Unemployment Rate Rise For Blacks Women And Grad School Graduates In June.
米6月雇用統計は、こちらで紹介しましたように、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を上回った一方で、労働参加率につれ失業率が上昇し、労働市場の減速を示唆しました。平均時給は前年比で市場予想以下となり、賃上げ圧力の鈍化トレンドが再開。労働市場は、調整色を強めたと言えるでしょう。
NFPに視点を戻し業種別の動向をみると、裁量的支出動向を示す娯楽・宿泊は0.7万人増と2カ月連続で増加しつつ、2023年平均の4.7万人増を下回りました。そこに含まれる食品サービスに至っては3.1万人減と、4月に続き再びマイナスに反転。2023年平均の2.6万人増より弱い結果となっています。一方で、政府は2023年平均で5.9万人増だったところ、6月は前月比7.0万人増と、NFPの約3分の1を占め、増加を押し上げる結果となりました。
チャート:娯楽・宿泊と食品サービス、政府の雇用の伸び
筆者がもうひとつ、注目する業種が専門サービスに含まれる派遣です。派遣は、労働市場の先行指標とされ、景気後退前に減少トレンドをたどる傾向があります。6月の結果を見ると、前月比4.8万人減と2022年4月以降のマイナストレンドを維持。ただ、マイナス基調をたどりながらも景気後退に陥っていないのは、ウーバーのドライバーを含め個人事業主の増加が一因と考えられます。
チャート:派遣、今年1月を除き2022年4月以降のマイナストレンドを維持
そのほか、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通り。
〇平均時給
平均時給は前月比0.3%上昇の30.05ド ル(約5,600円)と、市場予想と一致しつつ、前月の0.4%を下回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持。前年同月比は3.9%、市場予想と一致しつつも前月の4.1%以下となり、2021年6月以来の4%割れ。生産労働者・非管理職の前年同月比も4.2%と、2021年5月以来の低い伸びだった前月の4.1%を上回った。
業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.3%以上だったのは13業種中で11業種で、前月の速報値ベースの6業種を上回った。今回の1位は金融で前月比0.8%増だったほか、鉱業・伐採、情報、金融サービス、製造業、卸売、小売、輸送・倉庫などが並んだ。一方でその他サービスは雇用増に合わせ賃金の伸びが鈍化、公益は0.9%減と押し下げた。
チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額
チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立ち、財部門はそろって強い伸びとなった半面、サービス業はNFPで増加を主導したヘルスケアを含む教育・健康を中心に平均時給の前年比3.9%以下が優勢となった。
〇労働参加率
労働参加率は62.5%と3ヵ月ぶりの水準へ低下。働き盛りの男性(25~54歳)をみると,全米の結果に合わせ白人を含め全て上昇した(ただし、白人は季節調整前の数字)。
・25~54歳 89.2%、前月は89.1%、2023年9月は89.6%と2019年3月の水準と一致
・25~54歳(白人) 90.0%と3ヵ月ぶりの低水準、前月は90.1%、2023年10月は90.5%と2020年2月(90.6%)以来の高水準
・25~34歳 89.2%、前月は88.9%と2023年1月以来の89%割れ、2023年7月は90.0%と2012年10月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.1%と4カ月ぶりの低水準、前月は90.7%、4月は91.0%と2019年3月以来の高水準
チャート:働き盛りの男性の労働参加率
働き盛りの女性はそろって低下した。
・25~54歳 77.9%、前月は78.1%と1997年のデータ公表以来で最高
・25~34歳 78.2%、前月は78.3%、2022年8月は78.8%と1997年のデータ公表以来で最高
65歳以上の高齢者の労働参加率は、男性が上昇も女性は低下した。
・男性 23.1%、前月は23.0%、2022年10月は24.3%と2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.9%、前月は16.2%、2月は16.3%と2020年2月以来の高水準
チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率
労働参加率を16~19歳、20~24歳、55歳以上で分けてみると、20~24歳のみ上昇した。16~19歳は低下、55歳以上は前月と横ばいだった。
・16~19歳 37.4%、前月は38.1%、3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 71.0%、前月は70.8%と7カ月ぶりの低水準、1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.2%と前月と変わらず、2021年2月以来の低水準
チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率
〇縁辺労働者
縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が3カ月ぶりに低下するなか、前月比8.4%増の523.4万人と3カ月連続ぶりに減少。男性が同7.9%増の285.0万人と3ヵ月ぶりに増加し、女性も同9.0%減の238.4万人と2カ月連続で減少。結果、2カ月連続で男性が女性を上回った。
チャート:職を望む非労働力人口
〇男女別の労働参加率と失業率
男女別の労働参加率はまちまち。男性は前月の67.8%→68.1%と7ヵ月ぶりの水準へ上昇した。女性は逆に前月の57.6%→57.3%と2カ月連続で低下した結果、年初来で最低だった。4月は2020年2月(58.0%)水準に迫っていた。
