Consumer Prices Jump, Americans Pay More For Staples.
米10月消費者物価指数(CPI)は前月比0.9%上昇し、市場予想の0.6%を上回った。前月の0.4%も超え、2008年6月以来の高い伸びだった6月に並んだ。ガソリンなど一部のエネルギーの伸びが再加速した上、前月に続き電力・ガスや食費が押し上げた。さらに、新型コロナウイルス感染者がピークアウトするなか、経済活動再開の恩恵を受け、一部の費目が再び上昇に反転。半導体不足を受け新車が引き続き上昇したほか、中古車も再び上向いた。
内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が6.2%、ガソリンが6.1%とそろって前月を超え、それぞれ5ヵ月連続で上昇した中で最も高い伸びとなった。なおエネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン価格は10月25日週に一時3.383ドルと、2014年9月以来の高値をつけた。その他のエネルギーでは、電力など公益が3.0%上昇し2008年7月以来の高水準。そのうち電力が1.8%と4ヵ月連続で上昇し2014年5月以来、ガスも6.6%上昇し2000年6月以来の高い伸びとなった。
エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が0.9%上昇、前月の0.4%を超え2008年6月以来の力強さをみせた。引き続き肉類・卵・魚が主導し、同1.7%と前月の2.2%を下回りつつ高止まりした。外食もデルタ株感染が拡大するなかで同0.8%と3ヵ月ぶりの高い伸びとなり、米10月雇用統計で外食が含まれる娯楽・宿泊の平均時給が示すように、力強い上昇トレンドを維持した。
CPIコアは前月比0.6%上昇し、市場予想並びに前月の0.4%を上回った。1982年6月以来の伸びへ加速した6月の0.9%以下とはいえ、再加速した格好だ。
チャート:CPIの費目別寄与、前月比
食品とエネルギー以外をみると、コロナ感染者数のピークアウトを受け、経済正常化で恩恵を受ける費目の一部が上昇した。宿泊は3ヵ月ぶりにプラスに転じ、医療サービスも上昇に反転。その他、半導体不足に伴う減産を受け新車が高止まりを続けただけでなく、中古車が再び大幅に上昇した。CPIの23.6%を占める帰属家賃は、2016年9月以来の高い伸びを維持。家賃も、立ち退き猶予期間の撤廃も重なり1992年10月以来の上昇率を記録した前月に近い伸びを保つ。逆に、服飾はセールが響き横ばいにとどまった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。
(上昇品目)
・中古車 2.5%の上昇、3ヵ月ぶりにプラス>前月は0.7%の低下
・新車 1.4%の上昇、7ヵ月連続でプラス>前月は1.3%の上昇
・宿泊 1.4%の昇、3ヵ月ぶりにプラス>前月は0.6%の低下
・医療サービス 0.5%の上昇>前月は0.1%の低下し4ヵ月ぶりにマイナス
・住宅 0.5%の上昇、上昇トレンドを維持>前月は0.4%の上昇
・帰属家賃 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持し16年9月以来の高い伸びを維持=前月は0.4%の上昇
・家賃 0.4%の上昇、プラスのトレンドを維持<前月は0.5%上昇し1992年10月以来の高い伸び・娯楽 0.4%の上昇、8ヵ月連続でプラス>前月は0.2%の上昇
・教育 0.4%の上昇、6ヵ月連続でプラス>前月は0.2%の上昇
(横ばい、低下項目)
・自動車保険 横ばい<前月は2.1%上昇し3ヵ月ぶりにプラス
・服飾 横ばい>前月は1.1%の低下し6ヵ月ぶりにマイナスで20年5月以来の下落率
・航空運賃 0.7%の低下、4ヵ月連続でマイナス<前月は6.3%の低下
CPIは前年比で6.2%上昇し、市場予想の5.8%並びに前月の5.4%を上回った。1990年11月以来の上昇率となる。CPIコアは同4.6%上昇し、市場予想の4.3%並びに前月の4.0%を超え、1991年8月以来の高い伸びを記録した。
チャート:CPIの前年比、費目別の寄与など
チャート:CPIとCPIコア、前年比
――米10月CPIは引き続き食品やエネルギーに加え、家賃など住宅関連が押し上げました。さらに、コロナ感染者のピークアウトに合わせ経済活動再開に伴って上振れした費目が一部上昇に転じ、インフレ圧力を高めます。
チャート:経済活動の再開で4~6月に上振れした費目、20年2月からみた上昇率
CPIの14.9%を占める食費は、供給網の制約を受け肉・魚・卵を始め記録的な伸びを保ち、家計に重く圧し掛かります。
チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続
7.3%を占めるエネルギーを始め、前述の生活必需品の費目も高止まりしています。米エネルギー情報局(EIA)は10月13日、今冬に家計が負担する天然ガス代は前年同期比30%増、電気代は同6%増との見通しと発表。足元のエネルギー価格高騰に加え、今年の冬は「ラニーニャ現象」により北半球で気温が低下し暖房需要の拡大が予想されるだけに、家計にとっては頭痛の種となりそうです。
チャート:食費に加え生活必需品のガソリン、電力・ガス料金のほか、家賃も家計を圧迫
当然ながら、インフレ加速により実質賃金が圧迫され続けています。10月の実質平均時給は前年同月比1.2%下落し、7ヵ月連続でマイナスだっただけでなく前月から下げ幅を広げました。
チャート:実質賃金の下落に加え、生活必需品のインフレ加速で裁量消費余地が狭まる
11月FOMC声明文では、インフレの文言を「一時的な要因」から「一時的と見込まれる要因」へ修正しました。パウエルFRB議長は「一時的」との文言につき、人によって異なる捉え方が異なるため調整したと説明しましたが、同時に「利上げの時機は経済の道筋次第で・・仮に必要となれば躊躇しない」とも言及し、政策の柔軟性を確保していたものです。今後、利上げへにじり寄るかはインフレの文言の変更がカギを握るなか、次回12月14~15日開催のFOMCの前日、13日に米11月CPIを予定します。2ヵ月連続でインフレ加速を確認した場合、Fedが文言をさらに調整するのか、次の数字が待たれます。
(カバー写真:Gilbert Mercier/Flickr)
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