Byron Wien’s Top 10 Surprises For 2022 : S&P 500 Will Make No Progress This Year.
東京証券取引所が大発会を迎えた1月4日、年始恒例のこちらをお届けします。
ウォール街のヨーダことブラックストーンのバイロン・ウィーン副会長が1月3日、3年連続でジョー・ジドル最高投資ストラジテスト氏と共に2022年版のビックリ10大予想を発表しました。
ウィーン氏にとって37回目となる今年、以下の10項目を挙げています。一般の投資家が定義する”ビックリ=サプライズ”な出来事は30%の確率で起こること、ウィーン氏の場合は50%以上と定義していますが、どのような内容か、早速みていきましょう。
1)好業績を金利上昇が相殺し、2022年のS&P500パフォーマンスは横ばいに。バリュー株がグロース株を上回る展開が予想され、ボラティリティは高止まりし、調整局面(10%安)が視野に入るも弱気相場入り(20%超の下落)せず。
2)商品先物相場は下落する半面、賃金や家賃は上昇を続け消費者物価指数(CPI)は前年比4.5%で高止まりへ。輸送費やエネルギー価格の下落が支援材料。
3)インフレ高進とFedのテーパリング加速を受け米10年債利回りは2.75%へ上昇し、Fedによる利上げは2022年に4回を数える。
4)オミクロン株の感染拡大を受けながら、カンファレスや会合は2022年末までにパンデミック以前の水準を回復する。先進国やエマージング国でコロナは問題であり続けるが、米国では概ね正常化し人々は週に3~4回出勤する程度で、映画館やコンサートなどを以前のように楽しむようになる。
5)中国当局は、不動産市場への規制強化で足元の混乱に対応する。結果的に中国の家計は投資に積極的になり、資産運用ビジネスが隆盛を極め西側諸国の企業にとって大いなる機会を与える。
6)金先物は20%上昇し、過去最高値を更新へ。米企業業績は力強さを維持するものの、投資家は高インフレと高ボラティリティへのヘッジとして仮想通貨より安全資産である金を選好する。
7)主要産油国の供給は需要に追い付かず、WTI原油価格は100ドルを突破する。
8)安全性が担保されるようになり発電源として原子力が注目され、米中西部で大型の原子力発電所の建設が承認される。
チャート:米国の発電源、原子力は19.7%と再生可能エネルギーの19.8%に続き3位
9)ESGは企業の方針を超え、米国では政府機関が新たな規制基準として導入を推進する。FRBはストレステストを通じ、気候変動シナリオへの脆弱性の評価を開始する。
10)リチウムを始めニッケルやコバルトなどの生産をほぼ独占する中国が国内市場を優先するため、米国にとって電気自動車の生産に必要なリチウムの入手が困難となる。
以下は、ビックリ予想10選から漏れた”ありえそうなこと”4選となります。例年5選から減りましたが、2021年の3選からは増えました。
1)米食品医薬品局(FDA)が生体外遺伝子編集治療法を初めて承認する。これにより、ゲノム医療の研究が一段と活発になり、生体内遺伝子治療の開発が加速する。倫理的な懸念が激しい議論を呼び起こす一方で、医薬品やヘルスケア分野への投資家の注目も集める。
2)J.P.モルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が市場の旗振り役へ180度転換することで、デジタル経済は一段と普及する。
3)米国と中国は半導体技術の海外生産への依存度を低下させるべく、米国は半導体の研究に多額の資金を民間企業に投入する半面、中国は国有企業がその役割を担う。
4)プエルトリコは米国の定年退職者にとって聖地に、温暖な気候とゆるやかな税制が背景。
——いかがでしたか?ウォール街からの予想とあって、米中の台湾をめぐる対立は挙げられず、米中問題は、半導体競争での一騎打ちを掲げる程度で、むしろ中国恒大を始め不動産市場の問題は中国個人マネーの資産形成を促進する材料となり、ブラックストーンのような米運用会社に恩恵をもたらすと楽観的です。ただ、こうした予想は単なる希望的観測とは言い切れません。2020年1月の米中第1段階合意で金融サービスの自由化が盛り込まれたように、J.P.モルガン・チェースを始めゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ブラックロックなどの米金融機関・運用会社は中国提携企業と設立した合弁会社を完全子会社化し、その種は蒔かれています。
米株については「北野誠のトコトン投資やりまっせ。」で筆者がご説明した通り、慎重なウォール街の予想とほぼ横並びの内容となっています。WTI原油価格の100ドル突破、金先物の過去最高値更新の予想も、大勢の見方と変わりありません。Fedの利上げ予想は足元の3回を超える見立てとなっていますが、強気派は4回が優勢となっていますので、これもあまりビックリというレベルでもないでしょう。
さて、2020年の”ビックリ10大予想”の結果を振り返ると・・・1勝5敗4分と2020年と2019年の1勝4敗5分よりやや後退しました。
とはいえ、引き続きウィーン氏の予想は複数盛り込まれるため判断が難しいというのが実情です。気になる方は、是非2021年版を始め過去の一覧をご確認してみて下さい。
(カバー写真:nakashi/Flickr)
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