Job Growth Surges, Buoyed By Restaurants And Part-Timers.
<本稿のサマリー>
米2月雇用統計は、2月半ばに大寒波が襲い、悪天候により働けなかった労働者は93.9万人と、2月平均の30.9万人を上回ったにも関わらず、大幅に増加しました。とはいえ、質的な労働市場の回復を示すものとは言いづらい内容です。ポイントは、以下の通り。
・NFPが大幅増加も、フルタイムではなくパートタイムが牽引、フルタイムは前月比12.2万人減少、パートタイムは同48.2万人増加
・娯楽/宿泊が雇用増を下支え、飲食業がそのうち約8割を占める
・不完全失業率は11.1%で横ばい
・失業率は低下したが、労働参加率は横ばい
・週当たり労働時間が短縮(寒波による操業停止などが一因か)
・労働者の8割を占める管理職を除いた場合の平均時給は前年同月比5.1%増、管理職を含めた全体の5.3%以下
・長期失業者の割合が41.5%、2012年6月以来の高水準
特にパートタイムの増加分がフルタイムを上回っている点は、特筆に値します。また、長期失業率が2012年以来の高水準にある長期失業率を始め、労働市場には歪みが存在することも事実。この辺りは、次回、お伝えしますね。米2月雇用統計の詳細は、以下の通り。
米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比37.9万人増となり、市場予想の18.2万人増を上回った。前月の16.6万人増(4.9万人増から上方修正)を含め、2ヵ月連続で増加。コロナ感染者の減少を受け、1月25日のカリフォルニア州が外出禁止措置を解除したほか、NY市もレストランの店内営業を承認するなど規制が緩和され、サービス業を中心に雇用が回復した格好だ。
20年5月以降、1,288万人の雇用を取り戻した。ただ、同年3~4月の記録的な減少(2,236万人)を回復するにはあと948万人必要となる。
チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと948万人増加する必要あり
20年12月分の7.9万人の下方修正(22.7万人減→30.6万人減)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で3.8万人の上方修正となった。20年12~21年2月の3ヵ月平均は8.0万人増にとどまり、コロナ禍前の2019年平均である16.8万人増を大幅に下回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比46.5万人増と市場予想の19.5万人増を大幅に上回った。前月の0.9万人増(0.6万人増から上方修正)を含め、2ヵ月連続で増加した。民間サービス業が51.3万人増と牽引し、ヘッドライン同様に前月の10.4万人増(1.0万人増から上方修正)を上回るペースとなった。
チャート:NFPは2ヵ月連続で増加、失業率は低下トレンドを維持
サービス部門のセクター別動向は、政府を含め11業種中7種が増加し前月から1業種減った。今回最も雇用が増加した業種は娯楽・宿泊で、3ヵ月ぶりに増加した。ただし、過去2ヵ月分の減少の回復には至っていない。続いて1月に1位だった専門サービス、教育・健康が入り、教育・健康は3ヵ月ぶりに増加しながら過去2ヵ月分の減少を相殺できず。一方で、前月に増加した政府を始め金融、情報が減少に転じた。政府は、州・地方政府の教育部門で減少が響いた。
(サービスの主な内訳)
―増加した業種
・娯楽・宿泊 35.5万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は2.5万人減、6ヵ月平均は8.4万人増(そのうち食品サービスは28.6万人増、2ヵ月連続で増加>前月は1.7万人増、6ヵ月平均は5.9万人増)
・専門サービス 6.3万人増、10ヵ月連続で増加<前月は8.5万人増、6ヵ月平均は13.1万人増(そのうち派遣は5.3万人増<前月は9.6万人増、6ヵ月平均は6.7万人増)
・教育/健康 4.4万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は2.6万人減、6ヵ月平均は2.6万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.6万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は9.6万人減、6ヵ月平均は4.2万人増)
・小売 4.1万人増、2ヵ月連続で増加<前月は4.6万人増、6ヵ月平均は4.2万人増
・その他サービス 1.0万人増、2ヵ月連続で増加>前月は1.2万人増、6ヵ月平均は1.7万人増
・輸送/倉庫 0.4万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は1.4万人減、6ヵ月平均は3.1万人増
・卸売 0.4万人増、7ヵ月連続で増加<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は1.5万人増
―横ばいの業種
・公益 横ばい<前月は0.1万人増と4ヵ月ぶりに増加、6ヵ月平均は横ばい
―減少した業種
・情報 0.3万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・金融 0.5万人減、10ヵ月ぶりに減少<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・政府 8.6万人減<前月は7.6万人増と5ヵ月ぶりに増加、6ヵ月平均は10.5万人減
