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ウクライナ、ロシアが実力行使したワケ

by • March 3, 2014 • Latest NewsComments (0)1439

Ukraine Crisis : Diplomatic Time In Russian Tearoom?

ロシアによるウクライナ軍事介入に、世界中の人々が震撼したことでしょう。

この2人を除けば。

2008年の共和党副大統領候補のサラ・ペイリン元アラスカ州知事は、2008年時点に「ロシアがグルジアに侵攻した例をみれば、オバマ米上院議員(当時)の優柔不断さは次にウクライナへ突き進む口実を与える」と訴えていました。ロシアから約100kmと青函トンネルの2倍に満たない距離のおかげか、ロシアに精通していたのでしょうか。当時は外交専門誌フォーリン・ポリシーが「突飛だ(fa-r fetched)」と評し、散々だったんですよね。

2012年の大統領選では、共和党のミット・ロムニー候補が最終討論会で「間違いなく、ロシアは米国にとって最大の地政学的脅威」と発言し、オバマ米大統領から「冷戦時代を蒸し返すのか」と批判されました。筆者も、この時は軍拡費をどのように捻出するのは不思議に思いましたよ。

図らずも、2回の大統領選で敗北した2人の共和党候補の予想が的中したことになります。プーチン露大統領と緊急電話会談を行ったオバマ米大統領の胸に、何がよぎったのでしょう。声明で「いかなる軍事行動に代償が伴う」と発言していましたが。

なぜロシアは危ない橋を渡ってまで、軍事介入という手段を選んだのでしょう。

カギはやはり、天然ガス。欧州の天然ガス依存度をみると2009年時点で34%でありフィンランド、ブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシにいたっては100%。ロシアの天然ガス経由地で肝心のウクライナは72%で、中東欧諸国の依存度も非常に高い。対して西側でみるとドイツが39%、イタリアは27%、フランスは16%。シェールガス革命を通じ米国からガス輸入が増加すれば、欧州委員会が指摘するように「欧州は恩恵を受ける」ことでしょう。

ロシアの依存度、意外に西側は低いんですね。詳細はこちらでどうぞ。
russia -gas
(出所 : Lithuaniatribune)

ロシアとしては、東欧圏の顧客を失わないようウクライナをユーラシア連合の要とすべき重要性があったことは一目瞭然です。

今後は、どうなるのでしょうか。

天然ガスの重要性もさることながら、ウクライナは「ヨーロッパの穀倉」と呼ばれるだけに、輸出に占める農業品は27.0%。輸出先の1位はロシアで25.7%、2位は僅差で欧州連合(EU)の24.9%です。

イタリアのパスタ、フランスのクロワッサン、ドイツのビールの元となる穀物は欧州にとっても死活問題でウクライナは重要な地位にあるはず。しかしデフレに直面し財政健全化の過程にあるなか、支援額が早急にまとまるとは考えづらい。米国というと中間選挙を前に、オバマ米大統領が思い切った行動に出るかは未知数。シリアでの失敗もあるので、軍事介入をちらつかせる選択肢には慎重になるでしょう。

ウクライナは向こう2年間に350億ドル、早急に40億ドル必要です。ロイターによると欧州は迅速に10億ドルを支払う用意があるといいますが、その後はどうなるか。国際通貨基金(IMF)を通じて支援するにも、西側はウクライナにロシアとの提携関係を断つよう要請するともいわれています。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、オバマ米大統領はエネルギー関連会社、銀行、当局者への金融制裁を検討中ながら、ドイツは制裁に反対で西側自体も一枚岩になれない。内戦と金融市場の混乱は回避するには、6月開催のロシアでの主要8ヵ国(G7)首脳会議での参加見合わせを発表したように、外交しかないのが現状です。

(カバー写真 : AP)

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