FOMC Statement, No News Is Good News.
米連邦公開市場委員会(FOMC)、20日に公表された3月声明文は楽ちんでした・・・だって、ほとんど修正ナシだったんですもの!声明文の翻訳やら変更点のポイントを仕上げるのに、かなり時間を短縮できました。
ざっくり変更点は、以下の通り。声明文はこちら。
【景況認識】
前回:「経済活動は概して天候要因とその他の一時的要因により、足元数ヵ月で伸びを小休止した」
↓
今回:「経済活動は「2012年終盤に停止した後で、緩やかな成長軌道へ戻した」
※米2012年10-12月期速報値こそハリケーン「サンディ」の影響で0.1%のマイナス成長ながら、改定値で0.1%のプラスへ修正された。かつ足元の米経済指標をみると1-3月期には消費や在庫投資、住宅投資、企業の設備投資などを背景に2%超となる公算が大きい。
前回:「雇用は緩やかなペースで拡大しているが、」
↓
今回:「雇用情勢はここ数ヵ月の間に改善の兆しをみせているが、」
※米2月雇用統計・非農業部門就労者数が23.6万人と足元4ヵ月間で3回にわたり20万人台を維持したほか、失業率も労働参加率の低下が一因とはいえ7.7%と2008年12月以来の水準まで低下したことに対応。
前回:「住宅市場はさらなる改善を示した」
↓
今回:「住宅市場はさらに強まりをみせるものの、財政政策がいく分、より抑制的となっている」
※米1月新築住宅販売件数が2008年7月以来の高水準を達成したほか、米2月住宅着工件数も増加し住宅市場の改善ペースは加速の兆しをみせる一方、給与税増税、強制歳出削減の始動、今後の暫定予算の攻防などを通じた財政引き締めによる景気下押し効果を懸念。
【統治目標の遵守について】
前回:「世界の金融市場はいく分、緊張が緩和したが」
↓
今回:「なし」
※緊迫するキプロス情勢に配慮し、FOMCは見極めスタンスを示唆。
キプロスは週明け火曜まで銀行が休業状態で、カオスは続きます。
【追加緩和策について】
毎月850億ドルの米国債および住宅ローン担保証券の買取継続を表明。
【政策金利について】
2012年12月に導入した数値目標、すなわち「1-2年先のインフレ率の見通しが2.5%以下、失業率が6.5%以上」の水準を続ける限り「異例な低金利」政策を維持するとあらためて説明。そのほかの労働市場、インフレ動向および見通し、金融市場の動向と照らし合わせ、金融緩和の解除の判断材料とする。
【票決結果】
今回:地区連銀の投票メンバーは2013年、セントルイス連銀のブラード総裁、シカゴ連銀のエバンス総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁、カンザスシティ連銀のウィリアムズ総裁。反対票は、前年のリッチモンド連銀のラッカー総裁に代わり同じくタカ派で知られるカンザスシティ連銀のウィリアムズ総裁で、長期的な緩和政策に反対票を投じた。
経済見通しをみてみましょう。
FF金利見通しでは、2013年の利上げを予想するメンバーが2人から1人へ減少し2014年にシフトした程度で、前回通り13人が2015年を挙げていました。経済見通しは、成長見通しのレンジ上限が2013、14年と下方修正したほか、失業率を改善方向へ修正しています。ただし調整の域を出ておらず全般的に中央値は2012年12月から横ばいで、中央値はそろって据え置いてました。経済見通しのリンクは、こちら。
●FF金利の引き上げ予想
2013年末までの引き上げ→1人(前回2人)
2014年末までの引き上げ→4人(前回3人)
2015年末までの引き上げ→13人(前回13人)
2016年末までの引き上げ→1人(前回1人)
※ FOMCメンバーは投票権のない地区連銀メンバーを含め19名
●FF金利の水準予想
▽3月時点
2013年)1.0%→1人、0.25%→18人
2014年)2.75%→1人、1.75%→1人、1.5%→2人、0.5%→1人、0.25%→14人
2015年)4.5%→1人、3.75%→1人、3.0%→1人、2.0%→1人、1.25%→4人、1.0%→1人、0.75%→1人、0.5%→7人、0.25%→1人
長期的予想)4.5%→3人、4.25%→3人、4.0%→9人、3.75%→1人、3.5%→2人、3.0%→1人
