Arnault Keeps The French Label .
LVMHのアルノー最高経営責任者(CEO)は、ベルギー市民権申請を取り下げました。
ことの発端は、2012年秋。同年5月に発足したオランド政権が、公約通り時限措置として財政健全化の名の下に年収100万ユーロ(約1億3000万円)以上の富裕者層向け所得税率を従来の41%から75%へ引き上げると発表したんです。
真っ先に歯向かったのは、誰あろうフランス長者番付トップのLVMHのアルノー最高経営責任者(CEO)。はい、2013年版フォーブス誌・億万長者ランキングでも、290億ドル(3.8兆円)で10位に輝いた方です。ちなみに2012年は4位で410億ドル(5.3兆円、為替レートは2013年4月11日時点で計算)でしたっけ。富裕層をないがしろにした政策に激昂したアルノーさん、大衆ウケを狙いの増税が施行される前に、ベルギー市民権申請という必殺技に打って出ました。
世界10本の指に入る億万長者が税金逃れを画策したことから、フランス庶民は猛反発!ベルギー側も、歓迎する様子はみせていなかったようです。ベルギーのド・モルガン紙は2012年12月20日、アルノーCEOの市民権獲得は困難と報道。ベルギーで市民権を獲得するには滞在日数が3年以上必要であるにも関わらず、アルノーさんはこれを満たしていないと説明してました。
フランス10-12月期失業率(本土ベース、ILO基準)が10.2%と1999年以来で最悪を記録するなか、左派色の強い国民の間では抗議の嵐が吹き荒れたことは、言うまでもありません。左派寄りの仏リベラシオン紙なんて、見出しで「消えちまえ、この金持ち野郎!」と罵る始末でした。
罵倒されたアルノーCEO、紙面を持つ手は震えていたのかしら。
ちなみに、オランド政権の政策に憤慨した著名人は、アルノーCEOだけではありません。映画「ライフ・オブ・パイ」のシェフ役で登場したジェラール・ドパルデューも楯突き、フランス国民を破棄する意思を表明。捨てる紙あれば拾う紙ありで、誰あろうロシアのプーチン大統領がジェラール氏を歓迎し、今年1月には大統領の公式ウェブサイトで大々的に発表されたんですよね。ロシアはフランスやベルギーなどのように累進化税制を取っておらず、一律所得税が13%であることが背景にあったのでしょう。
ジェラール・ドパルデュー、プーチン大統領とは旧知の仲との話も。
フランス国内に存在する100万ユーロ以上のお金持ちから少なくとも巨頭2人が国外脱出を目論むなか、まもなく意外なところから援軍が飛び出しました。オランド政権の政策につき、憲法評議会が2012年12月29日に「違憲」との判断を下したんです。ミリオンを節目に所得税引き上げをねらうフランス版「バフェット・ルール」は、これでいったんお蔵入りとなりました。
あれから4ヵ月。アルノーCEOはベルギー市民権を取得を取り下げました。10日付けル・モンド紙とのインタビューにて、アルノーさんは世論の反応につき「過小評価していた」と吐露。一連の決定が税金逃れではなく、あくまでも業務上の理由とも釈明してました。さらにはは、フランス国籍を捨てるつもりはなく、あくまでもベルギー市民権を追加的に取得する方針だったと説明。フランスに対し「愛着があり未来を信じている」とも強調しました。でも・・・とき既に遅し、ですよねぇ。
「バフェット・ルール」を提案した世界第4位の億万長者であるウォーレン・バフェット氏とは、品格の違いを感じさせます。欧州から誕生した「ノブレス・オブリージュ(位高ければ、徳高きを要す)」という言葉は、時代遅れになりつつあるのかもしれません。
オランド政権は、フランス版「バフェット・ルール」の導入をあきらめていません。憲法評議会の決定の裏をかき、3月からは「企業、団体から75%相当の税率を徴収する」秘策で、2年間の時限施行を目指します。2014年の億万長者番付では、アルノーさんのランキングはどうなるんでしょ?
Comments
FOMC議事録がタカ派寄りでも、ブルはうなりを上げ最高値を更新 Next Post:
ニューヨーク・タイムズ紙が組んだ「居酒屋特集」、熱燗並みにホット!