
2位 小売 3万7,089人(全体の9.3%)
3位 サービス 3万4,229人(全体の8.6%)
4位 航空・防衛 2万1,960人(全体の5.5%)
5位 資本財 2万1,200人(全体の5.3%)
州別動向は、年初来で以下の通り。4月は1位が全米で感染者最多のNY州、2位は全米で経済活動再開が最も早かったテキサス州、3位はIT企業を多く抱えるカリフォルニア州、4位は観光地で知られるフロリダ州、5位は製造業比率の高いオハイオ州だった。
1位 カリフォルニア州 29万7,197人(全体の21.0%)
2位 ニューヨーク州 14万6,672人(全体の10.4%)
3位 フロリダ州 11万2,237人(全体の7.9%)
4位 テキサス州 10万9,242人(全体の7.7%)
5位 オハイオ州 7万2,494人(全体の5.1%)
リストラ実施の理由別ランキングは、単月で以下の通り。4月は1位が新型コロナウイルス、2位が市場環境、3位が油価の下落、4位が閉鎖、5位が理由なしだった。2019年は主に再編、閉鎖、コスト削減、契約切れが上位に入った。
1位 新型コロナウイルス 20万9,147人(全体の52.7%)
2位 市場環境 11万9,017人(全体の30.0%)
3位 需要鈍化 5万172人(全体の12.6%)
4位 閉鎖 7,698人(全体の1.9%)
5位 油価の下落 3,653人(全体の0.9%)
採用予定数は、前年同月比で約6倍増の3万8,981人だった。前月の28万5,639人から大幅減となったものの、力強い伸びを維持した。5月単月では、3年ぶりの力強さとなる。採用に積極的だった業種は、経済活動が再開した好影響を受け3~4月と打って変わってテクノロジーと小売以外、入れ替えとなった。チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社によれば、新型コロナの影響で少なくとも3万2,000人の新規採用計画が発表されたという。
セクター別では、以下の通り。4月の1位は輸送、2位は小売、3位はテクノロジー、4位は金融、5位は防衛だった。
1位 娯楽・宿泊 3万人(全体の77.0%)
2位 通信 3,730人(全体の9.6%)
3位 テクノロジー 1,500人(全体の3.8%)
4位 小売 1,000人(全体の2.6%)
5位 資本財 803人(全体の2.1%)
――人員削減予定数は過去最多の水準で高止まりし採用予定数は前月比で大幅ダウンした点は気掛かりながら、明るい材料を見出すならば採用を予定する業種の変化でしょう。これまで雇用削減をリードしていた娯楽・宿泊や小売、資本財がランクインしています。通信が計画数を増やしたのは、在宅勤務の継続などを受けたデータ使用量の増加に対応したものでしょう。コロナ禍で大幅増となった輸送が姿を消しており、経済が正常化しつつある姿が現れ始めたと言えるでしょう。
(カバー写真:Ted Eytan/Flickr)
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