Short Film ‘Tsuru’ Shed Lights On A Tie Between Japanese American Couple And A Supporter.
クラウド・ファンディングで知られるキックスターターに、ショートフィルム「Tsuru(鶴)」制作に向け出資が募られています。NY時間午後11時40分時点で、61人の支持者を得て1万3771ドル集まり、目標額の1万5000ドル(153万7500円)に間もなく届く勢いです。
同映画は、1942年を舞台に日系アメリカ人がテーマ。太平洋戦争勃発とともに財産を没収され次々に収容所送りにされる同胞を目の当たりにし、年老いた池田夫妻は逃亡を企てる。隠れ家はカリフォルニア州の渓谷に打ち捨てられた小屋。若いアメリカ人看護婦の支援を受け病気の夫と看護する妻はひっそりと生活を続けていたものの、池田夫妻を確認できず不審に思ったFBIの追っ手が迫るのだった。
監督を務めるクリス・K・T・ブライト氏は、自身が日系3世でハワイ出身。2013年にニイハウ島事件に関するシナリオを執筆して以来、あらためて太平洋戦争時代に日系アメリカ人が経験した悲劇を映画として残したい念に駆られたといいます。ニイハウ事件とは真珠湾攻撃後、ハワイのニイハウ島に不時着した零戦の操縦士と日系人の交流を発端としたもの。日系人は母国への忠誠心が厚くアメリカの脅威になるとの判断を招き、日系人の強制収容を決定づけました。
日系アメリカ人、強制収容へ向かう当時の風景。
(出所 : .flickeringmyth)
足元で日本が尖閣諸島問題を抱えるだけでなく、韓国および韓国系アメリカ人が竹島問題を叫び日本海を東海にあらためる運動を展開するなかで、今回の企画は筆者の目を引きました。当サイトに接触したブライト氏に質問したところ、ストーリー自体「意見を対立させるかもしれない」と意識しつつ、概して「好意的に受け止められている」と言います。日系アメリカ人への非人道的な仕打ちを認識していないアメリカ人が多いことも、一因だそうです。
アメリカという自由と平等を謳う移民の国を舞台にした、日系アメリカ人強制収容問題。ブライト氏自身の祖父が当時ハワイで経験しただけにアメリカ政府の決断が公正だったのか、映画を通してより多くの人々に疑問を投げかけたい気持ちが溢れたんですね。同時にブライト氏は、日系人を同情し危険を顧みず支援の手を差し伸べたアメリカ人の勇気にも思いを馳せたと言います。
日系人の悲惨な境遇だけでなく手助けしたアメリカ人の存在を描いた作品は、2015年に終戦70周年の節目を迎えることもあって非常に意義深いのではないでしょうか。
主役の池田夫妻には、アカデミー候補作品「マネーボール」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」に出演したタカヨ・フィッシャー氏、「トランスフォーマー」などに参加したケン・タケモト氏が演じます。資金集めに成功し今年6月にも制作を終了させれば、ロサンジェルス・アジア太平洋映画祭をはじめ皆さまもご存知のサンダンス映画祭やカンヌ映画祭に出品する予定です。
2014年は終戦70周年を控え、オスカー女優のアンジェリーナ・ジョリー氏がメガホンを取る「Unbroken(アンブロークン)」がアカデミー賞をねらい年末に公開される予定です。同映画は、太平洋戦争時代に日本軍の捕虜となったベルリン五輪の陸上選手ルイス・ザンペリーニ氏の数奇な生涯を描いた作品。下馬評では日本軍による捕虜への残虐行為を通じ戦争の悲惨さを伝えているようですが、戦争がいかに残酷かは日系アメリカ人強制収容の視点から訴求することも可能でしょう。
(カバー写真 : Kickstarter)
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