JP Morgan’s 10 Emerging Market Investment Themes For 2016.
年の瀬が迫り、忘年会シーズンで忙しい頃でしょうか。美酒に酔いしれ、仲間との語らいで和む間に投資に関するお話が飛び出したら、こんなネタで盛り上がってはいかが?題して「JPモルガン版:エマージング市場の投資テーマ10」。ゴールドマン・サックスの米株見通しとともに、お楽しみ下さい。
▽JPモルガンが選ぶ、エマージング市場の投資テーマ10
ブラジルでルーセフ大統領が弾劾裁判に直面し、南アフリカでは歳出削減を推進してきたネネ財務相を更迭後するなど、エマージング市場では次々にニュースが飛び込んでくる状況です。エマージング市場の嵐が吹きすさぶなか、JPモルガンは2016年に向け10の投資テーマをリストアップしていました。CNBCが伝えた気になる内容は、以下をご笑覧下さい。
1)債券のリターン5%以下は継続
米国の利上げ開始、ドル高、商品先物の下落など、エマージング市場は2016年も向かい風にさらされる見通し。エマージング国の国債および社債利回りにつき、JPモルガンは1ー3%での推移を予想、現地通貨建てのリターン見通しは3.7%程度にとどめている。
2)低成長のトンネルは続く
JPモルガンは、2016年のエマージング国成長率予想につき3.7%増と掲げる。2015年の3.4%を上回る見通しながら、低成長は継続へ。商品先物の下落と資本流出が外貨準備高を押し下げるといった暗いニュースが重なるなか、一筋の希望の光として経常黒字はGDP比1.4%となる見通しだ。
3)地域ごとのダイバージェンスは存続
エマージング諸国の資産クラスにおけるリターンは、2016年も地域ごと分かれそうだ。例えばJPモルガンはアジアのエマージング諸国の成長率につき5.8%を予想するものの、2001年以来の低水準となる見通し。欧州・中東・アフリカにおけるエマージング諸国の成長率は2.0%にと、今年の2倍となる公算だ。景気後退に喘ぐブラジルとベネズエラに引きずられ、南米は2015年と比較すれば景気後退に直面するだろう。
4)中国の景気は一段と減速
中国が製造業への依存度を弱めサービスへシフトさせる成長リバランス政策を推進する過程で、JPモルガンは2016年の成長率につき7-9月期の6.9%から6.6%付近への鈍化を見込む。中国の商品先物需要が低下し、エマージング諸国にはダブルパンチとなるだろう。
5)エマージング諸国の一部では、引き締め策が必要に
商品価格が安定すればアジア諸国では通貨安と輸入物価上昇を受け、インフレが上昇しうる。JPモルガンはEMEAとロシアでインフレが1桁へ鈍化するとにらんでおり、南米では成長が物価上昇圧力を抑え込む公算。JPモルガンが2016年に利上げを見込む国は南米の場合メキシコをはじめペルー、チリ、コロンビアを挙げ、アジアでは香港、EMEAではトルコと南アを並べている。一方で利下げはアジア諸国の場合タイとフィリピン、EMEAでハンガリーとポーランド、高金利からの正常化という意味ではロシアも利下げへ舵を切ると予想した。
6)エマージング国発の債務危機発生リスクは小さい
エマージング国全体の政府債務は2015年時点でGDP比48.4%、家計債務も29.5%に過ぎない。JPモルガンは今後も政府債務の伸びが緩やかにとどまるとし、債務危機が発生するリスクは限定的とにらむ。もっとも社債の発行増が不安の種であり、非金融機関の社債は2015年時点でGDP比76.2%だったという。
7)エマージング諸国の債券ファンド、資金流入が期待できず
マネ―・マネージャーが2015年に記録的な資金流出を確認するように、JPモルガンは2016年も流入は見込みづらいと判断する。個人投資家の資金流出に歯止めが掛かってきたものの、機関投資家が2015年7-9月期に自国通貨建てのファンドから大規模な資金流出に踏み切ったような戦略的な動きが継続しうる。
8)下半期に、投資チャンス到来
エマージング諸国の資産クラスは、2016年もボラティリティに悩まされるだろう。特に上半期は米国の利上げ開始に伴うドル高の余波から、債券市場は荒れ模様となりうる。ただJPモルガンはドル高が後退していくとともに、エマージング諸国の債券に投資機会が浮上してくる見通しだ。
9)エマージング国の外貨建て債スプレッドが拡大
2015年にエマージング国で混乱が生じたものの、外貨建て債務は2015年に米株やジャンク債、国債含むその他資産より高パフォーマンスを達成した。2016年になると、投資家はエマージング国の債券保有にあたり低成長をはじめ債務増加、債務不履行リスクを踏まえ高いリスク・プレミアムを求めるだろう。JPモルガンは、エマージング国のハイイールド社債におけるデフォルト発生率を2016年につき3.5%と予想。今年の最低だった2.9%から上昇する見通しだ。米国債とエマージング国債のスプレッドは40bp拡大の425bp、エマージング国の社債も40bp近く広がり450bpを見込む。
10)アジアをアンダーウェイト、EMEAをロング
自国通貨建て債券をめぐり、JPモルガンは欧州中央銀行(ECB)による量的緩和(QE)の増額あるいは買入対象の拡大期待を背景に東欧の債券が上昇する可能性をにらみ、EMEAを「オーバーウェイト」に据える。南米は「中立」だったところ、アジアは「アンダーウェイト」を推奨。社債となれば話は変わり、JPモルガンはEMEAや南米よりアジアを選好した。
アジア諸国をはじめ、経済はどこまで立ち直れるのか。
(出所:Joao Santos/Flickr)
▽GS、2016年米株見通しは慎重
ゴールドマン・サックスは、2016年に米連邦公開市場委員会(FOMC)が4回、四半期ごとに利上げを行うと予想しています。バークレイズ(2016年3月、9月、12月)やモルガン・スタンレー(2016年6月、9月、12月)をはじめとした市場のコンセンサスである3回とは、一線を画しているんですよね。
明るい見通しに立脚しているかと思いきや、GSの2016年米株予想には悲観的なムードが立ち込めています。フォーチュン誌が伝えた気になる内容は、以下の通りです。
・S&P500
→2016年は2100を予想。足元からわずか4%高とあって、バロンズ誌の予想を120pも下回る。配当を含めたリターンは3%と、2015年11月後半時点での1.5%を上回る見通しだ。
・株価収益率、利益
→利上げ開始から6ヵ月間で、株価収益率(PER)は10%低下する公算。利益マージンは過去2年間わたりほぼ横ばいだったが、その流れは比較的好調だったITセクターにも波及すると予想する。S&P500構成銘柄の1株当たり利益自体は前年比10%の上昇を見込むものの、自社株買いなど業績改善以外の効果を反映したものになる。
GSは慎重な見通しを示すものの、フォーチュン誌は米株の下値余地は狭いと指摘する。米株が最後に2年連続で芳しくないリターンに終わったのは2001~02年で、1928年以降で過去2年間に5%以下のパフォーマンスにとどまったケースは5回しかない。しかもほとんどが景気後退期にあたり、GSは2016年のリセッションを予想しておらず、失望的なリターンに終わるリスクは低いというわけだ。米株をはじめ足元で相場は大荒れの状況だが、終わってみれば意外にレンジ内の推移となりうる?
(カバー写真:Eduardo Amorim/Flickr)
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