April FOMC Statement Hints No Hike In June.
4月28−29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文では、大方の予想通り景況判断を全面的に下方修正してきました。ドル高の余波も、一段と強調。成長とインフレ面での下押し圧力を認めています。一方で、景気減速は「一時的要因」との判断も挟み込んできました。
声明文の主な変更点とポイント
【景況判断】
前回:「経済活動の伸びは、いく分緩やかになった」
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今回:「経済活動の伸びは冬期に鈍化し、ある程度は一時的要因を反映した」
※米1−3月期国内総生産(GDP)速報値と1年ぶりの水準へ鈍化したため、景況判断を下方修正。
前回:「労働市場の環境は一段と改善しており、雇用の伸びは力強く失業率は低下した」
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今回:「雇用の伸びは緩やかとなり、失業率は依然として安定的だ」
※米3月雇用統計で非農業部門就労者数(NFP)が2013年12月以来の低水準だったほか、失業率も低下基調を一服させたことに対応。
前回:「一連の労働市場を示す指標は労働資源の活用不足は低減し続けている」
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今回:「一連の労働市場を示す指標は、労働資源の活用不足にほぼ変化がなかったことを表す」
※米2月雇用動態調査ではイエレン・ダッシュボード9項目のうち引き続き3項目しか金融危機以前の水準へ回復しておらず、米3月労働市場情勢指数(LMCI)も失速。
前回:「家計支出は緩やかに拡大しており、エネルギー価格の下落が購買力を押し上げた」
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今回:「家計支出は低下し、実質所得はエネルギー価格の下落を反映し拡大し、消費者センチメントは高水準を維持している」
※米3月小売売上高は増加も、過去3ヵ月分の減少した後では力不足。一方で米4月消費者信頼感指数こそ低下したが、足元は高水準を維持。
消費は春爛漫とはいかず、街のあちこちでセールの看板が見受けられます。
(出所:My Big Apple NY)
前回:「企業支出は拡大」
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今回:「企業の支出は減少」
※米1−3月期GDP速報値では、企業の設備投資や構造物投資が減速。
前回:「輸出の伸びは弱まった」
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今回:「輸出は減少した」
※米1−3月期GDP速報値のうち純輸出の寄与度のマイナス幅が拡大したことに対応。ドル高の悪影響を再確認している。
前回:「インフレは主にエネルギー価格の下落を反映し、Fedの目標値から一段と低下した」
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今回:「インフレは以前からのエネルギー価格の下落やエネルギー以外の輸入品の下落を一部反映し、Fedの目標値を下回ったままだ」
※ドル高による輸入品の下落につき、初めて言及。一方で米3月消費者物価指数で確認したようにインフレの改善も盛り込む。
【統治目標の遵守について】
前回:「委員会は適切な緩和政策の下、経済活動が緩やかに拡大し、労働市場を表す指標は委員会が二大目標に沿うと判断する水準に回帰し続けると予想する」
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今回:「1−3月期に成長と生産、雇用が鈍化したものの、委員会は・・」
※米1−3月期GDP速報値が減速を認めながら、年内利上げ姿勢を変えず。
前回:「委員会は労働市場が一段と改善し、エネルギー価格の下落やその他の一時的要因が減退するに合わせて、インフレが中期的に2%ヘ向かって徐々に上向くと予想する」
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今回:「委員会は労働市場が一段と改善し、エネルギー価格や輸入品価格の下落という一時的要因が減退するに合わせて、インフレが中期的に2%ヘ向かって徐々に上向くと予想する」
※ドル高圧力に配慮し、斜体部分を輸入品価格の下落に差し替え。
【政策金利について】
前回:「委員会は、FF金利誘導目標レンジ引き上げを4月に実施する可能性は低いと判断する。委員会は、労働市場が一段の改善を示し、インフレが中期的に2%の目標にたどり着くと確証を得れば、利上げが適切になると予想している。フォワード・ガイダンスの変更は、委員会が利上げ時期を決定したことを示していない。」
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今回:「(斜体部分を削除)委員会は、労働市場が一段の改善を示し、インフレが中期的に2%の目標にたどり着くと確証を得れば、利上げが適切になると予想している。(斜体部分を削除)。」
※4月も過ぎ文言を変更なしとあって、カレンダーに絡む不必要な文言を削除。
【票決結果】
反対票は1月、3月に続きゼロ。2015年の地区連銀FOMC投票メンバーはアトランタ連銀のロックハート総裁、シカゴ連銀のエバンス総裁、リッチモンド連銀のラッカー総裁、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁となる。2014年は7月以降、9月、10月、12月と4回連続で反対票が投じられていた。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、名物Fed番記者のジョン・ヒルゼンラス氏による”Fedは利上げのタイミングに曖昧な姿勢を維持するも、成長鈍化は一時的と判断(Fed Stays Vague on Rate-Hike Timing, but Sees Slower Growth as Blip)”と題した記事を配信。声明文で「経済見通しと労働市場へのリスクは、ほぼ均衡」との文言を維持しているため、年内利上げスタンスに変更なしとの認識を寄せた。6月利上げの選択肢が消えたとも指摘。利上げ開始には、成長回復ペースを確認する必要があるとの見解を寄せた。
BNPパリバは、結果を受け「利上げはまだ先の話であり、フォワード・ガイダンスに変化を加えるのはまだ早い」と指摘。今回労働市場の文言が下方修正されているため、利上げが近づいた段階で「『労働資源の活用不足が低下した』との文言へ引き上げるなど、タカ派的なトーンを打ち出してくる」と予想した。利上げ開始の時期については、9月で据え置いた。
——米株はハト派寄りの声明文に反応し、ダウ平均の場合で一時156.45ドルに及ぶ下げ幅をほぼ打ち消す場面もみられました。ロイターによると、米短期先物では少なくとも9月まで利上げを開始せず12月の織り込み度が大勢を占める状況。ただ景気回復の明白なサインが出ていないなかで年内利上げの可能性が残ったとあって、一段のハト派寄りを期待した市場関係者の失望を誘ったとみられます。
(カバー写真:Andrew Harrer/Bloomberg)
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