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米1月雇用動態調査、求人数は14年ぶり高水準でも採用数は減少

by • March 10, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2206

Job Openings Reach A 14-Year High, While The Number Of Hires Decreases.

米労働省が発表した米1月雇用動態調査(JOLTS)は、求人数が前月比3.7%増の499.8万人と市場予想の505.0万人を下回った。ただし前月の487.7万人(502.8万人から下方修正)を超え、2001年1月以来の高水準を遂げている。

新規採用者数は、前月比4.7%減の499.6万人。リセッション入り直前にあたる2007年11月以来の高水準を達成した前月の523.9万人増(514.8万人増から上方修正)から、減少に転じた。米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が改定値で23.9万人増と、2014年12月の32.9万人増を下回っていたことと、整合的だ。

離職者数は前月比1.7%減の482.1万人と、前月の490.1万人(488.6万人から上方修正)から減少に転じた。定年を含む自己都合による退職者が279.9万人と前月の271.5万人を上回ったものの、解雇者数が166.9万人と前月の172.5万人から減少し離職者数を抑えた。

JOLTの求人率をみると、前月の3.4%で変わらず。民間が前月に続き3.7%となっていた。民間のうち製造業、貿易・輸送・公益、娯楽・宿泊が上向いた一方で、建設、専門・ビジネスサービス、教育・健康が低下している。政府は前月の2.2%から2.1%へ下向いた。

就業者に対する新規採用率は、前月の3.7%から3.5%へ低下した。民間が前月の4.1%から3.9%へ下振れし、全体を押し下げている。政府機関も前月の1.5%から、今回は1.4%へ低下した。自発的あるいは引退などを含めた離職率は前月の3.5%から3.4%へ戻した。民間が前月の3.9%から3.8%へ低下した一方、政府は前月の1.4%から1.5%へ上向いた。自発的離職率は2.0%と、3ヵ月ぶりに2008年4月以来の高水準に並ぶ。ただ、2007年12月の2.1%にはあと一歩及ばなかった。解雇率は1.2%と、前月と変わらずとなる。

求人率は変わらずだった一方、新規採用率(青)と離職率(赤)は低下。

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(出所:BLS)

1月までの過去1年間で、離職者数は5600万人、採用人数は5910万人だった。ネット採用者数は、310万人増となる。求人1件当たりの競争倍率は1.8倍へ上昇。2014年12月は1.7倍と、景気後退に突入する直前の2007年11月の水準に低下していた。

——以上、米1月雇用動態調査を受けたイエレン・ダッシュボードをおさらいすると、クリアした項目はこれまでと変わらず。()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字を示します。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004−07年平均 3.0%
現時点 3.4%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点) 2.0%
2004−07年平均 1.4%
現時点 1.2%

3)自発的離職率—×
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004−07年平均 2.1%
現時点 2.0%

4)採用率—×
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004−07年平均 3.8%
現時点 3.5%

5)非農業部門就労者数—○
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004−07年の3ヵ月平均 16.2万人増
現時点の3ヵ月平均 28.8万人増

6)失業率—×
2009年10月(最悪時点) 10%
2004−07年平均 5.0%
現時点 5.5%

7)不完全失業率—×
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004−07平均 8.8%
現時点 11.0%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004−07年平均 19.1%
現時点 31.1%

9)労働参加率—×
2014年9月(最悪時点) 62.7%
2004−07年平均 66.1%
現時点 62.8%

——米1月雇用動態調査は求人件数が2001年1月以来の高水準を遂げ、自発的離職者数も増加しモメンタムの力強さをあらためて確認しました。ただ、新規採用者数の落ち込みが気掛かり。人材派遣会社関係者が「会社側の希望と応募者の能力においてミスマッチが大きい」と指摘するように、ひとつの求人で1年以上も空席となっていることも珍しくないとか。新規採用数は、なかなか求人数の水準に追いついて来ないようです。また米2月チャレンジャー人員削減予定数が2ヵ月連続で大幅増を示した点も、不気味に影を落とします。

前日に米連邦準備制度理事会 (FRB)が発表した2月労働市場情勢指数(LMCI)は 4.0ポイントとなりました。 1月は4.8ポイ ント(速報値4.9ポイントから下方修正)を下回り、足元の水準から上昇ペースに鈍化がみられます。過去12ヵ月分の修正幅マイナス1.1ポイントを合わせ、リセッション後の落ち込み幅は366ポイントと約370ポイントから修正されました。バークレイズのジェシー・ヒューウィッツ米エコノミストは、結果を受け「少なくとも正常な水準に到達するには約9ヵ月を要するだろう」と試算。6月の第1弾利上げを予想するものの、「後ろ倒しとなるリスクが出て来た」との見方を付け加えています。米2月雇用統計を受けマーケットが6月利上げを織り込み始めるなか、3月17−18日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で仮に「(利上げに)忍耐強くなれる」との文言が残れば、米株は急反発を遂げる可能性を示唆します。

(カバー写真:Texas A&M University-Commerce Marketing Communications Photography/Flickr)

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