チャート:男女別の労働参加率
男女の失業率もまちまち。男性は労働参加率が上昇したものの、2021年10月以来の高水準を記録した前月の4.2%→4.1%へ低下した。女性は逆に労働参加率が低下したにもかかわらず、3.7%→4.0%へ上昇し、2021年11月以来の高水準だった。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。
チャート:男女別の失業率
〇人種・男女別の就業者、20年2月比
人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、女性で失業率が上昇したように、黒人女性はマイナスに転落したほか、ヒスパニック系女性は伸びを縮小、白人女性は下げ幅を拡大した。逆に黒人ヒスパニック系男性は上げ幅を拡大、白人男性は下げ幅を縮小した。ただ、全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。
チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較
人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。
チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い
〇人種別の労働参加率、失業率
人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。
人種別の労働参加率は、まちまち。白人とアジア系は前月横ばい、ヒスパニック系は上昇だったが、黒人は4カ月連続で低下した。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。
・白人 62.2%と前月と変わらず2023年3月以来の低水準、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 62.7%と2023年8月以来の低水準(4カ月連続で低下)、前月は62.9%、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.5%と2020年2月(67.8%)以来の高水準、前月は67.3%
・アジア系 65.3%と前月と変わらず、なお2023年9月は65.7%と2012年12月の高水準に並ぶ、2020年2月は64.5%
・全米 62.6%、前月は62.5%、なお2023年11月は2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ
チャート:人種別の労働参加率
人種・男性別の労働参加率は、白人とヒスパニック系で上昇も、黒人で低下した。
・白人 69.7%、前月は69.6%と2021年3月以来の低水準、2020年3月は71.0%
・黒人 68.2%と8カ月ぶりの低水準、前月は68.3%、なお2023年3月は70.2%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.9%と2022年6月(80.1%)以来の高水準に並ぶ、前月は79.8%、2020年2月は80.3%
チャート:人種・男性別の労働参加率
人種・女性別の労働参加率は白人とヒスパニック系で上昇、黒人のみ横ばいだった。
・白人 58.0%と2020年2月以来の高水準(58.3%)、前月は57.8%
・黒人 62.9%と3ヵ月連続で横ばい、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 61.6%、前月は61.2%、4月は61.8%と2023年9月(61.9%)に次ぎ2020年2月以来の高水準(62.2%)が迫る
チャート:人種・女性別の労働参加率
人種別の失業率はまちまち。白人は労働参加率につれ失業率も横ばい、黒人は労働参加率が低下も失業率が上昇、ヒスパニック系は労働参加率が上昇も失業率は低下、アジア系は労働参加率が横ばいも失業率は急伸した。
・白人 3.5%と3ヵ月連続で横ばい、年初来で最高を維持、 なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 6.3%、前月は6.1%、2023年4月は4.7%と過去最低
・ヒスパニック系 4.9%、前月は5.0%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 4.1%と2021年10月以来の高水準、前月は3.1%、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.1%と2021年11月以来の高水準、前月は4.1% なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:人種別の失業率
人種・男女別の失業率は、まちまち。全ての人種の女性で失業率は上昇(労働参加率は白人女性とヒスパニック系女性が上昇、黒人女性は横ばい)した。特に黒人女性とヒスパニック系女性は1%ptの急伸となった。一方で、白人男性は労働参加率が横ばいながら、上昇。黒人男性は労働参加率が低下するなかで失業率は低下、ヒスパニック系男性は老鶯上昇も失業率は低下した。なお、黒人女性とヒスパニック系男女は季節調整前の数字となる。
・白人男性 3.2%、前月は3.1%、なお2022年12月は2.8%と2020年2月以来の低水準
・白人女性 3.1%、前月は3.0%と4カ月ぶりの低水準、なお2023年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 6.1%、前月は6.4%2022年2月以来の高水準、なお2023年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 6.1%と2022年8月以来の高水準、前月は5.1%、なお2023年4月は3.8%と過去最低
・ヒスパニック系男性 3.8%と9カ月ぶりの低水準、前月は4.3%、なお2022年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 4.7%、前月は3.7%と7カ月ぶりの低水準、なお2023年5月は3.1%と過去最低
チャート:人種・男女別の失業率