▽12年12月時点
2013年)1.0%→1人、0.50%→1人、0.25%→17人
2014年)2.75%→1人、1.75%→1人、1.5%→2人、0.5%→1人、0.25%→14人
2015年)4.5%→1人、3.75%→1人、3.5%→1人、2.5%→1人、2.0%→1人、1.25%→2人、1.0%→3人、0.75%→3人、0.5%→5人、0.25%→1人
長期的予想)4.5%→3人、4.25%→6人、4.0%→5人、3.75%→2人、3.5%→2人、3.0%→1人
●成長率 長期的成長見通しは2.3-2.5%(前回2.3-2.5%)
2013年 2.3-2.8%(12月時点2.3-3.0%)
2014年 2.9-3.4%(12月時点3.0-3.5%)
2015年 2.9-3.7%(12月時点3.0-3.7%)
●失業率 長期的失業率見通しは前回通り5.2-6.0%(前回5.2-6.0%)
2013年 7.3-7.5%(12月時点7.4-7.7%)
2014年 6.7-7.0%(12月時点6.8-7.3%)
2015年 6.0-6.5%(12月時点6.0-6.6%)
●インフレ(PCE) 長期的見通し2.0%(前回は2.0%)
2013年 1.3-1.7%(12月時点1.3-2.0%)
2014年 1.5-2.0%(12月時点1.5-2.0%)
2015年 1.7-2.0%(12月時点1.7-2.0%)
●コアインフレ(食品・エネルギーを除くPCE)
2013年 1.5-1.6%(12月時点1.6-1.9%)
2014年 1.7-2.0%(12月時点1.6-22015年 1.8-2.1%(12月時点1.8-2.0%)
2015年 1.8-2.1%(12月時点1.8-2.0%)
以上の内容を踏まえダウ平均、毎月850億ドルの資産買入継続を織り込んで見事にザラ場での最高値を更新しました!成長見通しも下方修正気味なんで、ハト派寄りの内容で小躍りした感があります。
声明文を受けて、エコノミストの反応はどうだったのでしょうか。
バークレイズ・キャピタルのマイケル・ゲイピン米エコノミストは、以下のようにまとめてました。
「今回の大きな変更点として、『財政がいく分、より抑制的』との文言が挿入された点が挙げられる。3月1日から始動した強制歳出削減に対し、対応したといえよう。文言として追加したように、FOMCメンバーは経済見通しに財政引き締めの影響を反映させたようで、2013年成長見通しは従来の『2.3-3.0%』から『2.3-2.8%』とレンジ上限を、2014年分も小幅に引き下げた。失業率も見通しを改善させたが、これは政策変更のシグナルではなく0.2%ポイントも大幅低下した2月の結果を受けての調整だろう。当方は、FOMCが年末まで現状通り資産買入を継続するとの予想を据え置く。」
モルガン・スタンレーのヴィンセント・ラインハート米国担当主席エコノミストは、声明文の「財政がより財政政策がいく分、より抑制的となっている」という文言に基づき、「バーナンキFRB議長が記者会見でCBOの数字を引き合いに出し、成長率が財政引き締めを通じ1.5%下押しすると指摘していた」ことをポイントに挙げております。
FOMCの成長見通しは、これまでのトレンドに沿い下方修正をし続けておりましたし・・。
2人のエコノミスト諸氏の見解を紐解くと、変更の少ない声明文でもいかにハト派寄りだったか理解していただけるでしょうか。2014年1月末に任期を終えるバーナンキさん、歴史に名を残すこと間違いないだけに、自身のレガシー作りもあって政策の舵取りには慎重にならざるをえないような気がするのは、私だけでしょうか。2010年と2011年に出口政策入りに失敗してますしね・・。
ハト派寄りとはいえ、いつか出口政策へマーケットを導かなければなりません。バーナンキFRB議長がこれまで行ってきたコミュニケーション改革に基づき、資産買入の規模縮小・終了への指針を出して来るんでしょう。失業率では労働参加率の低下による下押し圧力があるので、労働市場の改善にこだわるなら雇用統計の非農業部門との絡め手か持ち込むかもしれませんね。
Comments
NYCハーフ・マラソン完走☆初体験は氷点下でした・・ Next Post:
ジャパン・ウィーク、駅弁パワーでお昼から人だかり~