President Biden Invokes Defense Production Act to Accelerate Domestic Manufacturing of Clean Energy.
バイデン氏は6月6日、太陽光発電を支援する大統領令に署名しました。さらに、国防生産法を(DPA)発動、国内での太陽光パネル生産を始めクリーン・エネルギー関連機器の生産増強に乗り出します。
そもそも、気候変動対策を重視するバイデン政権は2035年までに太陽光発電の割合を40%へ引き上げる目標を掲げつつ、2月にはトランプ前政権が課した太陽光パネルへのセーフガード(緊急輸入制限)の継続を決定。パネルの基幹部品であるセルや両面発電タイプのパネルなど一部製品は対象外としながら、中国などから輸入する太陽光パネルに30%など関連輸入品への追加関税措置を4年延長しました。
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一方で、米商務省は米太陽光パネル製造メーカーであるオクシン・ソーラーの要請を受け、タイを始めマレーシア、ベトナム、カンボジアなど東南アジア4カ国を経由し、太陽光パネルやソーラー機器など安価な中国製品が流通するリスクについて調査を実施中。8月頃に予定する調査結果次第で250%とも言われる遡及的な関税適用が懸念され、太陽光発電所のプロジェクトなどは次々に凍結するに至ります。太陽光発電目標の達成に暗雲が立ち込めるなか、バイデン政権は国内太陽光パネル製造メーカーに打撃となる苦渋の決断を下し、今回の東南アジア4カ国への関税免除を決定した格好です。なお、2021年の輸入額ベースで、これら東南アジア4カ国は65.4%を占めます。
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さらに、バイデン政権が米商務省に介入し2年の関税免除に踏み切った理由が2つあります。1つはロシアによるウクライナ侵攻に伴う原油などエネルギー価格の高騰で、4月の前年同月比13.7%まで上振れする電力・ガスなど光熱費の上昇抑制を狙ったことでしょう。
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もうひとつは、中間選挙前の民主党支持層へのアピールが挙げられます。気候変動対策向け補助金を盛り込んだ「より良い再建法案」が21年12月に民主党中道派マンチン上院議員の反対で棚上げされた後、成立の目途が立たず、少なくとも大統領令署名で実績を積み上げたかったに違いありません。
大統領令署名を受け、太陽光発電所の株価は6日に上昇。サンパワー・コープは2.7%高の18.88ドル、エンフェーズ・エナジーは5.4%高の206.97ドル、サンランは5.9%高の28.37ドルでそれぞれ取引を終えました。逆に、太陽光パネル製造メーカーのファースト・ソーラーは3.9%安で引け。太陽光発電が安価な太陽光パネルの生産増加で凍結していたプロジェクト再開と発電量の拡大が期待された一方で、太陽光パネル製造メーカーは輸入業者との厳しい競争にさらされるため、明暗が分かれました。
東南アジア4カ国への関税免除は、バイデン政権が重視する気候変動対策を実現すべく米国内製造業支援を犠牲にしたように見えます。バイデン政権はここに配慮したのか、DPAを発動。太陽光パネルを始め、クリーンエネルギー関連機器の国内での生産促進を目指します。
太陽光パネル関連への関税は免除されたものの、2年後の2024年の大統領選のタイミングで期限切れを迎えます。米司法省の判断次第では関税発動が取り沙汰されますが、バイデン政権の対応は支持率動向や世論が命運を分けることとなりそうです。
余談ながら、今回の動きは対中追加関税をめぐるバイデン政権の行動を読み解く上で重要かもしれません。バイデン政権は敢えてOver promise under deliverという手段を講じる傾向があるだけに、撤廃や緩和ではなく、上院が対中競争法案で盛り込んだ対中関税適用除外の拡大という着地点に持っていくシナリオに留意したいところです。
(カバー写真:National Renewable Energy Lab/Flickr)
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