白人と黒人の失業率格差は2カ月連続で拡大。白人の失業率が3カ月連続で横ばいだった一方で、黒人が2カ月連続で上昇したため、失業率格差は前月のと2022年8月以来の水準へ拡大した前月の2.6%ptから2.8%ptへ拡大した2019年平均と一致した。
チャート:白人と黒人の失業率格差
〇学歴別の労働参加率、失業率
学歴別の労働参加率はまちまち。中卒と高卒は上昇、大卒以上は3ヵ月連続で横ばいだった。
・中卒 47.0%と4カ月ぶりの水準を回復、前月は46.0%2023年1月以来の低水準、なお2023年11月は48.3%と2023年2月と並び過去最高
・高卒 57.0%と3ヵ月ぶりの水準を回復、前月は56.8%、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・大卒以上 72.8%と3ヵ月連続で横ばいで2023年10月以来の水準に並ぶ、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.6%、前月は62.5%、なお2023年11月は2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ
学歴別の失業率もまちまち。労働参加率の上昇した中卒の失業率は横ばいも、高卒は低下。労働参加率が3カ月連続で横ばいだった大卒は上昇し、特に大学院卒は0.7%ptと急伸した。米6月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)のセクター別動向で、専門サービスの雇用が減少していた結果と合致する。
・中卒以下 5.9%と2カ月連続で横ばい、なお2022年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.2%、前月は4.3%と4カ月ぶりの水準へ上昇、なお2023年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・大卒 2.4%と2021年10月以来の高水準、前月は2.1%、なお2022年9月は1.8%と2007年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.6%と2023年8月以来の高水準、前月は1.9%と2月の水準に並ぶ、なお2021年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.1%と2021年11月以来の高水準、前月は4.0% なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準
チャート:学歴別の失業率
チャート:大卒以上は労働参加率が3カ月連続で横ばいながら、大学院卒を中心に失業率が上昇
--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。
①NFPの増加の業種別では、夏休みを控え裁量的支出と関連の深い娯楽・宿泊が減速、そこに含まれる食品サービスは減少に反転。また、政府の雇用の伸びア大きく、NFPの伸びの約3割に。
②平均時給は前月比で市場予想以下も、13業種別では全米平均を上回ったのは11業種で、前月の速報値ベースの6業種を上回る
③働き盛りとされる25~54歳の労働参加率、男性では白人含め全て上昇も、女性は低下。
④男女別の労働参加率は男性で上昇も女性は低下、逆に失業率は前月に2021年10月以来の高水準だった男性が低下も、女性は上昇。
⑤人種別での失業率は、まちまち。ただ、労働参加率が2カ月連続で低下したにもかかわらず、民主党の支持基盤である黒人は失業率が2カ月連続で上昇した。ヒスパニック系は労働参加率が上昇も失業率は低下しており、移民の多いヒスパニック層で黒人の職が奪われている可能性を示唆する。白人は労働参加率が2カ月連続で横ばいのなか、失業率は3カ月連続で変わらなかった。
⑥学歴別では、労働参加率が横ばいだったにもかかわらず、大卒と大学院卒で失業率が上昇。特に大学院卒は卒業に合わせ、失業率が前月から0.7%ptも急伸した。
ーー失業率は黒人、女性、大学院卒の間で上昇しました。米大統領選を控え、これはバイデン陣営にバッドニュースと言えるでしょう。彼らといえば、民主党の重要な支持基盤ですから。
失業率と言えば、前月に夏休みや大学の卒業シーズンに合わせ、夏場は失業率が上昇する傾向にあると指摘しました。実際、6月の米失業率は4.1%と、2021年11月以来の水準へ上昇。9月17~18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに公表される7~8月の米雇用統計で失業率の上昇が受け継がれれば、9月利下げの扉を開けるのでしょう。
また、前回指摘したように8月後半にはNFPの年次基準改定の暫定値が発表される予定です。2023年8月は、2023年3月までの1年間で30.6万人の下方修正となりました。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のニック・ティミラオス記者は、7月FOMCで9月の利下げ開始について本格的な協議に入るのではと指摘しています。
本当にそうなるのかは、7月9日に米上院銀行委員会で予定する半期に一度のパウエルFRB議長による議会証言です。欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムでは、①過去2カ月間でディスインフレの道筋に近付いた、②インフレ2%の道筋への確信が強まれば利下げ、③労働市場は力強いが、予想外に弱まれば利下げーーと発言していました。ただ、労働市場については1年先に「足元の水準±2%」と、6月FOMCのドットチャートに沿った発言にとどまっています。11日に米6月消費者物価指数(CPI)を予定することも、留意しておきたい。9月FOMCまで、米雇用統計と米CPIはあと2回確認できますが、8月のジャクソン・ホール会合までは雇用統計はあと1回、米CPIはあと2回とあって、これらの数字次第で、バックワード・ルッキングのFedの政策姿勢が変わってもおかしくありません。
(カバー写真:Rawpixel Ltd/Flickr)
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