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「ジャンゴ、繋がれざる者」、古き佳き時代の闇をえぐる意欲作

by • May 27, 2013 • GossipComments (0)2503

Django Unchained,The Good, The Bad, And The Graphic.

週末は、映画三昧の週となりました。今さらながらのオスカー対決!!

正統派の歴史大作「リンカーン」とオリジナル・マカロニ・ウェスタン「ジャンゴ、繋がれざる者(Django Unchained)」。奴隷制時代を背景にした映画2本、「リンカーン」は12部門もノミネートされたにも関わらず、受賞はダニエル・デイ=ルイスが前人未到の3度目となる主演男優賞を獲得したほか、美術賞の2部門のみ。反対に「ジャンゴ、繋がれざる者」はわずか4部門のところ、クリストフ・ヴァルツが2回目となる助演男優賞、クェンティン・タランティーノが脚本賞をさらっていきました。

予想通りとはいえ、並み居る強豪を振り切っての受賞です。
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何がこんな違いを生んだのでしょうか?

「ジャンゴ、繋がれざる者」、奇想天外なストーリー展開はタランティーノ監督らしさ全開!一方で、歴史的背景とマッチしない点が多々見受けられたんですよ。

レオナルド・ディカプリオが演じる残忍極まりないプランテーション領主のカルヴィン・キャンディ、奴隷をテディ・ベアにたとえてましたが、テディ・ベアの起源となるセオドア・ルーズベルト元大統領の就任は1901年でした。また、キャンディ邸でおごそかに弾くハープから奏でられた音楽はご存知「エリーゼのために」。しかし「エリーゼのために」は、映画の舞台1858-1859年の当時は未公開で陽の目をみるまで1865年まで待たねばならなかったんです。ダイナマイトでの終幕は圧巻でしたが、こちらも1867年に開発されています。そんなミスは映画の一部始終で垣間見れます

それでも、「ジャンゴ」は圧巻でした。タランティーノ監督自身が明かしていたように、これまで西部劇が描き切れなかった奴隷制時代の闇を暴いてあまりある意欲作品でしたよね~。いわゆる白人からみた「古き佳き時代」という言葉に、風穴を開けたといっても過言ではありません。

長い銃身からぶっ放された弾に倒れる人々は、そろいもそろってドロドロの血塊にまみれていきますし、文字通り犬死にする剣闘士なんて吐き気を催すほど。タランティーノ自身、後に「あまりにグロテスクだったんで、カットを余儀なくされた」と振り返るほどでしたから、よっぽどでしょう。前作「イングローリアス・バスターズ」でもドイツ兵の頭の皮を剥ぐなんてシーンがあったことを踏まえると、想像できる~。

「キル・ビル(Kill Bill)」では女性→「イングローリアス・バスターズ(Inglorious Bastards)」ではユダヤ系→今作では奴隷と、復讐モノを軸とする映画では鬼才そのものといったタランティーノ監督。どんなに血みどろで暴力的で残虐なシーンにあふれても、人情とユーモアを忘れない。歴史の一片とともに勧善懲悪劇を爽快に描いてくれる人は、彼しかいません。

KKKの起源であるレギュレーターをカバーするお茶目っぷりが、いかにもタランティーノらしい。本作は奴隷同士の格闘技が「マンディンゴ(Mandingo)」と、1975年の同名の映画だったり、「Django(続、荒野の用心棒)」で本家本元ジャンゴを演じたフランコ・ネロがカメオ出演してたり、エンターテイメント色も濃ゆ~いんです。ブラッド・ピットと共演した「マネーボール(Moneyball)」で日本でもきっとお馴染みになったジョナ・ヒルや、元祖「マイアミ・バイス(Miami Vice)」のドン・ジョンソンなど、脇を固める役が豪華なのもたまりませんね。

メイン・キャストなんて、最高でした。ジャンゴ演じるジェイミー・フォックスの男っぷりがいい!ジャンゴをつれて賞金稼ぎに走るドクター・シュルツがドイツ人というのも、ある意味シャレが効いてましたよね。飄々としたキャラのクリストフ・ヴァルツは実にハマり役でした。クリストフとともに彼を念頭に置いてタランティーノが脚本を仕上げただけあって、領主カルヴィンの執事スティーブン役のサミュエル・L・ジャクソンも、冷酷非情が冴え渡ってまるでナイフのようなキレ具合!(個人的には、アニメBoondocksの黒人嫌いな黒人ソックリで笑えます)。いつの時代でも、被支配者の特例が現体制維持に努めるという事実を浮かび上がらせてますよ。AKB48から博多に引っ越したさしこちゃんも、ある意味そんなイメージ。

レオ様演じるカルヴィンは、タランティーノ監督が自ら口説いただけに今までみたことない怪演に度肝を抜かされます!優雅に足を組んでどんな女性もイチコロになりそうな魅惑の微笑みを振る舞った瞬間に、全身の血が凍りつくような般若の表情に一変する。頭蓋骨をかち割った後にジャンゴの妻ブルームヒルダの顔にあてがった手から流れる血をものともせず、ジャンゴとキング・シュルツを恫喝する姿は、狂気そのもの。レオはこのシーンで、本当に怪我しちゃってたんですよ・・。

画面の向こうの視聴者を喰らうほどの演技に、私の心臓もバクバク・・。
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もちろんアメリカにおける黒人史は奴隷解放を経てもなお壮絶な暗黒の歴史であり、公民権運動前夜の1955年にエメット・ティル少年が白人女性に声をかけただけでリンチ殺害された事件でも、今でもアメリカ人の記憶に残されております。黒人ラッパーのリル・ウェインは5月、フューチャーの曲「Karate Chop」で客演した際に無神経かつ無礼至極にティル少年の名前を用いた問題で、ペプシからCM広告塔を降ろされたばかり。本田創造著「アメリカ港人の歴史」を読めば、今作品にほとばしる鮮血の意味がお分かりいただけるでしょう。

余談ですが、ジェイミー・フォクス演じたジャンゴ、タランティーノ監督は白羽の矢をウィル・スミスに立てていました。しかしウィルは「主役じゃないから」という理由で拒否したんです。クェンティンが彼を思って脚本を描いたという栄誉をあっさり捨てたウィルが選んだ作品は、息子ジェイデンと「幸せの力」以来、再共演となる「アフター・アース(After Earth)」。この人は映画「アリ(Ali)」で懲りたのか、難しい役どころを避けるようになりましたねぇ。あるいは自分の持ち味が十二分に生かせるSFあるいはコメディ映画以外で、実力派俳優と共演したくないのかもしれません。ウィルが出演なくて残念?とんでもない。ジャン・ポール・サルトルが奨励したオープン・リレーションシップを謳歌する一方で仲良し家族を率いるウィルより、未婚でも娘のいるジェイミーだからこそ人間臭さがにじみ出てブラボーでしたよ。

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