たまには、マジメなお話をしましょう。
私がいつもウィークリーで紹介するデータのうちのひとつに、米国の投信フローと呼ぶものがあります。こちら、米国の国際投資信託委員会(ICI)が2週遅れで発表する、セクター別の投信フローですな。ここでは株式(米株・海外株)、ハイブリッド、債券(課税債、非課税債)に分かれて詳細が報告されています。
実はここで、非課税債の債券フローが14週売り越しでした。つまり、課税対象となっていない地方債、手っ取り早く言えば州債が売りに売られてるんです。
なぜか。
日本の皆様もすでにご存知でしょう。カリフォルニア州で非常事態宣言が発表されたように、米州では財政危機が火を噴いているからです。究極の例が、現在ウィスコンシン州。スコット・ウォーカー州知事は共和党出身ということもあり、赤字削減に乗り出したんですよ。
↓日本でも話題になっていることでしょう。
州職員の集団交渉権を制限する法案が提出されたためです。結果、州職員のを中心とした大反対し公立の学校は、閉鎖が相次いでいるといいます。WSJ紙日本語版によると、
「警察や消防を除く17万人の州政府労働組合員は、賃金値上げ交渉はできるものの、医療保険や年金にに関する集団交渉の権利を失うことになる。また、これまでほとんどなかった職員の年金負担を給与の5.8%に設定し、医療保険料に至っては、現行の払い込み率の2倍以上である給与の12.6%にまで引き上げられることになる。
法案が成立すれば、6月30日に終了する会計年度の予算だけでも、支出を3000万ドルを軽減し、さらに2年越しの次回予算では3億ドルを節約することができるという。さらに、ウォーカー知事は、これにより、5500人の州政府職員と5000人の自治体職員を解雇しないですむとしている。」
背景には、民間と比較した州職員の福利厚生に掛かるコストが問題となっているんですけど・・。ウィスコンシン州の教員をはじめとする職員は猛然と抗議。1万人以上がデモに参加しているそうな。法案の成立には少なくとも民主党議員が20名出席しなければいけないそうですが、左派が多い民主党員なだけに14名がボイコットして、事態の収拾がつかない有様となっております。
NYにとっても、他人事ではありません。
ブルームバーグ市長が提示した来年度予算案656億ドルでは、NY市の教員7万8000人のうち、6166人を削減する案が盛り込まれているのです。当然ながらNY市教職組合のUnited Federation of Teachersは拳を振り上げ、TVコマーシャルで反対を訴えています(よくそんなお金があるなー)。
2013年度に赤字が49億ドルにうずたかく積み上がり、2014年度も48億ドルと高止まりする状況では、コスト削減に大鉈を振るう必要があったからです。ちなみに年金コストは68億ドル、83億ドルと年々増加し、2015年には86億ドルに及ぶんですって。米州政府は、どこもかしこも、年金を中心とした福利厚生負担に喘いでいるわけです。
↓ブルームバーグさん、年末の豪雪から困難に直面しっぱなし。最近飛ばしたジョークは、アイルランド系を嘲笑したと非難を浴びる有様。
NY市予算案は6月30日までに成立しなければいけないのですが・・・どうなることでしょうか。またつなぎ融資のごとき暫定予算でお茶を濁す必要が出てくるのでしょうかね。
NY市場では17日頃からポルトガルの救済4月説が流れていますが、米国の州政府も相当、危険な状態なんですな。米州が2010年春のギリシャ化を進むのでしょうか。それともエジプトの道を歩むのでしょうか。ギリシャのごとく救済主が登場する希望は低く、エジプトのように市民の叫びが州政策に届くとは思えませんが。
財政赤字問題に関して、余談ですが。
共和党の知事、オバマ大統領の政策に大きく反旗を振りかざしてるんです。詳細は以下の通り。
1)フロリダ州のスコット州知事
→オバマ政策の一貫である高速鉄道の敷設に絡み、連邦政府資金の受け入れを拒否。理由は州民への追加負担で30億ドルと言われる。フロリダ州のほか、オハイオ州、ウィスコンシン州に続いて、受け取り拒否は3州目。JR東海が入札していたことでも、記憶に新しい。
2)アリゾナ州のブリューワー知事
→医療保険改革(オバマケア)の抗議か、低所得者向け医療保険メディケイドの予算を削減。2.5万人の給付金が削除される見通し。
3)サウスカロライナ州のハーリー州知事
→オバマケアでの同州の施行を拒否。ジョージア州やアイダホ州も追随する可能性。
4)ニュージャージー州のクリスティー州知事(2012年大統領選挙の候補との噂も)
→高速インターネット、高速鉄道の敷設を「アメ」政策と糾弾、予算削減に向けた努力を表明。
財政赤字に合わせ、米下院に続き州政府の政策も真っ赤に塗り替えられそうですな。
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