米3月雇用統計、堅調な数字の影に”不都合な真実”

by • April 5, 2026 • Latest News, NY TipsComments Off on 米3月雇用統計、堅調な数字の影に”不都合な真実”1788

March Jobs Report: A Strong Headline Conceals an Inconvenient Truth.

米3月雇用統計は、こちらで紹介しましたようにNFPと失業率が市場予想より強かったものの、全体的には軟調な労働市場が見え隠れする結果となりました。

ここでは簡易版ながら性別や人種、学歴などではどうなったのかを取り上げます。詳細は、以下の通り。

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、そろって低下男性は前月の67.2%→67.0%と2020年5月以来の低水準となった。女性は前月の57.2%→57.1%と6カ月ぶりの低水準だった。

チャート:男女別の労働参加率

男女の失業率は、労働参加率につれて共に低下。男性は前月の4.4%→4.2%。女性も前月の4.5%→4.3%となった。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男女別の失業率

〇人種別・男女別の労働参加率と失業率

古いデータとなりますが、人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

人種別の動向を確認する前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、民族であって人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、白人が横ばいとなった以外は全て低下。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。

・白人 61.2%と前月に続き20年5月以来の低水準、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 62.7%、前月は63.0%、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 67.4%、前月は67.3%、24年8月は67.8%と2020年2月の水準に並ぶ
・アジア系 65.4%、前月は65.8%と7カ月ぶりの低水準、2020年2月は64.5%
・全米 61.9%と21年11月以来の低水準、前月は62.0%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

チャート:人種別の労働参加率

人種別の失業率は労働参加率につれ、全て低下した。

・白人 3.6%と8カ月ぶりの低水準、前月は3.7%、なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 7.1%と8カ月ぶりの低水準、前月は7.7%、23年4月は4.8%と過去最低
・ヒスパニック系 4.8%と8カ月ぶりの低水準、前月は5.2%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.7%と3カ月ぶりの低水準、前月は4.8%、なお2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.3%、前月は4.4%、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率

白人と黒人の失業率格差は3.5ptと前月の4.0ptを下回った。しかし、2019年平均の2.8ptを上回る水準を保つ。

チャート:白人と黒人の失業率格差、2019年超えを保つ

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、大卒のみ上昇した。

・中卒 46.7%、前月は46.8%、25年7月は49.0%と1992年のデータ公表開始以来で最高
・高卒 56.3%と23年8月以来の低水準、前月は56.5%、なお23年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・短大卒 61.8%、前月は61.9%、1月は61.3%と過去最低、2020年2月は64.8%
・大卒以上 71.5%、前月は71.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低、なお23年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 61.9%と21年11月以来の低水準、前月は62.0%、なお23年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

学歴別の失業率は労働参加率の低下にかかわらず中卒、労働参加率が過去最低だった短大卒で上昇した。

・中卒以下 5.9%と3カ月ぶりの水準へ上昇、前月は5.3%、なお22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.7%、前月は4.8%、なお23年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・短大卒 3.6%、前月は3.5%、23年11月は2.8%と19年12月以来の低水準
・大卒 2.8%、前月は3.0%と21年7月以来の高水準、なお22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.7%、前月は2.8%、なお21年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.3%、前月は4.4%、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:学歴別の失業率

チャート:大卒以上の労働参加率が過去最低水準でも、失業率は大幅低下ならず

2024年の米大統領選でトランプ氏が勝利した理由は、不法入国者を含めた移民の急増だった。米議会予算局やサンフランシスコ連銀など、多くが移民の急増をめぐる影響を分析するように、コロナ禍後の足元の米労働市場にも大きな変化をもたらした。しかし、足元はトランプ政権の不法移民取り締まり強化に伴い、コロナ禍後の移民流入の増加分が巻き戻されつつある。そこで、海外生まれ(不法移民を含む)と米国生まれの雇用動向を確認してみた。

労働力人口(以下、全て季節調整前の数字)のうち、米国生まれは79.5万人減と減少に転じ、逆に海外生まれは69.0万人増と増加し、明暗が分かれた

チャート:米労働力人口(季節調整前)、米国生まれと海外生まれの比較

労働参加率も、まちまち。米国生まれは労働力人口が減少した結果、前月の61.0%→60.7%と21年2月以来の低水準だった。海外生まれは労働力人口が増加したため、前月の66.3%→67.2%と24年9月以来の水準へ改善した。これらは季節調整前の数字となる。季節調整済みの数字である全米の労働参加率が61.9%へ低下した背景は、米国生まれと考えられよう。なお、海外生まれは通常、就労ビザを取得して入国した者が多いほか、家族に生活支援で頼れない事情もあり、労働参加率で米国生まれを上回る傾向が強い。

チャート:労働参加率、米国生まれと海外生まれの違い

就業率も、まちまち。米国生まれは前月の58.1%で変わらず。海外生まれは前月の63.2%→64.3%と24年9月以来の高水準だった。なお、全米の就業率は59.7%、21年12月以来の低水準に並ぶ前月の59.6%を上回った。

チャート:米国生まれと海外生まれの就業率

全米の失業率は4.3%と、前月の4.4%から低下した。米国生まれの失業率は労働参加率につれ前月の4.7%→4.3%に低下した。海外生まれは労働参加率が上昇したにもかかわらず、前月の4.7%→4.3%に改善した。いずれも、季節調整前の数字である。

チャート:米国生まれと海外生まれ、失業率の比較

--以上の結果を踏まえれば、トランプ政権にとって”不都合な真実”が浮かび上がります。NFPは事業所調査であり、失業率や労働参加率を算出する家計調査とは区別すべきですが、足元の雇用改善を支えた主因が「米国生まれ」ではなく「移民」だったと考えるのが自然です。

さらに、男性や大卒以上の労働参加率の低下は、高所得の採用環境の厳しさが現れているかのようです。

パウエルFRB議長は3月30日、「様子見が可能な良い位置」、「金融引き締めの効果が経済に表れる頃には、原油価格ショックはおそらくもう消えている。その時点で利上げの重荷だけが残り、景気を不必要に押し下げることになる。だから、供給ショックは基本的に“やり過ごす”のが通常の対応だ」と発言しました。
FOMCで副議長を務めるNY連銀総裁も「インフレ率は2.75%まで上昇した後、来​年にはFedが目標とする2%に戻​る」と、インフレ警戒を示さず。米国によるイラン攻撃後に原油高が進んだものの、FOMCの3月SEPは2026年のPCEを2.7%、2027年を2.2%と見込み、従来の見通しを大きく変えていません。

こうしたFedの姿勢は、労働市場の一段の減速を警戒している可能性を示唆します。

(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)

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