財生産業は前月比4.8万人減と、前月の1.3万人減(修正値)を含め2ヵ月連続で減少した。最も下押しした業種は建設、続いて鉱業/伐採となる。建設と鉱業/伐採ともに、大寒波が影響した。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・製造業 2.1万人増>前月は1.3万人減と9ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は4.8万人増
・鉱業/伐採 0.8万人減、6ヵ月ぶりに減少(石油・ガス採掘は2,000人減)>前月は横ばい、6ヵ月平均は横ばい
・建設 6.1万人減、10ヵ月ぶりに減少<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は2.0万人増
チャート:2月のセクター別増減
チャート:どの業種もコロナ前の回復に至らず
平均時給は前月比0.2%上昇の30.01ドル(約3,200円)と、市場予想通りだった。前月の0.1%(0.2%から下方修正)を含め、8ヵ月連続で上昇している。前年比は5.3%上昇し、市場予想と前月値(5.4%から下方修正)と一致した。前年比の3%超えは14ヵ月連続となる。ただし、コロナ禍以降は低賃金職の減少を受けた統計上の伸びに過ぎない。
チャート:平均時給は前年比で高水準を維持
週当たりの平均労働時間は34.6時間と、市場予想であり2006年以来で最長となった前月の34.9時間(35.0時間から下方修正)以下に。大寒波が影響した可能性が高い。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は39.6時間と、新型コロナウイルス感染拡大直前の20年2月以来の高水準だった前月の40.2時間から短縮。全体の労働者の約7割を占める民間サービスも33.6時間と、2006年以降で最長を記録した前月の33.9時間を下回った。
失業率は6.2%と、市場予想と前月の6.3%を下回り、20年3月以来の水準となった。過去最悪だった20年4月の14.7%でピークアウトを示す。労働参加率が改善しないなかで、失業者が15.8万人減少し、低下につながった。労働統計局によれば、引き続き一時解雇された労働者が「雇用されているが休職中」として扱われるなど正確に反映されていない場合があり、これを考慮すると失業率は6.7%だったという。
労働参加率は、61.4%と前月と変わらず。感染者数が減少したにも関わらず、労働人口の増加は5万人増と、微増にとどまっていた。労働参加率は、コロナ禍を受け1973年1月以来の低水準だった20年4月の60.2%上回る水準を維持したとはいえ、伸び悩みを示す。就業率は過去最低だった20年4月の51.3%から上昇を続け、今回は57.6%。20年3月以来の水準へ改善した。
在宅勤務を行ったとする労働者の割合は22.7%と、前月の23.2%を下回った。
チャート:在宅勤務を行う労働者の割合
(作成:My Big Apple NY)
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.1%減の1億2,487万人、前月から12.2万人減少した。一方で、パートタイムはサービス業が雇用増加を牽引したように、同2.0%増の2,511万人となり、前月から48.2万人も増加した。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が大幅増加を遂げたものの、平均労働時間が短縮したため、前月比0.4%減となった。平均時給は前月比で上昇が続いたため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.3%増と、こちらも減少に転じた。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は11.1%と、前月に続き20年3月以来の低水準だった。不完全失業率は前月比で横ばいだったが、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は、前月比2.3%増の608万人と増加していた。
チャート:不完全失業率と労働参加率は改善にブレーキ
2)長期失業者 採点-×
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均は26.0週と、2017年9月以来の水準へ延びた。失業期間の中央値は逆に18.3週と、6ヵ月ぶりの水準へ短縮した前月の15.3週から延びた。27週以上にわたる失業者の割合は41.5%と前月の39.5%を超え、2012年6月以来の高水準となった。
3)賃金 採点-△
今回は前月比0.2%上昇し8ヵ月連続でプラス、前年比は1月に続き5.3%上昇。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.2%上昇の25.19ドル。前年比では5.1%上昇し、管理職を含めた全体の5.3%に届かなかった。
4)労働参加率 採点-×
労働参加率は61.4%と、前月と変わらず。1973年1月以来の低水準だった20年4月の60.2%を上回った水準を保つ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。
(カバー写真:Elvert Barnes/Flickr)
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