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ウォルマートは為替に泣き、ホーム・デポは住宅市場改善も油断大敵

by • May 19, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2456

Earnings Roundup : Walmart, Home Depot, TJX.

小売大手が発表した決算では、明暗を分けました。ウォルマートは海外での売上が全体の12%ながら為替差損が響いたほか、コスト負担に泣かされています。ホーム・デポは米国内における住宅市場の回復を追い風に、好業績を叩き出しました。とはいえ為替差損や2014年9月に発生したカード情報流出問題が反映されていなかったほか、ドル高の影響を十分に考慮されておらず、上方修正された見通しに疑問が残る。格安百貨店大手TJマックスはドル高の逆風を客足の伸びや利益率の改善で補い、見通し上方修正につなげています。

▽ウォルマート

小売最大手が発表した2−4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比7.0%減の33億4100万ドルだった。希薄後の1株当たり利益は1.03ドルと、市場予想の1.04ドルに及ばず。為替差損により、0.03ドル押し下げられたという。さらに大寒波の影響やアマゾンなどの競争激化もあり、ガソリン価格の下落やイースターなどの恩恵を抑えた。営業利益は8.3%減の56億8000万ドル。ドル高に加え、賃金引き上げ、従業員向けトレーニング費用、電子商取引への投資が重しになったと説明している。同社は2月に従業員の時給を2016年から10ドルへ引き上げる方針を示していた。販売・一般管理費用も2.8%増の226億6300万ドルだった。

会員費用などを含む総売上高は0.1%減の1148億2600万ドルで、市場予想の1162億ドル1000万ドルを下回った。為替差損を33億ドル計上したため、ドル高の影響を除いたベースでは2.7%増の1181億ドルだったという。

売上高、営業利益ともに減少。ドル高や賃上げが業績を圧迫。
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(出所:Walmart)

全体での燃料を除く既存店売上高は1.1%増となり、市場予想の1.5%増に届かなかった。ただし、3期連続で増加している。電子商取引は全世界で17%増で、11−1月期を下回るとはいえ21%増から減速。過去2年間で最も鈍い水準となる。

米国の売上高は3.5%増の702億4500万ドル。既存店売上高は1.1%増となり、前年同期の0.1%減から改善。営業利益は6.8%減の46億3900万ドルだった。

サムズ・クラブの売上高は3.0%減の134億7900万ドル。燃料を除く既存店売上高は0.4%増となり、前年同期の0.5%減から増加に反転。客足は前年同期と同じく0.2%減だったものの、顧客の支出額が前年同期の0.3%減から0.6%増へ改善し売上に寄与している。営業利益は10.9%減の4億2700万ドルだった。

海外の売上高は6.6%減の302億7800万ドル。為替変動を除くベースでは、3.4%増の335億ドルとなる。営業利益は11.0%減の10億7000万ドルだった。

5−7月期は、1株当たり利益を1.06〜1.18ドルを見込み、市場予想の1.17ドルに及ばなかった。従業員のトレーニング費用のほか、為替差損で0.04ドル押し下げられるという。米国での売上に明るい兆しが見られたとはいえコスト負担やドル高を嫌気し、株価は一時4%超も沈んだ。

▽ホーム・デポ

リフォーム関連小売が発表した2−4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比14.5%増の15億8000万ドルだった。特別項目を除く1株当たり利益は1.16ドルで、市場予想の1.15ドルより強い。営業利益は14.1%増の25億9700万ドル。営業費用は、2.3%増の45億8200万ドルだった。

売上高は6.1%増の208億9100万ドルとなり、市場予想の208億1000万ドルを上回った。クレイグ・メニアー最高経営責任者(CEO)は好業績の背景に住宅市場の改善を指摘。そのほか大寒波(雪かき用の商品売上が貢献)、春を迎えたペントアップ・ディマンドの開花、イースター、税還付、ガソリン価格の下落といった好条件も寄与したとみられる。同社は2月、書き入れ時の春先を前に新規で8万人のパートタイム従業員を採用する計画を発表していたものの、コストが業績を上回った格好だ。

雪かき関連グッズが勢揃いし、大寒波の耐性も強い。
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(出所:Home Depot)

既存店売上高は6.1%増と、市場予想の5.5%増を超えた。特に、米国が7.1%増とけん引した。米国内の客足は4.6%増で、平均支出額は1.8%増の58.60ドルとなる。

