8017948927_c32e8c79a6_h (1)

7月FOMC、インフレでタカ派寄りへにじり寄る

by • July 30, 2014 • Finance, Latest NewsComments Off2679

July FOMC : A Baby Step Toward Exit.

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文、マーケットを揺るがすようなことはありませんでした。

とはいえ、物価に対し景況判断を記す第一段落で「インフレは、委員会の長期目標に水準へいく分近づいた」の文言を追加しました。果てには、統治目標の遵守を示す第2段落で、インフレ下方リスクの言及を削除。「インフレが中期的に目標値の2%を下回って推移するリスクはある程度、後退した」との一文へ差し替えています。

BNPパリバのローラ・ロスナー、ブリックリン・ドワイヤー米エコノミスト両名はFOMC後のレポートにて「全体的に、こうした変化は『タカ派寄り』へのシフトと解釈できる」と指摘しています。その上で、「第1弾の利上げ時期は当方の予想2015年7-9月期から同年4-6月期へのリスクが強まったといえる」とまとめていました。

当然、労働市場の質的な改善に課題を残すなかで労働市場には慎重な認識を盛り込んでいます。イエレン・ダッシュボードを参考する証左として「労働市場を示す一連の指標は、大いなる人的資源の活用不足を示す」との文言も加え、失業率にかかる「高止まりしている」へ変更。明らかに、労働市場にハト派トーンをにじませてます。

CNBCは「市場はFedを無視し始めた」といいますが、今だけかも・・。
image001
(出所 : CNBC)

そうはいいながら、二大統治目標への向けた回復の道のりもこれまでの「労働市場は徐々に改善し続けると予想する」という一文に、今回は「インフレ」を付け加えたのは見逃せない。労働市場の改善を認識しているスタンスも打ち出していました。9月のFOMC声明文では10月のQE終了のローラー作戦を本格化するとみられ、7月の議会証言を含めこうした小さな変化の積み重ねが物を言うのではないでしょうか。8月21日のジャクソン・ホール会合は「労働市場のダイナミクスを再評価」がテーマですしね。

セントルイス連銀のプロッサー総裁の反対票も、出口政策へ踏み込んだ第一歩とみてよいのでは。イエレンFRB議長が就任してから全会一致でしたが、9月16−17日開催のFOMCではダラス連銀のフィッシャー総裁も加わるかもしれません。

FOMC声明文の主な変更点とポイント

【景況判断】
前回:「数ヵ月の間に回復した」

今回:「4-6月期に回復した」
※4-6月期国内総生産(GDP)速報値が4.0%増と、1-3月期の2.1%減のマイナス分を打ち消す成長を示した。

前回:「失業率は低下したものの、高止まりしたままだ」

今回:「労働市場の動向は改善し、失業率は一段と低下した」
※6月失業率が6.1%と2008年9月以来の水準へ改善し、6月時点のFOMCメンバーの予想値「6.0-6.1%」の上限に到達していた。

前回:「なし」

今回:「労働市場を示す一連の指標は、大いなる人的資源の活用不足を示す」
※失業率は低下する半面、賃金の伸び率は2%付近から伸び悩むほか労働参加率は1978年以来の水準を維持。6月にはフルタイム労働者が減少し、パートタイム労働者が増加した。

前回:「企業の固定投資は拡大を再開させた。一方で、住宅市場の回復は低水準にとどまった」

今回:「企業の固定投資は拡大した一方で、住宅市場の回復は鈍いままだ」
米4-6月期GDPでは、企業の設備投資を示す機器投資が7.0%増と、前期の1.0%減から改善。

前回:「インフレは委員会の長期目標を下回る水準で推移しているが、」

今回:「インフレは、委員会の長期目標に水準へいく分近づいた」
※米4-6月期コアPCEデフレーターは2.0%と、前期の1.2%を上回り2012年1-3月期以来初めてインフレ目標値を回復。

【統治目標の遵守について】
前回:「労働市場の動向は、委員会が二大統治目標に整合的とみる状態へ徐々に改善し続けると予想する。」

今回:「労働市場の指標とインフレは委員会が二大統治目標に整合的とみる状態へ徐々に改善し続けると予想する。」
※改善がみられるインフレを文言に追加。失業率が改善するものの他の指標は依然として弱含んでいるため、労働市場の動向から労働指標へ表現を変更。

前回:「インフレが中期的に目標値の2%を下回って推移すれば経済活動にリスクを及ぼすと認識する一方、中期的には同水準を回復するインフレ動向の兆候を注視していく。」

今回:「インフレが中期的に目標値の2%を下回って推移するリスクはいく分後退した。」
※米4-6月期コアPCEデフレーターが、インフレ目標値2%を回復したことに対応
【量的緩和策について】
委員会は引き続き米国債、住宅ローン担保証券それぞれ50億ドルずつの減額を決定。

【政策金利について】
インフレ目標値2%を達成した場合でも、労働市場や金融動向などを考慮しながら低金利を長きにわたって維持するとあらためて表明。

【票決結果】
今回は、年初来初めてセントルイス連銀のプロッサー総裁が反対票を投じた。同総裁は、フォワード・ガイダンスにある「長きにわたる低金利」との文言は経済活動の進展にを反映していないとの見地から、反対票を投じたという。

(カバー写真 : Tim Evanson)

Comments

comments

Pin It

Related Posts

Comments are closed.