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IMFは再び成長見通しを下方修正、中国は引き上げ

by • April 13, 2016 • Finance, Latest NewsComments Off2684

IMF Cut Global Growth, While China’s Outlook Revised Up.

国際通貨基金(IMF)は12日、最新版の世界経済見通し(WEO)を公表しました。タイトルに「長過ぎる成長鈍化(Too Slow Too Long)」を掲げるように、2016年の世界成長見通しは3.2%増と、前回1月の3.4%増から下方修正2017年も従来の3.6%増から3.5%増へ引き下げました。前回は原油安によるブラジルやロシアなど、産油国の経済見通しの下方修正が響いた一方、今回はエマージング諸国だけでなく主要国が軒並み2016~17年そろって引き下げられています。IMFは、1)無秩序な資本の逆流、及びエマージング経済で高まる金融安定リスクへの脅威、2)中国の経済リバランス(内需主導型経済への移行にかかる調整)、3)原油生産への依存度が高い国での輸出減速、4)金融市場の引き締め効果および乱高下でのセンチメント低下及び成長リスク、5)エマージング諸国で景気後退が長期化する可能性、6)地政学的リスク、7)英国の欧州連合(EU)脱退をめぐる国民投票――を挙げました。前回に続き中国、エマージング諸国、地政学的リスク、金融市場の動向を挙げつつ、金融市場の動向が目立ちます。

国・地域別でみると、米国は2016年につき従来の2.6%増から2.4%増へ引き下げています。2017年も、従来の2.6%増から2.5%増へ下方修正。原油安で産業財、世界経済の影響で資本財の輸出減少が想定されるなか、IMFは「輸出の減少」を指摘。ただし一時的とし、むしろエネルギー関連以外の中心に「非住宅投資が低下するなど、内需が弱い」と説明しています。また原油安に伴うエネルギー関連投資の鈍化、ドル高、エネルギー関連を中心とした金融環境の逼迫も指摘していました。高齢化問題、全要素生産性の低迷も理由に挙げています。

ユーロ圏は、2016年につき前回の1.7%増から1.5%増へ下方修正されました。前回は引き上げられたものの、今回は引き下げに転じています。2017年は前回こそ据え置いたものの、今回は従来の1.7%増から1.6%増へ引き下げました。原油安やゆるやかな財政拡大といった好材料を、外需低下が打ち消す見通しです。日本は2016年につき従来の1.0%増から0.5%増へ、2017年は従来の0.3%増からマイナス0.1%と大幅に下方修正されました。個人消費の予想以上の減速を指摘したほか円高、エマージング諸国の減速を指摘。また、今回の予想は「消費税増税を織り込んだもの」とも付け加えています。

中国は、前回まで直近は据え置きトレンドにあったものの今回は上方修正されています。2016年は従来の6.3%増から6.5%増、2017年も6.0%増から6.2%増へそれぞれ引き上げられました。上方修正されたとはいえ、25年ぶり低水準だった2015年の成長率6.9%から一段の減速が見込まれています。輸出・投資主導型成長モデルから消費・内需主導型へシフトする過程でのリスクにも引き続き注意を払いつつ、国内需要は予想以上に耐性があったとの見解を寄せていました。

世界貿易動向では、2016年に3.1%増、2017年には3.8%増を予想していました。2015年の2.8%増から、改善を見込んでいます。輸入では先進国が2016年に3.4%増、2017年は4.1%増となり、2015年4.3%増以下にとどまる見通し。エマージング国・開発途上国は2015年の0.5%増から大幅な回復が予想され、2016年は3.0%増、2017年は3.7%増でした。輸出では先進国が2016年に2.5%増、2017年に3.5%増のシナリオが描かれ、2017年のみ2015年の3.4%増を上回っています。エマージング国・開発途上国は2016年と2017年(それぞれ3.8%増、3.9%増)ともに、2015年の1.7%増から大きな回復を見込んでいます。

WEOのまとめ役であるモーリス・オブストフェル主席エコノミストは、結果に対し「世界経済の回復は継続しているものの、ペースには脆弱性が増した」と振り返ります。リスクとしては「金融市場の混乱が再び襲う可能性」を挙げ、米国をはじめ日欧での金融市場は一時期に比べ改善したものの「金融環境はひっ迫している」と指摘。エマージング国では「一段と引き締まりを見せた」とし、警戒を緩めていません。

オブストフェル氏は、国・地域別にて米欧で「政治的および地政学的」なリスクが浮上していると指摘しています。政治的な面はテロへの脅威を一因としつつ、「内向き傾向」を挙げ「格差社会や構造変化」が背景にあると説明していました。米大統領選動向や、欧州での難民問題が意識されていることでしょう。リスクとして挙がったように、英国のEU離脱をめぐる国民投票についても言及していました。中国は「購買力平価で国内総生産(GDP)第1位となり、消費主導の持続的な成長段階へシフトしている」と言及する程度でした。

以下は、各国・地域の成長見通しで()内の数字は前回7月分あるいはその後の改定値となります。

2016年成長見通し

世界経済→3.2%(3.4%)
先進国→1.9%(2.1%)
米国→2.4%(2.6%)
ユーロ圏→1.5%(1.7%)
独→1.5%(1.7%)
仏→1.1%(1.3%)
伊→1.0%(1.2%)
西→2.6%(2.7%)
日本→0.5%(1.0%)
英国→1.9%(2.2%)
カナダ→1.5%(1.7%)

新興国→4.1%(4.3%)
中国→6.5%(6.3%)
インド→7.5%(7.5%)
ASEAN5ヵ国→4.8%(4.8%)
ブラジル→マイナス3.8%(マイナス3.5%)
メキシコ→2.4%(2.6%)
ロシア→マイナス1.8%(マイナス1.0%)

2017年成長率

世界経済→3.5%(3.6%)
先進国→2.0%(2.1%)
米国→2.5%(2.6%)
ユーロ圏→1.7%(1.7%)
独→1.7%(1.5%)
仏→1.5%(1.6%)
伊→1.1%(1.2%)
西→2.3%(2.3%)
日本→マイナス0.1%(0.3%)
英国→2.2%(2.2%)
カナダ→1.9%(2.1%)

新興国→4.6%(4.7%)
中国→6.2%(6.0%)
インド→7.5%(7.5%)
ASEAN5ヵ国→5.1%(5.1%)
ブラジル→0%(0%)
メキシコ→2.6%(2.9%)
ロシア→0.8%(1.0%)

2015年成長率見通し

世界経済→3.1%(3.1%)
先進国→1.9%(1.9%)
米国→2.4%(2.5%)
ユーロ圏→1.6%(1.5%)
独→1.5%(1.5%)
仏→1.1%(1.1%)
伊→0.8%(1.3%)
西→3.2%(3.2%)
日本→0.5%(0.6%)
英国→2.2%(2.5%)
カナダ→1.2%(1.1%)

新興国→4.0%(4.0%)
中国→6.9%(6.9%)
インド→7.3%(7.3%)
ASEAN5ヵ国→4.7%(4.7%)
ブラジル→マイナス3.8%(マイナス3.8%)
メキシコ→2.5%(2.5%)
ロシア→マイナス3.7%(マイナス3.7%)

(カバー写真:International Monetary Fund)

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