2015年度(2016年1月末終了)の1株当たり利益は5.24〜5.27ドルを見込み、従来の5.11〜5.17ドルから上方修正した。税務監査の好結果や、自社株買い34億ドル相当を踏まえたもの。売上高は4.2〜4.8%増とし、こちらも従来の3.5〜4.7%増から引き上げた。

2015年度の業績見通しを上方修正したとはいえ、2014年9月に発生したカード情報流出問題をめぐる損失額700万ドルが計上されていない。さらに業績見通しのうち売上高、既存店売上高、1株当たり利益それぞれの下限が現状の為替レートに設定されている点も注目。特に売上高をめぐっては、2014年売上高の831億8000万ドルを元に試算すれば売上高の下限は866億7000万ドル、上限は871億7000万ドルとなる見通し。アナリスト予想は868億7000万ドルであり、中央値に近いとはいえドル高が進んだ場合は同社予想のレンジ下限以下に終わりかねない。株価は見通しを材料に、一時0.7%下落した。

▽TJX

T.J.マックスやマーシャルズなどを抱える格安百貨店が発表した2−4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比4.5%増の4億7460万ドルだった。希薄後の1株当たり利益は0.69ドルとなり、市場予想の0.66ドルより強い。売上高は5.8%増の68億6560万ドルで、市場予想の67億9000万ドルを超えた。為替差損で売上を3%、1株当たり利益を0.02ドル押し下げたものの、キャロル・メイロウィッツ最高経営責任者(CEO)は「前期に続き客足が伸び販売数も増加し、利益率も改善した」ことが好業績につながったと説明している。

既存店売上高は5%増となり、市場予想の3%増および前年同期の1%増を上回った。

米国
・T.J.マックス/マーシャルズ 6.2%増の44億9540万ドル(既存店売上高 3%増>前年同期は0%)
・ホームグッズ 16.3%増の8億8020万ドル(既存店売上高 9%増>前年同期は3%増)

TJXカナダ 1.9%増の6億2020万ドル(既存店売上高 11%増>前年同期は1%減)
TJXヨーロッパ 2.4%減の8億6980万ドル(既存店売上高 5%増>1%増)

2015年度(2016年1月末)の為替変動を除く1株当たり利益は3.21〜3.27ドルを見込み、従来の3.17〜3.25ドルから上方修正。ただし、市場予想の3.29ドルには届いていない。既存店売上高は2〜3%増とし、従来の1〜2%増から引き上げた。5−7月期の1株当たり利益は0.72〜0.74ドルを描きつつ、市場予想の0.78ドルに届かなかった。見通しがアナリスト予想に及ばなかったとはいえ上方修正を好感したほか、ドル高への耐性も意識され一時4%超も上昇した。

おまけに、前日引け後に発表したアーバン・アウトフィッターズをご紹介します。

女性向けカジュアル服飾大手が発表した2−4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比12.5%減の3280万ドルだった。希薄後の1株当たり利益は0.25ドルで、市場予想の0.30ドルより弱い。オンライン向けマーケティング費用を含めた販売・一般管理費が8.2%増の1億9340万ドルとなり、減益につながっている。ファスト・ファッションのH&Mやフォーエバー21などとの競争激化に直面するなか、ディスカウント幅も広げ利益を圧迫した。

売上高は7.7%増の7億3900万ドルとなり、市場予想の7億5820万ドルを下回った。ブランド別の売上高は“アンスロポロジー”が3.8%増の3億1140万ドルで、11四半期ぶりの低水準。“アーバン・アウトフィッターズ”は6.4%増の2億9580万ドル、“フリー・ピープル”は21.4%増の1億3200万ドルだった。

既存店売上高は4%増となり、市場予想の5.3%増に届かず。ブランド別では “フリー・ピープル”が17%増と寄与したものの、“アーバン・アウトフィッターズ”は5%増、“アンスロポロジー”が1%増にとどまった。売上が予想以下に終わり、在庫は14%積み上がったという。なおテッドフォード・マーロウ最高経営責任者(CEO)は、8月末に引退する予定である。株価はコスト拡大や期待外れの売上を受け、一時17%も急落した。

(カバー写真:Mike Mozart/Flickr)

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