いやな予感はしてたんですよ。5日のダウ平均はプラス引けしたものの、S&Pが引け後に格下げに踏み切るとの噂が流れてたんです。そしたら、ホントにやってくれましたね。
個人的に心配なことは、もちろん格下げに伴う金利の上昇。当然ながら住宅ローン金利、自動車ローン金利、クレジットカード金利・・・などなどに跳ね返ってくるわけですよ。すでに米4-6月期の個人消費が市場予想の同+0.8%を大きく下回る同+0.1%となり、GDPの伸びを押し下げておりましたよね?ソフトパッチと思ったら、ハードパンチでした・・ってことになりかねません。
↓ガイトナー米財務長官、格下げ後のインタビューは終始仏頂面。
私の知り合いも
「住宅を購入しようと考えてたんだけど、これじゃ金利がどうなるか皆目見当がつかないから、買うに買えなくなったよ」--エンジニア、38歳
「金利が上振れするかもしれないってのに、クレジットカードの債務を抱えてられないね。負債が1万ドルくらいの残ってるから、早く返済しなきゃ」--マーケティング、34歳
などとの感想を洩らしてました。
住宅の観点から言うと、すでに不穏な兆候が表面化しつつあります。
米6月中古住宅販売成約件数指数は前月比+2.4%となり、市場予想の同-2.0%を上回りました。2ヵ月連続で、予想外の強さをみせたわけです。
しかし、欧州系金融機関のエコノミストいわく
「MBA住宅ローン申請件数指数が低下した一方で、中古住宅販売成約件数指数が上昇した背景には、キャッシュで住宅を購入する向きが増えたことを示す。キャッシュで住宅を購入する場合は値下げ幅が大きくなることが慣例。住宅ローンを伴う指標、米連邦住宅金融局(FHFA)住宅価格指数が上昇したものの、コアロジック住宅価格指数(コアロジック社が集計・発表している住宅価格指数で、全米すべてを網羅しており、ケース・シラー指数よりも範囲が広い)の現金購入分は低下していた。従って投資用として富裕層が住宅を購入していることが、足元の改善を牽引しているとみられ、健全な住宅市場に回復とは言えない」
投資物件として購入する富裕層まで住宅買取を控えれば、経済不透明感と相俟って住宅指標は再び下振れするリスクが出て参ります。
↓もう2度と、こんな風景見たくありませんよ・・。
そして個人消費。
米6月消費信用残高は、前月比+155.32億ドル(年率7.7%増)の2兆4322億ドルとなり、2007年8月以来の高水準を示現しました。自動車や教育などのローンを指す非回転信用が同+103億ドル(年率7.6%増)の1兆6478億ドルと、11ヵ月連続で増加しただけではありません。クレジット・カードなどの信用を示す回転信用も、同+52億ドル(年率7.9%増)の7983億ドル。リーマン・ショック前の2008年8月以降、2010年12月と前月と合わせ3回目の増加を示したわけです。
クレジット・カードでの消費がすべてとは言いません。しかし個人の消費に活力が戻り始めた矢先にS&Pの格下げでは、再び消費を冷やしかねません。おまけにガイトナーさんが
「Tax hikes back on the table」
と先週打ち明けたように、増税リスクが浮上しております。2012年のブッシュ減税終了を、税収拡大に向けた共和党とのバーター取引にしようというわけですが・・。
実はS&Pが格下げを決定したと時を同じくして、アメリカの郵便局USPSが4-6月期(第3四半期)決算で31億ドルの赤字を報告するとともに、デフォルトのリスクがあることを明らかにしちゃいました。法制的な変化なしには、9月の支払いまでに55億ドルを工面できないんだそうな。個人や企業がオンラインでの支払いに依存するようになり、郵便出荷量が減少を続けていることが一因です。営業時間を前年比で3.1%削減したり、オフィスを閉鎖しコスト削減に務めておりますが、焼け石に水の状態。
↓ドイツ・ポストはEブリーフという新商品で巻き返しを図る一方、USPSはコスト削減が命。
さらに失業率の悪化で失業保険の支給も継続しなければならないとあっては、米政府も増税に踏み切らざるを得ないでしょう。増税にでもなったら・・・個人消費の圧迫が懸念されます。
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