Private Payrolls Surge But Job Openings Decline To Almost 2-year Low.
米6月ADP全国雇用者数は前月比49.7万人増と、市場予想の22.0万人増を上回りました。前月の26.7万人増(27.8万人増から下方修正)を超え、2022年2月以来の高水準。2021年2月以降の増加トレンドも当然、維持しています。
チャート:米6月ADP全国雇用者数、30万件近い数字を2カ月連続で叩き出す
その他の労働指標を拾っていきましょう。
▽米6月チャレンジャー人員削減予定数は年初来で最小、年初来の採用予定数は2016年以来の低水準
米6月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で25.2%増の4万709人と、14ヵ月連続の増加した。しかし前月比では49.1%減と、年初来で3回目の減少で、年初来で最小だった。
チャート:米5月人員削減予定数は、高水準が続く
チャート:過去4年間と比較すると、コロナ禍での2020年を除いた場合で最多トレンドをたどったものの今回は改善
年初来の人員削減予定数は前年同期比でほぼ3.4倍増の45万8,209人だった。上半期としては、2020年以来、3年ぶりの高水準となる。コロナ禍の2020年を除けば、2009年以来の高水準だった。
チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社のアンドリュー・チャレンジャー・シニア・バイス・プレジデントは、結果を受け「人員削減予定数の減少は夏場としては珍しいことではない。実際、6月は過去を振り返っても減少する傾向がある」と振り返った。また、テクノロジー部門での人員削減予定数が2022年9月以来の水準へ減少した一方で、サービス部門で増加した点につき「景気減速に備えたコスト削減と考えられよう」と分析。同時に「高金利と高インフレによるFedの利上げが、深刻な雇用悪化につながらない可能性がある」とも付け加えた。
チャレンジャー」と振り返った。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。6月はゴールドマン・サックスやKPMG、ロビンフッド、オラクル、ウーバー、フォードEVメーカーのニコラ、タイソン・フーズなど幅広い業種で人員削減計画が発表された。前月は1位がテクノロジー、2位が自動車、3位が小売、4位がサービス、5位がメディアだった。
1位 自動車 1万198人、前年同月は595人
2位 娯楽/レジャー 3,704人、前年同月は296人
3位 不動産 3,445人、前年同月は153人
4位 サービス 2,784人、前年同月は4,941人
5位 金融 2,012人、前年同月は2,831人
年初来では、以下の通り。前月も同様だった。
1位 テクノロジー 14万1,516人、前年同月は5,769人
2位 小売 4万8,212人、前年同月は5,896人
3位 金融 3万9,768人、前年同月は10,800人
4位 ヘルスケア 3万8,279人、前年同月は1万9,390人
5位 サービス 3万1,820人、前年同月は1万2,081人
採用予定者数は前年同月比86.8%減の1万3,629人と6カ月連続で減少、ただし、前月比では単月では少なくとも2019年以来で最小なった5月から72.8%増加した。
チャート:採用予定者数、過去4年間と比較しても極めて低い
1~6月期の採用予定者数は前年同期比83.9%減の11万5,462人で、2016年以来で最低となる。
セクター別では、単月で以下の通り。前月は1位がエネルギー、2位が不動産、3位がテクノロジー、4位が電化製品、5位が建設だった。
1位 資本財 2,792人
2位 テクノロジー 2,500人
3位 建設 1,742人
4位 エネルギー 900人
4位 金融 900人
▽米5月求人数は前月比で減少、求人数/失業者数は2021年10月以来の低水準
米5月雇用動態調査によると、求人数は982万人と市場予想の994万人を下回った。前月の1,010万人に届かず、2021年4月以降で3月に次ぎ、2番目の低水準に。求人数は25ヵ月連続で失業者数を上回りつつ、その差は2021年9月以来で最小だった。
チャート:求人数は4カ月ぶりに増加し、1,000万人の大台も回復
求人数が前月比で増加した一方で失業者が減少した結果、求人数は失業者の1.79倍と2021年11月以来の低水準だった前月の1.67倍(修正値)を上回りました。
チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者数の1.79倍と3カ月ぶりの水準戻す
採用者数は前月比1.6%増の620.8万人と、2カ月連続で増加しました。2022年3月の利上げ開始以降、前月比では14カ月間で5回目のプラスとなります。
離職者数は587.1万人と前月比3.7%増と、過去6カ月間で2回目の増加となりました。ただし、定年や自己都合による自発的離職者数が同6.8%増の401.5万人と3カ月ぶりに増加し全体を押し上げている。逆に、解雇者数は同2.2%減の155.1万人と、7カ月ぶりの水準へ減少していた。なお、自発的な離職者数は、自動車大手GMが今年から年間10億ドルのコスト削減を目指し、早期退職制度を通じ全世界で定額給従業員5,000人を削減する方針を発表したように、”自主退職制度”を通じた離職であれば解雇者ではなく自発的離職者数にカウントされる場合があります。
チャート:離職者数、解雇者数は大幅減がリードしマイナスに
▽米新規失業保険申請件数は増加、2019年平均超えは19週連続
7月1日週までの米新規失業保険申請件数は24.8万件と、市場予想の24.5万件と小幅に上回った。前週の23.6万件(23.9万件から上方修正)を超え、19週連続で2019年平均の21.8万件を上回った。
6月24日週までの継続受給者数は172.0万人と、前週の173.3万人(174.2万人から下方修正)を下回り、約4ヵ月ぶりの低水準だった。
チャート:米新規失業保険申請件数は減少も20万件超えを維持、継続受給者数は21年12月以来の高水準
――その他、米6月ISM非製造業景況指数は53.3と4ヵ月ぶりの水準へ上昇したほか、注目の雇用は分岐点割れから53.1へ上向き、2021年12月以来の高水準となりました。米6月ADP全国雇用者数が示すように、健全な労働市場を示唆します。
しかし、オンライン求人広告大手インディードのリアルタイム求人動向は、2021年5月以来の水準に低下していました。
チャート:インディードのリアルタイム求人広告動向、2021年7月以来のレベルで停滞
肝心の米6月雇用統計・非農業部門就労者数の市場予想は22.5万人増で、2022年1月からのデータで比較すると、米ADP全国雇用者数との誤差マイナス4万人程度ですからこれを上回る期待があります。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が指摘したように、NFPは過大評価されている可能性があるだけに、米金融市場が好結果を素直に受け止めるかは不透明。ドル・インデックスの反応をみても、米6月ADP全国雇用者数など一連の力強い米労働指標には米10年債利回りが約4ヵ月ぶりに4%台、米2年債利回りが5%を超え約16年ぶりの水準へ上昇した割りに、限定的な点も気掛かりです。米6月雇用統計・NFPが好結果でも、米6月ISM製造業景況指数が8カ月連続で分岐点を割り込んだだけでなく、2020年5月以来の水準に落ち込んだだけに、利上げによる景気減速への懸念を強めるシナリオも意識しておくべきでしょう。
(カバー写真:Mecklenburg County/Flickr)
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