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米6月雇用統計、失望を誘う内容でマーケットは年明け利上げを意識

by • July 2, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2199

Traders Betting Fed To Wait Until 2016 For Lift-Off After June Jobs Report.

米6月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比22.3万人増と、市場予想の23.0万人増を下回った。前月の25.4万人増(28.0万人増から下方修正)にも届かず。ただ4−6月期平均は22.1万人増となり、3−5月期平均の18.7万人増および1−3月期の19.5万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が22.3万人増となり市場予想の22.5万人増を超えた。5月の25.0万人増(26.2万人増から下方修正)以下にとどまる。民間サービス業が22.2万人増となり、5月の24.6万人増(25.6万人増から上方修正)に及ばなかった。

(サービスの主な内訳)
・ビジネス・サービス 6.4万人増、増加トレンドを維持<前月は7.4万人増
(そのうち派遣は2.0万人増、4ヵ月連続で増加>前月は1.7万人増 )
・貿易/輸送 4.9万人増、増加トレンドを維持>4.5万人増
(そのうち小売は3.3万人増、6ヵ月連続で増加>前月は2.6万人増 )
・教育/健康 5.0万人増、増加トレンドを維持<前月は5.6万人増
・娯楽/宿泊 2.2万人増、増加トレンドを維持<前月は5.4万人増
(そのうち食品サービスは3.0万人増、3ヵ月連続で増加し過去12ヵ月平均に並ぶ)
・金融 2.0万人増、15ヵ月連続で増加>前月は1.0万人増
・情報 0.7万人増、前月から増加に反転>前月は0.1万人減
・政府 ±0万人<前月は0.4万人増

財生産業は0.1万人増と、5月の0.4万人増を含め3ヵ月連続で増加。2013年12月以来の減少を迎えた3月の2.1万人減から回復をたどる。ただし建設業は横ばいにとどまり、製造業の伸びは5月分から鈍化した。

(財生産業の内訳)
・建設 ±0万人<前月は1.5万人増、2ヵ月連続で増加
・製造業 0.4万人増、2ヵ月連続で増加<前月は0.7万人増
・鋼業 0.4万人減、6ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は800人減)>前月は1.7万人減

6月NFP、前月から鈍化も20万人を維持。
nfp
(出所:BLS、単位は千)

時間当たり平均労働賃金は前月比±0%の24.95ドル(約3120円)となり、市場予想および前月の0.2%に届かず。前年比は2.0%の上昇となり、5月の2.3%以下に終わった。ただし米5月コアPCEデフレーター米5月消費者物価指数コアの前年比をそれぞれ上回る水準を保つ。

週当たりの平均労働時間は4ヵ月連続で、34.5時間だった。製造業の平均労働時間は40.7時間となり、前月の40.8時間から短縮。2014年6月に続き、2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は5.3%で、市場予想の5.4%および前月の5.5%以下に。2008年7月以来の6%割れを維持し、リーマン・ショック以前にあたる2008年5月以来の低水準を続けている。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジ上限に並んだ。マーケットが注目する労働参加率は、62.6%。5月の62.9%から低下し、1977年9月以来の低水準を示現していた。

失業者数は前月比37.5万人減となり、前月の12.5万人減と合わせ2ヵ月連続で減少した。雇用者数は5.6万人減で、約1年ぶりに減少。就業率は約5年ぶりの高水準だった5月の59.4%を経て、59.3%へ鈍化した。 経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は10.5%と、4−5月の10.8%から低下。10ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。平均失業期間は28.1週と、前月の30.7週から短縮。失業期間の中央値は11.3週と前月の11.6週を下回り、少なくとも2009年以来の低水準を示現した。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.3%減の1億2105万人と減少に転じた。逆にパートタイムは0.6%増の2767万人と、増加に転じている。増減数ではフルタイムが34.9万人減少し、パートタイムは16.1万人増加した。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-○
6月は10.5%、4−5月の10.8%から低下し少なくとも2008年9月以来の低水準を維持。不完全失業者数は前月比2.2%減の650.5万人と、減少に転じた。

2)長期失業者 採点-○
失業期間が6ヵ月以上の割合は25.8%と、5月の28.6%と2009年3月以来で最低を更新。平均失業期間は28.1週と、5月の30.7週を下回り2009年10月以来の水準へ短縮した。6ヵ月以上の失業者数は6月に212.1万人と、5月の250.2万人から15.3%減少している。

3)賃金 採点-×
6月は前月比±0%となり、5月の0.2%増以下に。6月の前年同月比も2.0%増と5月の2.3%増を下回りつつ、2012年11月から続く1.9−2.2%のレンジを維持した。ただし生産・非管理職の前年比は1.9%増にとどまり、管理職を含むヘッドライン以下にとどまった。

4)労働参加率 採点-×
6月は62.6%。5月の62.9%および3月の62.7%を下回り1977年9月以来の低水準。非労働人口は9363万人となり、5月の9299万人から0.7%増加し過去最高だった。軍人を除く民間労働人口は前月比0.3%減の1億5704万人となり、3ヵ月ぶりに減少した。

バークレイズのマイケル・ゲイピン米エコノミストは、結果を受けて「労働参加率の低下は(ベビーブーマー世代の引退に伴う)労働人口の変化を表し、参加率が上昇しづらい状況を確認した」と分析。同氏の指摘するように、非労働人口は過去最高を更新しており高齢層が押し上げている可能性を示す。また「家庭調査は変動が大きく統計の歪みを反映しやすい」と注意を促した上で、「労働参加率の低下を含む今回の結果を受けFedが認識を大きく変更させることはない」と予想。利上げ開始見通しを「9月」で据え置きつつ、海外動向や経済指標次第で「利上げを遅らせる場合もありうる」と付け加えた。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番担当のヒルゼンラス記者の署名で「雇用統計、年内利上げの道筋を変更せず(Jobs Report Keeps Fed On Track For 2015 Rate Increase)」との記事を配信。FOMC参加者の間で年内1回あるいは2回の利上げで意見が分かれるところ、足元でギリシャ債務危機や中国株安が発生し金融市場で緊張が走っている。イエレンFRB議長は賃金の上昇が利上げの「必須条件」と発言するなか、賃金あるいはインフレ動向で回復を確認しなければ慎重姿勢を選択する可能性も。以上の観点から、記事ではFOMC参加者が9月FOMCまでの動向を精査してくると伝えた。

CNBCによると、FF先物は米雇用統計の公表直前に12月利上げを57%織り込んでいいたものの、リリース後は49%まで落ち込んだ。米10年債利回りも、米6月雇用統計を受けて一時2.375%と発表前の2.47%から急低下した。

——米6月雇用統計・NFPは巡航速度だったものの、5月分が下方修正されました。Fedが注目する時間当たり賃金も、鈍化。失業率が改善したとはいえ、労働参加率低下の影響が色濃い。全体的に失望を誘う内容で、マーケットはあらためて年明け利上げを織り込み始めました。長期失業者や不完全失業者などで著しい改善を遂げるなか、イエレンFRB議長が議会証言で利上げ開始に向けどのようなヒントを与えるのか注目されます。

(カバー写真:Brennan/Flickr)

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