Wage Growth Accelerates, Booted By Supervisory Workers.
米8月雇用統計は、7月に続き9月利上げ織り込み度を高める内容と判断されました。ダウ平均は一時300ドル近くも急落。S&P500も調整入りを漂う有様です。
非農業部門就労者数(NFP)が5ヵ月ぶりの低水準だったとはいえ、失業率が5.1%と2008年4月以来の低水準だっただけでなく、時間当たり賃金の上昇も9月利上げ観測を強めています。8月は前月比0.3%へ上昇し、前年同月比2.2%と伸びが目立つ。ただ当サイト恒例の非管理職VS管理職の動向をみると、引き続き賃金のけん引役は管理職でした。格差社会の横顔を浮き彫りにさせています。
▽全従業員(管理職を含む)の時間当たり賃金
前月比0.3%増の25.09ドル(約3010円)>6月は±0%
前年比2.2%増>7月は2.1%増
▽生産労働者・非管理職の時間当たり賃金
前月比0.2%増の21.07ドル(約2530円)>7月は0.1%増
前年比は1.9%増>前月は1.8%増
▽全従業員(管理職を含む)の週当たり賃金
前月比0.6%増の868.11ドル(約3120円)>7月は0.5%増
前年比2.5%増>7月は2.4%増
▽生産労働者・非管理職の週当たり賃金
前月比0.2%増の710.06ドル(約8万5200円)>7月は0.1%増
前年比は1.9%増>7月は1.8%増
生産労働者・非管理職の賃金は7月から改善したものの、管理職を含めた全体と比較すると見劣りする状況で変わらず。ゼロヘッジによると、管理職は雇用全体の17.5%に過ぎないだけに消費が起爆剤となって成長率が急加速する気配は見当たりません。
年齢別の失業率動向は、まちまちでした。7月とは反対に若年層で失業率が顕著だったほか、55歳以上も上昇しています。反対に20〜24歳が8.9%と大幅に低下するなど、25〜44歳の間で改善が優勢に。中間管理職が支え賃金が伸びた様子が伺えます。ちょうど子供が生まれる時期とも重なり、米成長のカギは同年齢層が握るといっても過言ではないでしょう。
(出所:BLSを元にMy Big Apple NYが作成、数字は%)
明るいニュースとしてフルタイムが前月に続き雇用が増加し、パートタイムが減少していました。おまけに、不完全失業率も改善。9月利上げ派のJPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、結果を受けて「9月16〜17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利正常化を開始する確率は五分五分で、やや利上げに傾いている」と分析します。Fedがインフレの数字よりインフレ動向を意識するなか、労働市場のたるみこそ測定材料。その一つである失業率は、経済・金利見通しの最新版の2016〜2017年レンジ上限に届いてしまいました。特に失業率が過去3ヵ月で0.4%ポイントも低下したことを踏まえると「12月まで利上げを見送るのは、Fedの信頼を損ねかねない」。ハト派が金融市場のボラティリティに懸念を打ち出すにしても、米8月新車販売台数をはじめ米8月ISM非製造業景況指数など米経済指標への影響は限定的でした。
クレディ・スイスの米経済ディレクター、ジェイ・フェルドマン氏は7月FOMC声明文で追加された「あと一段の改善(some further improvement)」という条件をクリアしたと指摘。経済指標だけで判断するなら「9月利上げもありうる」としつつ、不安定な金融市場や海外動向を着目し「12月利上げ」予想で維持しています。
本日の米株安は、3連休前の利益確定売りという声も聞かれています。問題は、来週も急落を続けるか否か。中国株式市場が抗日70週年記念式典での休場を経てオープンするにあたり、売りが加速すれば米株もつられかねません。Fedが利上げを決断するか否かは、相場の神様ではなく金融市場を担う投資家それぞれに掛かっているようです。
(カバー写真:Frédéric BISSON/Flickr)
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