Job Cuts Decline Despite Energy Sector Layoff Increase.
米2月雇用統計を直前に控え、米2月チャレンジャー人員削減予定数と米新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。
米2月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比21.8%増の6万1,599人だった。2ヵ月連続で増加している。エネルギー産業の人員削減が押し上げており、全体の26.5%と1月の26.8%とほぼ変わらず。2015年12月の7.1%が遠い状況だ。ただ人員削減予定数自体は、2015年7月以来の高水準に至った1月からは18.0%減少した。
人員削減予定数、エネルギーが押し上げつつ他セクターは改善。
(作成:My Big Apple NY)
4大地域別では、前月比ベースにて2地域で減少。1月の1地域から増加した。今回は積雪などに見舞われたが、北東部が44.4%減少の3,239人と2ヵ月連続で減少している。石油生産地の多い南部も、一方で、エネルギー産業が集中する南部が71.1%減の7,300人と1月の2万5,297人から大きく改善した。一方で、IT関連企業が集まる西部は14.8%増の3万7,079人と3ヵ月連続で増加。5ヵ月ぶりの高水準を示す。シェール関連が多い中西部は20.5%増の1万3,891人で、2ヵ月連続で増加した。
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのジョン・チャレンジャー最高経営責任者(CEO)は、結果を受け「原油先物の低迷はエネルギー関連や産業財での雇用の痛手を負わせ、地域経済を押し下げうる」と予想した。ただし「驚くべきことに、これまでのシェールブームの恩恵を受けた地域で失業率は大きく上昇していない」とも指摘。例えばテキサス州ヒューストンでの失業率は2014年12月の4.0%から2015年12月に4.6%へ上昇したものの、シェールガス産地として知られるノースダコタ州では2015年12月に2.7%と2014年12月の3.1%から改善しており「人員削減はエネルギー関連のみ」にとどまっているようだ。
チャレンジャーCEOは、コンピューター関連の人員削減にも注目。同セクターは「回転率が高い」ことで知られ、年初の2ヵ月間で人員削減予定数は1万6,006人と前年比143%増を迎えた。チャレンジャーCEOは「スタートアップ企業が多いだけ、倒産した会社の数がある」と振り返る。 年初来の州別では、原油安を背景に石油生産地を抱えるテキサス州が1月に続きトップに立った。1月と同じく、シェール関連産業が並ぶアーカンソー州やオハイオ州なども入っている。カリフォルニア州は1月こそワースト5圏外だったが、今回は戻ってきた。
1位 テキサス州 5万2,205人
2位 アーカンソー州 3万6,100人
3位 カリフォルニア州 1万100人
4位 オハイオ州 6,672人
5位 アイオワ州 6,560人
年初来で人員削減が多かったセクター、ランキングは以下の通りで%は前年同期比を示す。1位は1月に2位だったエネルギーがトップへ返り咲いた。2位は1月に1位だった小売が陥落している。3位は前月と変わらずコンピューターが入り、4位と5位は前月の通信と製薬から産業財と化学に入れ替わった。2月は油田サービスのハリバートンが5000人、ネットワークストレージ大手ネットアプが従業員の15%、半導体大手ブロードコムが700人、ポータルサイト大手ヤフーが1700人と発表。また。鉄道製造大手ボンバルディアが向こう2年で7000人、中低所得者層向け百貨店シアーズが250人、ダウ・ケミカルも500人以上などの削減計画を明らかにしている。
1位 エネルギー 23.6%増の4万5,154人
2位 小売 47.2%増の2万3,342人
3位 コンピューター 143%増の1万1,003人
4位 産業財 24%増の7,069人
5位 化学 2217%増の6,790人
2月の人員削減数ワースト5は、こちら。
1位 エネルギー 1万6,339人(全体の26.5%)
2位 小売 9,163人(全体の14.8%)
3位 産業財 3,490人(全体の5.7%)
4位 コンピューター 2,850人(全体の4.6%)
5位 政府 2,188人(全体の3.5%)
リストラ実施の理由、2月のランキングは以下の通り。トップは「原油安」で、前月の3位から首位へ戻した。1月まで2ヵ月連続で「再編」だったものの、今回は2位に転落。3位は前月に5位だった「買収・合併(M&A)」が浮上した。3位は「閉鎖」が入り、1月の2位からランクを落とした。4位はコスト削減で、前月の5位からランクを上げている。5位は前月3位だった「閉鎖」となり、「需要低下」が圏外へ押し出された。
1位 原油安 2万4,856人(全体の40.4%)
2位 再編 8,866人(全体の14.4%)
3位 M&A 7,420人(全体の12.0%)
4位 コスト削減 5,189人(全体の8.4%)
5位 閉鎖 4,704人(全体の7.6%)
▽米新規失業保険申請件数、4週平均は3ヵ月ぶりの低水準
米新規失業保険申請件数は2月27日週に27.8万件と、市場予想の27.0万件を上回った。前週の27.2万件を超え、2015年11月21日週以来の低水準だった2月13日週の26.2万件から増加をたどる。1973年11月24日以来の低水準に並んだ2015年10月24日週の25.6万件が、遠ざかった。米労働省は今回、特殊要因を指摘していない。ただし、オクラホマ州のみ推計値である。4週平均は27万250件と、前週の27万2,000件から減少。2015年11月28日週以来の27万件割れを意識した。なお、2015年10月24日週は25万9250件で、1973年12月以来で最低だった。 2月20日週までの継続受給者数は225.7万人と、前週の225.4万人から増加した。2000年11月以来の低水準を記録した2015年10月24日週の214.6万件(修正値)を上回る水準をたどる。被保険者に占める失業者の割合は3週連続で1.7%となり、1971年以来の最低にあたる1.6%を超える水準を保った。
米新規失業保険申請件数、増加したとはいえ低位安定。
(作成:My Big Apple NY)
州別で増加が目立ったのは、マサチューセッツ州で3268人増となりセクター別では輸送をはじめ倉庫、教育が牽引した。ミズーリ州は1012人増、コネチカット州は787人増、ロードアイランド州は744人増、テネシー州は724人増となる。そのほか、モンタナ州は輸送や倉庫のほか建設、製造業で押し上げられた。減少した州はカリフォルニア州、ニューヨーク州でそれぞれ5515人減、1282人減となる。カリフォルニア州はサービス業で、ニューヨーク州は小売、貿易、宿泊、外食サービスのほか芸術や娯楽などで減少していた。そのほか、オレゴン州やバージニア州、ミシガン州でも順に1036人減、1006人減、ミシガン州で990人減を示した。そのうちバージニア州は、建設が減少を牽引したとの報告を挙げている。
バークレイズのロブ・マーティン米エコノミストは、結果を受け「ヘッドラインは増加したものの被保険者に占める受給者の割合は低水準で、4週平均も減少している」と評価した。その上で、米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)の予想を「20.0万人増」で維持。ブルームバーグのエコノミスト平均値19.0万人増を超える水準を見込む。
――米新規失業保険申請件数の改善と歩調を合わせ、米2月チャレンジャー人員削減予定数も前月比で減少しました。米2月雇用統計に向けた期待が高まります。逆にあまりに雇用統計・NFPが高水準に跳ね上がった場合は、利上げ警戒が高まるのか注視したいところです。
(カバー写真:Bromford/Flickr)
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