250 Bowery, The End Of NYC’s Housing Boom Fantasy.
普段はCNBC以外、あまりテレビを観ない筆者ですが、これだけは毎回欠かしません!
何の番組かと申しますと、「ミリオン・ダラー・リスティング(Million Dollar Listing)」NY版です。
全米で最も高額なNY市の住宅市場を手玉に取る、3人の不動産ブローカーのリアリティ・ショーです。スウェーデン系のキレ者(中央)、アメリカ人の色男(左)、ヒスパニック系の新参者(右)が交差しながら、それぞれの手練手管で100万ドル(1億円)を超える高額物件をさばき、アメリカ人の平均年収を軽く超えるコミッションを稼ぎ上げていくという内容です。
自らのコミッションだけでなく、売り手やディベロッパーの利益のために日夜ストレスと闘いながら働く彼ら。NY市の住宅高騰をけん引する扇動者といっても過言ではありません。
もちろん、高級物件のお値段にはディベロッパーの意向が強く働いているワケですが。
最もバブリーかつ分かりやすい例が、こちら。
250 Bowery(250 ボワリー)といえば、マンハッタンの東側を走る6番線ブリーカー・ストリート駅から徒歩5分にあるコンドミニアム。ソーホーから徒歩10分以内と抜群の立地にあり、南側にはチャイナタウンが広がります。
こちらの物件、くだんのミリオン・ダラー・リスティングに出演するスウェーデン系のブローカーであるフレデリック・エックランド氏が単独でコンド1棟・24戸もの販売仲介権を掌握していたんです。ディベロッパーは、VEエクィティーズのザック・ベラ氏。かつてソーホー、ノリータ、トライベッカなど数々の物件でビジネス関係を築いており、フレデリックはベラ氏が提示する高額な条件をクリアした経歴から、厚い信頼を獲得した上での栄誉となりました。
ときは景気回復に自信を深めつつある2013年冬とあって、立地条件が抜群な同物件にはブローカーから問い合わせが殺到!フレデリックは冬なのに左団扇状態で気を良くしたあまり、ディベロッパーに「順番待ちリストに900人以上名を連ねている」と口を滑らせてしまいました。
ディベロッパーがこの一言を聞き逃さないわけはありません。当初1平方フィート当たり1400ドルだったにも関わらず、一気に30%値上げし1平方フィート当たり2000ドルと法外な値段を吹っ掛けちゃいました!1ベッドルーム(日本でいう1LDK)の場合でいうなら、550平方フィートで77万ドル(7660万円)から110万ドル(1億945万円)へ問答無用で跳ね上げたというワケ。これには天下無敵のブローカーであるフレデリックも止めようとしたのですが、「900人待ち」だなんて耳に心地よい甘い言葉をささやかれては、ディベロッパーは引っ込みません。
2006年7月7日に650万ドル(6億4700万円)で購入されたビルが変貌を遂げ、まさか1ベッドルーム(550平方フィート、51.1平方m、15.68坪)が100万ドル超の高級物件を販売するまでになるとは・・・。3LDKのペントハウスにいたっては2462平方フィート(69.19坪)で、約600万ドル(5億9700万円)以上でしたから、もう暴挙としか言いようがない。
昼間見ると単なるハコにしか見えない250ボワリー、1LDKで1億円超えはさすがに野心的でしょ。
販売開始直後は24戸中、8戸の契約をあっという間に成立させたフレデリック。数日後には、驚愕の事実に直面します。順番待ち900人以上を数えたのも今は昔、値上げに辟易し潜在顧客をもつブローカーがクモの子を散らすように消えていったんです。
さすがに、無理がありました。こちらをご覧下さい。
ある年には10億ドル以上の物件をさばいたフレデリックでも、お手上げ~。
4月S&Pケースシラー住宅価格指数の都市別をみてみましょう。数字は左から順番に4月の前月比、3月の前月比、前年比です。
全米20都市 2.52% 1.39% 12.05%
上位3位
カリフォルニア州サンフランシスコ 4.86% 3.85% 23.95%
ジョージア州アトランタ 3.84% 1.32% 20.81%
カリフォルニア州サンディエゴ 3.72% 2.19% 14.71%
下位2位
NY州ニューヨーク 1.14% -0.44% 3.24%
ミシガン州デトロイト -0.02% 0.62% 19.76%
サブプライム問題という震源地のひとつだったカリフォルニア州の伸び率が著しいことは当然ながら、ニューヨーク市が破産申請したミシガン州デトロイトに次いで弱い伸びだなんて、衝撃的でしょ。前年比でもわずか3.24%ですから、すでにピークアウトした感すら漂います。
特に現状は米国の景気失速だけでなく中国をはじめエマージング国も鈍化がみられる上、量的緩和(QE)縮小の思惑からドル高が進んでしまいました。ブラジルをはじめとした南米はてはロシアまで富裕層でも、急激に値段を挙げられた後では二の足を踏んでもおかしくないのかもしれません。
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