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米中首脳のオンライン会談、協議は平行線をたどり終了か

by • March 21, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2098

Biden and Xi’s Call Exposes A Deepening Divide Between Their Positions On The Russian Invastion Of Ukraine.

米中首脳によるオンライン会談が3月18日、行われました。

中国といえば、ロシアのウクライナ侵攻を非難した2月25日の国連安全保障理事会決議案の採決で、アラブ首長国連邦(UAE)やインドと共に棄権した少数の国のひとつ。3月2日、緊急特別会合を開催した局面でも中国は棄権を選びました。さらに3月13日は、西側諸国から厳しい経済制裁が発動するなか、ロシアは中国に軍事物資の支援を要請したとの報道も。その他、中国とロシアの接近を示唆するニュースは、ざっと以下の通り。

・中国、ロシアのエネルギー関連や資源関連の企業取得を検討(3月8日
・シルアノフ露財務相、西側の経済制裁による外貨準備の米ドルやユーロへのアクセス遮断を受け、外貨準備から中国人民元を利用すると表明(3月14日
・ロシア中央銀行の資産が凍結され、ロシア国内の7行がSWIFTから排除される状況下、ロシアと中国が新たな決済網の構築を検討中(3月16日
・中国、ロシア国内で急落中の同国産エネルギーを購入中(3月18日

バイデン政権としては当然ながら、中国を介した対ロ経済制裁の抜け道をふさぎたいところ。サリバン大統領補佐官と中国外交トップの楊潔篪氏による3月14日の会談でも、中国による対ロ制裁迂回に警告を発していたものです。翌15日には、米国情報当局が北大西洋条約機構(NATO)とアジアの同盟国に対し、中国がロシア側の要請に応じ軍事的・経済的な支援実施への意思表明をしたと伝えた事実が報じられ、米国側の中国への強い警戒と牽制を物語ります。

サリバン氏と楊氏の会談を経て、セッティングされたバイデン大統領と習主席のオンライン会談ですが、こちらでご紹介したように2時間と異例の長さに及ぶ会談後、中国側の声明によれば、習主席は「世界の平和と安定を米中で共に担うべき」と主張する程度で、引き続きロシアやプーチンを批判する文言を避けています。何より「He who tied the bell to the tiger must take it off(解铃还须系铃人、虎に鈴を付けた者が外さなければならない)」とする中国の諺を引用し、痛烈なジャブを放ちました。この諺は「問題を起こした者こそ、解決すべき」を意味し、中国がウクライナを侵攻したロシアを虎、鈴をつけた者が米欧諸国そしてNATOと位置付け、西側の対ロ制裁などに与しない立場を表明したも同然です。実際「全面的かつ無差別的な制裁を実施し、被害を受けるのは庶民」と批判するのを忘れません。

翻って、秦剛駐米大使は3月20日、CBSのインタビューに応じロシアに武器供与を行っていないと説明した上で、ウクライナ危機の段階的緩和に尽力すると発言しました。一方で、ウクライナ侵攻でロシア批判を避けつつ「中ロは共通の利益を有し、両国の信頼関係は中国にユニークな立場を与える」と意味深長な言葉を残しています。米中首脳会談後のフォローかと思いきや、中国独自の外交優位性を誇示したようにみえますね。

ホワイトハウスの声明はというと「中国がロシアに物質的支援を提供した場合の、影響と結果について説明した」とし、従来のメッセージを繰り返す程度でした。中国への具体的な要請は、盛り込んでいません。ただし、サキ報道官は会見で、対ロ支援への影響と結果につき、幅広い選択肢を検討すると述べつつ制裁カードをちらつかせます。

画像:米中首脳によるオンライン会談の様子

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(出所:中国外交部)

こうしてみると、米中首脳によるオンライン会談は平行線で終わったように見えますね。では、各国がどのように報道したのか、例の通りヘッドラインを拾ってみました。

CNN:バイデン、電話会談の機会を捉えウクライナ侵攻中のロシアを支援すれば結果を伴うとけん制(Biden uses call with Xi to lay out consequences for China if it supports Russia attack on Ukraine)

ワシントン・ポスト:バイデン、中国に侵攻中のロシアを支援しないよう通告(Don’t help Russia’s invasion, Biden tells China’s Xi)

フィナンシャル・タイムズ:バイデンと習、ウクライナ戦争をめぐり違いを埋められず(Biden and Xi fail to bridge differences over Ukraine war)

環球時報:習、米国とNATOにロシアとの協議を要請し無差別な制裁に反対表明(Xi urges US, NATO to talk with Russia, opposes indiscriminate sanctions)

サウスチャイナ・モーニング・ポスト:ウクライナ戦争:2時間の電話会談で習近平は協力を要請、バイデンは(対ロ支援の)結果を警告Ukraine war: Xi Jinping calls for cooperation, Biden warns of consequences in two-hour call)

エコノミック・タイムズ:バイデン、習にロシアの侵攻を支援するなと通告(Don’t help Russia’s invasion, Biden tells China’s Xi)

ザ・タイムズ・オブ・インディア:中国、米国に「問題を起こした者が解決すべき」と伝えあしらう(China snubs US, says ‘he who tied bell to the tiger must take it off’)

タス通信:バイデン-習電話協議、米中の分断を露呈(Biden-Xi Jinping phone talk exposes U.S.-China divide)

米国側が習主席に対ロ支援を強くけん制したとニュアンスを伝えた一方で、中国側は習主席がウクライナ危機に米中間での協力を求め融和的だったとの印象を与える報道をしています。インドは米国の牽制を伝える一方で米国が中国にあしらわれたとし、両者の温度差を報じてました。米中間での接近を懸念するロシアは両国の分断を強調。それぞれの立場が垣間見れる報道ですよね。

個人的には、インドの報じ方が気掛かりです。インドは対ロ制裁をかいくぐるべく、ロシアとの貿易でルーブル建てとルピー建ての再開を検討中と報じられています。インドと言えば、SWIFT排除の憂き目に遭ったイランとも、網の目を買いくぐった実績も。インド太平洋の関係も含め、今後の世界秩序形成に多大な影響を与えかねず、バイデン政権はインドにも目を光らせる必要に迫られます。

(カバー写真:Antonio R. Villaraigosa/Flickr)

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