Traders Bet On End To Fed Rate Hikes After April CPI Data.
米4月消費者物価指数(CPI)は前月比0.4%上昇し、市場予想と一致した。前月の0.1%を超え、9カ月連続で上昇となった。ガソリンが3カ月連続で上昇し伸びを主導したほか、引き続き住宅関連が上昇に寄与。一方で、食品や航空運賃は低下した。
CPIコアは前月比0.4%上昇し、市場予想と前月と一致した。2020年6月以降続く上昇トレンドを保つ。エネルギーと食品以外でもインフレが高止まりしている様子を示したが、航空運賃や宿泊、新車などが伸びを抑え、中古車や自動車保険の加速を打ち消した。なお、21年6月は同0.9%と1982年6月以来の伸びへ加速していた。
FF先物市場は、米4月CPIがほぼ市場予想通りだったほか、CPIの前年同月比が5%割れとなったため据え置きの織り込み度が一時86.9%と、前日の78.8%から上昇。利上げ観測は逆に13.1%と、前日の21.2%から低下した。
チャート:5月FOMCの利上げ織り込み度、やはり0.25%利上げか
6月13~14日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を含め7月FOMCまでの据え置きを経て、9月の利下げ転換、11月と12月を含め年内3回(0.75%)の利下げの見方に傾く。
チャート:引き続き、年内3回の利下げを織り込む
CPIの内訳を前月比でみると、原油価格がOPECプラスのサプライズ追加減産を受けて4月に85ドル台を回復した影響で、エネルギー(全体の6.9%を占める、従来は7.3%)が0.6%上昇し、3カ月ぶりにプラスに転じた。ガソリンは3.0%上昇し、4カ月ぶりにプラス反転。エネルギー・サービス(公益)は前月の2.3%低下に続き、1.7%低下し3カ月連続でマイナスだった。天然ガス価格の低迷からガスが4.9%低下と3カ月連続で弱かったほか、電力も0.7%と2カ月連続で低下した。
食品(全体の13.5%を占める、従来は13.4%)は2カ月連続で前月比横ばいだった(詳細は後述)。なお、コロナ禍で経済活動が停止した20年4月は1.4%上昇していた。
CPIコアは市場予想通り前月比0.4%上昇、市場予想と前月と一致した。これまでに続き、主に住宅関連が指数を支えた。
チャート:CPIの費目別寄与、前月比は引き続きガソリンなどエネルギーが押し下げたものの食品とその他が上昇を主導
食品とエネルギー以外を前月比でみると、これまで上昇してきた航空運賃と宿泊がそろってマイナスに転落した。新車も、2021年4月以来のマイナスに転じたほか、医療サービスも弱い。一方で、自動車保険と中古車は再加速。中古車は10カ月ぶりにプラスに転じた。コアCPIを押し上げてきた住宅関連は高止まりも、住宅が前月以下の伸びにとどまったほか帰属家賃が前月と同じ伸びにとどまるなど、家賃が再加速しつつ徐々にピークアウトの兆しがみえてきた。家賃は新規契約分でマイナスが続くなか、通常1~2年契約という事情もあってサンプルに足元の動向は反映されづらかったが、当初の予想通り今年の春以降に減速を確認しそうだ。弱含みが顕著な中古車は、9カ月連続で低下した。エネルギー関連と食品・飲料以外で主要な項目の前月比は、以下の通り。
エネルギー関連と食品・飲料以外で主要な項目の前月比は、以下の通り。
(上昇費目)
・中古車 4.4%上昇し10ヵ月ぶりにプラス反転、前月は2.8%の低下
・自動車保険 1.4%上昇し16カ月連続で上昇、前月は1.2%上昇
・家賃 0.6%上昇しプラス圏を維持、前月は0.5%上昇
・娯楽 0.5%上昇し16カ月連続でプラス、前月は0.1%の上昇
・帰属家賃 0.5%上昇しプラス圏を維持、前月は0.5%上昇
・自動車メンテナンス/修繕 0.5%上昇し12カ月連続で上昇、前月は0.3%
・住宅 0.4%上昇しプラス圏を維持、前月は0.6%上昇
・服飾 0.3%上昇し6カ月連続で上昇、前月は0.3%上昇
・教育サービス 0.1%上昇しプラスのトレンドを維持、前月は0.3%の上昇
(横ばい、低下項目)
