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ギリシャ議会、国際債権団寄りの財政改革案を可決

by • July 11, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off2378

Greek Parliament Swallows Austerity Pill For Bailout.

ギリシャ議会は現地時間11日未明、チプラス政権が国際債権団に9日夜に提出した120億ユーロ(約1兆6400億円)規模の財政改革案を可決した。一院制で定数300名のところ賛成251、反対32、棄権8の圧倒的多数で通過している。5日の国民投票で国際債権団の財政健全化案への「OXI=ノー」が61.3%に達し、チプラス首相は「民主主義は勝利した」と高らかに宣言。エーゲ海のマリンブルーに純白が映える国旗を手にした市民が街を埋め尽くしたのも束の間、今度はギリシャ議会が国民投票の結果に「OXI」を突きつけたかたちだ。

ホテル・レストランの付加価値税(VAT、消費税に相当)の引き上げに加え、島嶼部の優遇税制の段階的な廃止のほか国有資産の民営化、海運会社向け増税、国防費の削減、そして年金改革を盛り込む。国際債券団の要求を呑んだ財政改革案を引っさげ、チプラス政権は2016年6月末までの3年間で535億ユーロ(約7兆3000億円)に及ぶ資金援助を求める構えだ。バルファキス前財務相の辞任で交渉が円滑に進むとの見方は、正しかったことになる。

あの時の歓喜は、日が沈むように地平線の彼方へ消え行く。
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(出所:LOUISA GOULIAMAKI/AFP/Getty Images via The Blaze

ギリシャの銀行にとっては、破綻へのリスクが一歩後退したと言えよう。フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、資本規制が敷かれ銀行窓口閉鎖も13日までの延長が決定した後も、1日1億ユーロ(約137億円)に及ぶキャッシュが流出する有様。13日までには、資金が枯渇する暗黒のシナリオすら浮かび上がっていた。ロイターは、関係者の話として市場の95%を握るギリシャ国立銀行、ピレウス、ユーロバンク、アルファ・バンクは国際債権団と支援合意した場合でも、国内銀行は100億〜140億ユーロ(約1兆3700億〜1兆1920億円)もの資本増強が必要になると報道。また欧州金融安定メカニズム(ESM)による直接資本注入の可能性を伝え、条件は不明ながら大幅なリストラを余儀なくされるという。

欧州中央銀行(ECB)は資金ショートのリスクがはびこる13日、電話会議でギリシャ向け緊急流動性支援(ELA)をめぐり協議する予定だという。6月28日以降、ELAは890億ユーロの上限で据え置かれたまま。引き上げられたとしても、ヘアカット(担保に適用される割引率)も拡大しておりギリシャの銀行の借入額は以前より縮小する見通しだ。急場をしのぐため、背に腹はかえられない。

ユーロ圏諸国の対応として、ドイツ政府は国際債権団の査定を待つと様子見モード。フランスのオランド大統領は「真剣であり、信用に足る」と評価していた。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長は10日から開始した査定を受け、11日の会合で「大きな決断を下す」と明言済み。11日に合意できれば、12日のユーロ圏首脳会合が不要になる見通しだ。

追記:結局、ユーロ圏首脳会合でギリシャ支援合意に至らず。欧州連合(EU)首脳会合をキャンセルしたものの、ギリシャに財政健全化案の法制化を15日までに実施するよう要請。会合ではドイツ側がギリシャの「一時的なユーロ圏離脱」を声明に盛り込むよう求めるなど、ドイツのタカ派姿勢も鮮明となった。週末の各要人発言などは、こちらをご参照下さい。

(カバー写真:Alkis Konstantinidis/Reuters via The Guardian

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