Biden Pushes “Build Back Better Framework”, But Still Uncertain To Assure Whole Democrats Support.
3.5兆ドルの育児・医療支援と気候変動対策を盛り込んだ歳出法案をめぐり、民主党の上院中道派と下院プログレッシブの間で交渉は難航を極めております。
バイデン大統領としては、10月30~31日開催のG20首脳会議、11月1~2日開催のCOP26を前に取りまとめ、国際舞台で華々しく成果として宣伝したいはず。そこで、ホワイトハウスは10月28日、1.75兆ドルの歳出案、並びに10年間で1.95兆ドルの歳入案を提示しました。題して”より良い再建の枠組み(Build Back Better Framework)”。声明では「何百万件もの良質な雇用を創出し、より多くの米国人を労働市場にとどめ、長期的成長を促し、米国内での値上げ圧力を低減し、再生可能エネルギー目標への道筋を作る」と訴えます。内容は以下の通り。
歳出案では、下院プログレッシブが主張した①育児・介護向け有給休暇支援、②メディケア支払い対象への歯科・眼科の給付追加、③再生可能エネルギー電力推進プログラム(CEPP)――などは盛り込まれませんでした。③については、石炭生産で全米2位のウエストバージニア州選出の上院中道派のジョー・マンチン議員が、強く反対していたものです。
歳入案では、①法人税引き上げ、②キャピタルゲイン税引き上げ、③富裕層向け増税(3年連続で年収1億ドル以上、あるいは資産10億ドル以上の超富裕層を対象に、株式など長期キャピタルゲインに売却せずとも23.8%課税)――などが外されました。しかし、代わりに大企業向けの最低税率を課し、自社株買いに1%の税率を付加し、富裕層に追加税率を課す内容となっています。法人税引き上げ撤回はマンチン議員など上院中道派の意見が通った一方で、企業や富裕層向けの課税強化はプログレッシブの主張を配慮したかたちです。
バイデン大統領案は、さすが上院議員歴36年+副大統領歴8年のベテラン政治家の匠の技を活かした折衷案にみえます。しかし、未だ民主党内では対立の火種がくすぶります。
バイデン大統領が欧州歴訪に先立ち米連邦議会を訪問した28日、下院は2015年に成立した高速道路補修プログラムの予算の12月3日まで延長をめぐり可決しました。しかし、肝心の上院超党派が8月に通過させたインフラ計画法案についてはプログレッシブの十分な支持を獲得できず、断念せざるを得なかったのですよ。進歩派議員連盟”コングレッショナル・プログレッシブ・コーカス(CPC)”トップのジャヤパル議員は、あらためて”より良い再建の枠組み”と同時に採決すべきと主張します。
ジャヤパル議員は、”より良い再建の枠組み”を精査する必要ありと説明しますが、その理由は、上院中道派の中核であるマンチン議員(ウエストバージニア州)と、クリスティン・シネマ議員(アリゾナ州)の2人に加え、プログレッシブのバーニー・サンダース議員(バーモント州)が”より良い再建の枠組み”を支持するか不透明な点にあります。3人とも、協議の進展を評価しながらも「支持(endorse)」という言葉が出てきてないのですよ。プログレッシブとしては、上院民主党の足並みがそろわないなかで、拙速に妥協して中間選挙を迎えたくないのでしょう。
バイデン大統領は11月3日まで、欧州歴訪のため米国を不在となります。果たして、その間に妥結が図れるのか、民主党指導部の根気、底力、交渉力が引き続き試されます。
(カバー写真:BrainMaY/Flickr)
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