・宿泊 3.0%低下し5カ月ぶりにマイナス、前月は2.7%上昇
・航空運賃 2.6%低下し3カ月ぶりにマイナス、前月は4.0%上昇
・新車 0.2%低下し24カ月ぶりにマイナス、前月は0.4%上昇
・医療サービス 0.1%低下し4カ月連続でマイナス、前月は0.5%の低下
CPIは前年同月比4.9%と、市場予想と前月の5.0%を下回り2021年5月以来の5%割れを迎えた。CPIコアは同5.6%と市場予想と前月と一致し、2021年12月以来の低水準を維持した。
チャート:CPIの前年比、費目別の寄与は住宅を軸にその他が大きい
――経済正常化により著しい上昇を遂げた費目の前年同月比を振り返ると、まだら模様でした。航空運賃が前月の17.7%上昇から一気にマイナス0.9%へ急降下し、17カ月ぶりの下落となり、新車(前月:6.1%→5.4%)、経済正常化の恩恵を受けた宿泊(前月:7.3%→3.3%)は前月以下に。しかし、自動車保険(前月:14.5%→14.5%)は加速し、中古車(前月:11.2%下落→6.6%下落)は6.6%の下落と6カ月連続でマイナスだったなかで最も小幅にとどまりました。
チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、新車と中古車は鈍化も他は高止まり
CPIの13.5%を占める食品の前年同月比は、鳥インフルエンザによって急騰した卵が元の価格に戻るなかで、肉類・魚・卵(前月:4.3%→2.8%)を始め、シリアル・パン類(前月:13.6%→12.4%)や食費(前月:8.3%→7.1%)などがそろって鈍化しました。ただし、外食は賃金上昇圧力が高止まりするなか、前月の8.8%→8.6%と小幅鈍化にとどまっています。
チャート:外食以外、鈍化が鮮明に
6.9%を占めるエネルギーは前年同月比で4.9%下落し、2021年1月以降のマイナスに反転した前月に続きマイナス圏を保ちました。ガソリンは同12.2%下落し、前月の17.4%低下から下げ幅を縮めながら、過去5カ月間で4回目のマイナスでした。公益(電力・ガス)も同5.9%の上昇ながら、前月の9.2%を下回り2021年4月以来の水準へ鈍化しました。
チャート:ガソリンと光熱費、食費とそろって減速
アトランタ連銀が発表する粘着CPI(帰属家賃や外食、医療サービスなど、変動の鈍い品目に絞って算出したCPI)は前年同月比6.5%の上昇と、前月の6.6%を下回り5カ月ぶりの水準へ戻しました。しかし、住宅関連が押し上げており、住宅を除けば5.0%と前月の5.3%を下回り、2022年3月以来の低い伸びです。パウエルFRB議長を始めFedは住宅を除くコアサービスに注目するなか、住宅以外はゆるやかなペースながら落ち着きつつあります。足元で高止まりする家賃ですが、ここが鈍化してくれば、粘着CPIも続くことでしょう。
チャート:粘着CPI、住宅を除けば鈍化
チャート:住宅関連のCPIは高止まりも、漸く頭打ちの兆し
物価が高止まりするなか、実質賃金の伸びを押し下げ続けました。4月の実質平均時給は前年同月比0.5%下落、2021年9月のマイナス幅に並んだ。ただし、生産労働者・非管理職は0.3%上昇し、こちらは2021年3月以来のプラスに転じた前月に続き伸びを狭めつつ上昇しました。
チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は縮小
以上の結果を踏まえると、米CPIはゆるやかながら鈍化トレンドに向かいつつあるようにみえます。FOMC参加者のなかで、明確に信用動向に注意を払うシカゴ連銀のグールズビー総裁は、この結果に安堵していることでしょう。なお、バイデン大統領に近い人物は4月、インフレ最優先の姿勢から信用動向を重視する姿勢にシフトしています。
チャート:バイデン政権関係者、4月の主な発言内容
このトーンが続くのか、今後飛び出す発言が待たれます。
(カバー写真:Michael Coghlan/Flickr)
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