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米8月雇用統計、NFP鈍化も失業率が低下し9月利上げ観測強まる

by • September 4, 2015 • Finance, Latest NewsComments Off4310

August Jobs Report Leaves Door Open For September Lift-Off.

米8月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比17.3万人増と、市場予想の22.3万人増を下回った。前月の24.5万人増(21.5万人増から上方修正)には届かず。5ヵ月ぶりの低水準。2ヵ月分の修正幅は、4.4万人増だった。6−8月期平均は22.1万人増となり、4−6月期平均の23.1万人増以下ながら1−3月期の19.5万人増を上回った。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が14.0万人増となり市場予想の21.1万人増に及ばなかった。7月の22.4万人増(21.0万人増から上方修正)以下にとどまる。民間サービス業も16.4万人増となり、7月の21.1万人増(19.3万人増から上方修正)を下回った。今回は、全体的に伸びが鈍化しているだけでなく、娯楽と情報が減少に転じている。

(サービスの主な内訳)
・卸売 7.8万人増、増加トレンドを維持>前月は6.4万人増
・輸送/倉庫 7.3万人増、増加トレンドを維持<前月は13.6万人増
・教育/健康 6.2万人増、増加トレンドを維持>前月は5.3万人増
・ビジネス・サービス 3.3万人増、増加トレンドを維持<前月は3.9万人増
(そのうち派遣は1.1万人増>前月は0.9万人減、5ヵ月ぶりに減少 )

・政府 3.3万人増、4ヵ月連続で増加>前月は2.1万人増
・小売は1.1万人増、8ヵ月連続で増加<前月は3.2万人増 )
・金融 1.9万人増、17ヵ月連続で増加<前月は2.1万人増

・娯楽/宿泊 0.4万人減、増加トレンドにブレーキ<前月は1.1万人増
(そのうち食品サービスは2.6万人増で5ヵ月連続で増加、過去12ヵ月平均は3.1万人増)
・情報 0.7万人減、3ヵ月ぶりに減少<前月は0.2万人増

財生産業は2.4万人減と、7月の1.3万人増から減少に反転。6月に続きマイナスに落ち込み、2013年12月以来の減少を迎えた3月(2.0万人減)以来で最大の減少を示す。原油安再燃に伴い鋼業が下押ししたほか、製造業も減少に転じた。

(財生産業の内訳)
・建設 0.3万人増<前月は0.7万人増
・製造業 1.7万人減、4ヵ月ぶりに減少<前月は1.2万人増
・鋼業 1.0万人減、8ヵ月連続で減少(石油・ガス採掘は1100人減)<前月は0.6万人減

8月NFP、5ヵ月ぶりの低水準。
nfp
(出所:BLS、単位は千)

時間当たり平均労働賃金は前月比0.3%上昇の25.09ドル(約3010円)となり、市場予想および前月の0.2%を超えた。前年比は2.2%の上昇となり、7月の2.1%から小幅加速。米7月コアPCEデフレーター、米7月消費者物価指数コアの前年比をそれぞれ上回る水準を保つ。

週当たりの平均労働時間は34.6時間と、前月の34.5時間(34.6時間から下方修正)だった。製造業の平均労働時間は40.8時間となり、前月と変わらず。もっとも、2007年以来の高水準に並んだ2014年11月の41.1時間以下にとどまる。

失業率は5.1%で、市場予想および前月の5.3%から低下した。リーマン・ショック2008年4月以来の低水準を記録している。6月米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2015年末予想のレンジ下限を下回った。マーケットが注目する労働参加率は、6−7月と変わらず62.6%。1977年9月以来の低水準を維持した。

失業者数は前月比23.7万人減となり、前月の3.3万人減と合わせ2ヵ月連続で減少した。雇用者数は14.9万人増で、前月の14.8万人増と合わせ2ヵ月連続で増加している。就業率は59.4%と、約5年ぶりの高水準だった5月に並んだ。6−7月は59.3%。 経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は10.3%と、7月の10.4%から低下。12ヵ月連続で2008年10月以来の12%割れを維持している。平均失業期間は28.3週と、前月の28.1週からやや延びた。失業期間の中央値は12.1週で、少なくとも2009年以来の低水準だった6−7月の11.3週を上回る。

フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億2202万人と2ヵ月連続で増加した。逆にパートタイムは1.3%減の2692万人と、2ヵ月連続で減少。増減数ではフルタイムが43万人増、パートタイムは35万人減。7月はフルタイムが53.6万人増、パートタイムは40.2万人減だった。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点-△
8月は10.3%と、7月の10.4%から低下。6月の10.5%および4−5月の10.8%から低下し少なくとも2008年9月以来の低水準を維持。一方で不完全失業者数は前月比2.5%増の648.3万人と、3ヵ月ぶりに増加に転じた。

2)長期失業者 採点-×
失業期間が6ヵ月以上の割合は27.7%と7月の26.9%を超え、2009年3月以来で最低を更新した6月の25.8%を上回った水準を維持。平均失業期間は28.4週と、7月の28.3週のほか2009年10月以来の水準だった6月の28.1週も上抜けた。6ヵ月以上の失業者数は8月に218.7万人と、7月の218.0万人から若干増え2ヵ月連続で増加した。

3)賃金 採点-○
8月は前月比0.3%上昇し、7月の0.2%を上回った。8月の前年同月比も2.2%増と7月の2.1%増を超えつつ、2012年11月から続く1.9−2.2%のレンジを維持。

4)労働参加率 採点-×
8月は62.6%。6−7月の水準に並び、1977年9月以来の低水準。非労働人口は前月比0.3%増の9403万人で、3ヵ月連続で過去最高だった。軍人を除く民間労働人口は若干減の1億5707万人となる。

キャピタル・エコノミクスは、米8月雇用統計を受けて「9月16−17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表する経済・金利見通しで成長見通しを上方修正し失業率を引き下げる方向につながり、利上げを決断しないのはおかしい」と指摘した。

バークレイズは、結果を受け「過去2ヵ月分の上方修正は主に地方政府、特に教員が3.4万人増だったことが大きい」と分析した。その上で「民間雇用は低調」と判断。金融市場のボラティリティや低インフレ環境もあって、9月利上げの可能性は低いと見込む。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、マネービート欄でFed番担当のヒルゼンラス記者による「Fedにとって、最後まで手に汗握る決断に(This Remains A Cliffhanger Decision For Fed)」と題した記事を配信。米8月雇用統計は失業率が低下したもののNFPが減速し、NFPの年初来平均は21.8万人増に過ぎないと指摘している。8月は上方修正される公算が大きいものの、足元の金融市場のボラティリティやディスインフレ環境もあって9月利上げの可能性は低いと予想した。

ただし、WSJ紙の「世界株式市場、米8月雇用統計を受け下落(Global Stocks Lower After U.S. Jobs Report)」では、FF金利先物動向を踏まえ9月利上げ織り込み度が34%と前日の27%から上昇したと伝えている。米7月雇用統計後は、一時52%まで上昇した。

——ドイツ銀行の分析によると、米8月雇用統計は過去27年間にわたって市場予想以下は21回、誤差は6.1万人で上方修正分より大きいとされています。従って、米9月雇用統計が発表される10月に8月分が大きく引き上げられる可能性が高い。米株相場では、9月利上げへの警戒が再燃。ダウはNY時間午前10時40分までに一時282.20ドル安の16092.56ドルまで下落し、S&P500にも再び調整入りが迫っています。

(カバー写真:Kool Cats Photography over 5 Million Views/Flickr)

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